第161話 再戦
「貴方、正気ですか?」
文官所長の、クイッと眼鏡を指であげる動作は中々様になってる。
村長宅の広間を借りて主要なメンバーに現在の状況を説明する事にした。
北の村から帝国兵を撤退させ、それを追う形で敵陣に潜入。
帝国軍の将兵を射殺したり機密情報を奪取したりと、結構頑張った俺に対して、文官所長の評価は「正気を疑う」というものだった。
「もしかして疑ってる?コレが『ドン!』ホラ、証拠だ」
持ち帰った地図や書類の詰まった木箱をテーブルに置くと、冒険者や傭兵達のリーダー達の顔が引き攣った。
「私は貴方を疑ってなどいません。貴方の正気を疑ったのです」
文官所長は、感情の起伏などまるで見せずに淡々とそう言う。
「北の村の井戸は使えなくしてるけど、大丈夫だよな?」
「結構です。あそこは元々防衛には適していません」
「中継地点、ああ、と、ココ。この集落も潰して再利用には手間がかかるようにしておいた」
かっぱらって来た地図のポイントを指差してやる。
「住民達は?」
ギラリと眼鏡を光らせ、俺を睨むように初めて感情を見せた文官所長に少しだけ好感を持つ。
「帝国軍に集落を放棄するよう言われて、始めは帝国軍の駐屯してる町に移住しそうだったのをこの村に呼んでおいた。その内到着するんじゃないか?」
「人手は多い方が良いので助かります。迎えの荷馬車を向かわせましょう」
見た目とは裏腹に、よく知らない連中に対してやけに同情的なヤツだ。
「まぁ、もっと大量の避難民であれば、向こうの町に送って兵糧を圧迫させてもよかったんだがな」
「あちらの町の食糧事情は把握してます。そこまで効果的ではなかったでしょう。コチラに引き込んでくれて助かります」
「それと、軍の物資をちょいと頂いてきたから、向こうさん結構カツカツだと思うぜ?」
訝しむ連中に、アイテムボックスにしまっておいた帝国軍の物資を広間に出してやったら中々面白い顔で驚いてくれた。
「上手いこと活用してくれ。それと、帝国のソーセージは結構美味かったぞ」
人質を川に落として逃がしちゃった事は伏せた。
「よくもまぁ、この短期間にこれだけの成果を上げられましたね……。とりあえず、帝国軍の資料を精査し対応策を練りましょう」
文官所長は各代表者達に指示を出すと、自分は黙々と軍の資料を読み込みだした。
やる事が無くなったので、何して暇を潰そうかと考えながら村長宅を出ると、ウサちゃんが腕組みをして俺を待っていた。
「もう一度私と立ち合え!」
何をそんなにカリカリする事があるのか甚だ疑問であるが、暇つぶしにはちょうど良いかも知れん。
「別にいいけど?ウサちゃんは何をそんなにカリカリしるんだ?」
「貴様!仲間達をあれだけ殺しておいて!よもや忘れたわけではあるまいな!」
確かに、そう言えばそうだった……
「シシリー、やめろと言ったはずだ。ヤツらは傭兵として真っ当な行動として彼と戦った。彼は正々堂々とそれに応えただけだ。結果は結果でしかない。仲間の死を愚弄する事は許さんぞ」
俺の後に出てきたデカ男が、ウサちゃんにそう言って止めようとした。
「俺は別に立ち合ってやってもいいぜ?俺は許して欲しいなんぞ思ってないが、それでウサちゃんの気がすむんなら。ただし、次また負けたら俺の言う事には絶対服従だぞ?俺が負けたら何でもしてやるよ。勿論、殺しにきてもいいぞ?」
どうだ?と問うと、ウサちゃんは怒りの形相で吠える。
「今の言葉を忘れるな!絶対に後悔させてやる!」
あれだけボロボロにされて、どっからそんな自信が出てくるのか……
まぁ、せっかくの戦力を殺す訳にはいかないので前回使った『指向性散弾』は封印せねばなるまい。
前回はアノ攻撃以外では、ウサちゃんを捉えられなかった。
しかし、コチラはあれからレベルも上がり、
「安心しろ。殺しはせんよ」
デカ男にそう言うと、村に被害が出ないように、村から少し離れた開けた場所に向かった。
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連休だけど台風で遊びにも行けません……
たまには連日投稿しますかねー
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