第175話 水神の加護

「ヘイ!シリ!今日も良い尻してんな!」


「本気で死にたいのか?私はシシリーだと何度も言ってるだろ?どタマカチ割って、ゴブリンの脳ミソと入れ替えてやろう。正直、貴様のせいで、他の奴からも変な目で見られて、正直、殺してやりたいんだが?」


過激バニーコスのシシリーに朝の挨拶をすればすげない態度である。


「確かに一着では何かと不便だろう。今度はコレとコレを日替わりで着替えるといい。何、礼はいらん」


「何を紳士ぶってるのかしらんが、またどうせ卑猥な装備なんだろう!この変態野郎!」


「イヤイヤ、変態紳士等とそんな褒めてくれるなバニーちゃん。その格好よりは露出は控え目だ、安心なされよ」


渡したコスチュームはスク水と体操服とブルマーのセットである。

スク水は紺色と白。ブルマは紺色とピンクの色違いをご用意させていただいた。


袋に描かれている着衣イラストを見て微妙な顔をしているが、ティーバックバニーコスよりはマシだと思ったのだろう、素直に受け取ってくれて何より。


異世界男性人達にも「何か良く分からないが、コレは良い物だ」と中々の評判である。


ヴァルガンも「似合ってるぞ」と褒めてたら、「うるせーハゲ!」とケツを思いっきり蹴られてた。


思春期の娘を持つお父さん達は、きっと大変なんだろうな。



そんな心温まる日常パートを終わらせる、不粋な輩たちの来訪をDT鴉が知らせに来た。


『予定通り、明日にはゴーレム軍団が到着する。抜かるなよ』


「黙ってろDTO。お前には、あのブルマが目に入らんのか?」


『ま、まさか!この世界でブルマーだと!?それもウサ耳とは……。た、たまらん……』


それだけ言うと、通信が途切れたように鴉はカァカァと鳴いて飛び去っていった。


童貞にはちょっと刺激が強すぎたらしい。



そんな訳で、北の村に侵攻しているゴーレム軍団を迎え討つべく行動を開始する。


「コタロウ!お前が舵をとれぃぃぃ!」


「せいっ!せいっ!」


コタロウの、やや気の抜けた「セイッ!」にほんわかする。


ウサちゃんとヴァルガンにも操船を教えたが、一番飲み込みが早かったのがコタロウだったので、とりあえず"キャプテン オブ ザ ボート"はコタロウに任せる事にした。


「ヨーソロー……」とヴァルガンは少し寂しそうだった。



魔力推進機能スラスター・バーニアで先行する途中に水神の祠に立ち寄り、ちょっとばかり強請おねだりする。


「よう!水神!Pポイントは貯まったか?」


「アンタ、使徒なんかより、闇金の取り立て屋って言った方がよっぽどしっくりくるわ……」


コチラにも手助けする理由があったのは確かだが、助けてやった事に違いはない。

湖の濃すぎる魔素を回収させ、そのポイントで俺に"水神の加護"を付与させる事で吊し上げを免除してやった。


刀?使えない武器に然程価値は無い。


「もう、完全に赤字だわ……」

「コレに懲りたら二度と人様に迷惑かけるんじゃねーぞ?また何かあったら取り立てに来るからな」


「……悪魔の使いめ」


「あと、一応お得意さんだから教えておいてやるが、もうすぐ帝国が攻めて来るからな」


「はぁ?帝国って、あの変態転移者が興した国でしょ?まぁ、人間同士の争いは私に関係ないから勝手にやってなさいよ」


「ああ、初代皇帝とは知り合いだったらしいな?」


村の巫女(婆さん)の歴史書に書いてあった。


「あんな変態野郎、知り合いじゃないわよォォォ!アイツ英雄とか呼ばれてたけど『裸忍者最強ぅぅーっ!』とか言って全裸で戦う掛け値無しのド変態よ!」


「うわぁ……」

想像しただけでお近づきにはなりたくない人種である。


「因みにだが、帝国の作戦計画ではこの中央の小島には監視台が建つ予定らしいぞ?良かったな、ご近所さんができて賑やかになる」


「アイェェェ!何それ!?一番大事な事じゃない!?腐れ外道の末裔め……」


「まぁ、P次第では何とかしてやらなくもない」


「そんなぁぁぁあ!アンタ、私からまだ搾り取る気!?どうせ帝国とは戦うんでしょ?」


「お前が手伝うならまけてやるけど?無関心を決め込むつもりなら、この島だけは帝国に占領させてやる」


「この、どクズ野郎ォォォ!」



"水神の加護"により、水中無呼吸能力、水中移動能力、水属性耐性(大)を得た俺は、「あとで使いをよこす」とだけ言って北の村へと向かった。

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