第198話 使徒覚醒③
「このダンジョン、つまりは"オニ"種の魔物ばかりって事?」
「まぁ、これまでのパターンからすれば、そういう事になるな」
飯を食い終わり、少しだけのんびり休憩した俺達はダンジョン攻略を再開した。
この世界の【ダンジョン】とは何か?
シコルスキー曰く、『なんらかの原因で魔素が溜まり、魔核化した
そのコアは、そのフィールド内に魔物を生成し続け、ダンジョンの許容量を超えると外に吐き出す。
いわゆる"スタンピード"と呼ばれる魔物災害だ。
ダンジョンの種類や形態、規模、はたまた魔物の種類によってその被害度はまちまちだと言う。
まぁ、ダンジョンに関して『ハッキリした事は分からない』というのが現状らしいが、対策は確立されてある。
『コアの破壊』だ。
ダンジョンによっては、魔石を獲得する有効な資源採掘場として、魔物は狩るがコアは破壊しないといったやり方もあるようだが。
この大陸には新旧のダンジョンが大量に発生している。特に近年の発生数は異常だという。
魔素の発生に消費が追いついていない。
その現状を打開するべく
魔物や魔獣といった実害に対処する戦闘職。俺もこの中に入るだろう。
この世界の魔力消費を上げる為の道具を作製したりするクラフト職。
それら全般を支える支援職。
今は、異世界人達の動きが緩やか過ぎて現状では改善されてるとは思えんが、数年、数十年後には……と、いったところであろう。
「ホレ、来たぞ。豚共が。見せてみろ」
見通しの良い大通路の先からオークの集団がワラワラとやって来る。
このダンジョン、魔物達が集団でしか襲って来ない。
俺的というか、俺の能力的にいえばチマチマと襲って来られるより都合がいいのだが、普通の人間には脅威なんだろうな。
あの髭貴族め! 俺に面倒を押し付けて殺そうとしやがって!
まぁ、もう死んでる奴の事なんか考えてもしょうがない。
「魔砲中年の鬱憤をくらえ!」
パンと両手を合わせて指先を魔物の集団に向ける。
「照準、ヨシ!装填ヨシ!」
合わせた手のひらを拳一つ分ほど離すとドス黒い魔法陣が現れ、その中心に魔物の集団を捉える。
「テッ!」
『ドッ!』と空気が震え、光弾が高速で射出される。
魔物達の中心に吸い込まれるように飛び込んだ光弾。
着弾するやいなや、爆音と爆風、爆炎を撒き散らしてオークの群を薙ぎ払った。
衝撃波と爆炎が俺達の所まで襲って来るが、シコルスキーの障壁で被害はない。
「まぁまぁだな。だが、真の爆轟にはほど遠い」
「無茶言うなよ。これでもかなりの魔力消費なんだぜ?」
魔法、イヤ、魔砲だけでは爆轟の現象を発生させるのが現状では難しく、シコルスキーの魔術を魔砲に組み込んで無理矢理発生させたのが、今の合体魔法(砲)だ。
威力としては個人携帯ロケット弾のサーモバリック弾頭くらいには破壊力がある。
残念ながら、一部を魔術で補ってる為、俺自身の魔力不足で連発はできない。
しかし、俺が手に入れた武器はこれだけではない。
サーモバリックほどでは無いが、モンロー効果を利用したHEAT(対戦車榴弾)の開発にも成功。
次はいよいよ……。
「お前、バケモンかよ……」
童貞、もとい、ドッティが呆れた顔で見ている。
こちとら、無理矢理連れてこられた被害者だ。これくらいのチートはあって然るべきだ。
やっぱり【魔力操作】は万能だぜ!
「しかし、このダンジョンは道が入り組んでなくていいな」
「コレもダンジョンによるな。さながら迷宮じみた場所も少なくないんだが、ここは群で侵入者を排除するタイプなんだろ」
「へー」「ふーん」「な、なるほど!」
俺とドッティは別として、ツェツィーリアはシコルスキーの博識に感心してる。ちょっと面白くない。
大人として、男としてみっともないから言わないけど。
やっぱり、ジジイの飯はカップ麺にしてやろう。
「オイ、珍太郎、さっさと進むぞ」
「クソジジイ……。いつかテメェの土手っ腹に穴を空けてやるからな」
魔力枯渇寸前の俺を見てニヤつくジジイに殺意が湧く。絶対晩飯も、カップ麺にしてやる!
その後もオークやオーガの群に襲われるが、この辺は12.7mmの掃射でカタがついた。
別に相手がモロ過ぎたわけではない。実際、ドッティでもオーガの群には一瞬だけ驚いた様子だった。
飛び道具のない相手なら、魔砲使いはワンサイドゲームであるのは確かだ。
「番人はミノタウロスか。まぁ、問題無いな」
さっさとヤレと手のひらを振ってるジジイ。
「たまには身体を動かすかな」
「ブフォーーーーーッ!!」
スラスター全開で吼えるミノタウロスに突貫すると、土手っ腹に直突き、同時に魔力を打ち込む。
口から血と変な液体を撒き散らしながら吹き飛んだ。
「頑丈だなこの魔物!!」
腹をぶち抜くつもりで殴ったってのに、手がちょっと痺れたぜ。
ヨロヨロと立ち上がろうとするミノタウロスがこちらを睨む。
「コッチは耐えられるか?」
魔力を腕に纏わせて刃物状にする。
大斧を振り上げて襲って来るミノタウロスの一撃をかわすと右腕を斬り落とした。
ちょっとしたクレーターを作るほどの一撃だったが、スピードはそれほどでもない。
「ウサちゃんはもっと速かったからなぁ。もう、いいや、死ね」
たたらを踏んだミノタウロスの膝裏に蹴りを入れ、膝をついて頭の位置を下げさせると首を刎ねた。
「お前は、本当に魔法使いか?」
呆れたように笑うシコルスキーを他所に、頭にアナウンスが流れてきた。
『ダンジョン制覇を確認しました。コアを回収して下さい』
ダンジョンの最奥にあるこの部屋の中央に、輝く魔石の様な物が現れた。
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