第155話 夜討ち朝駆け(後編)

鳥の囀りに目を覚まして外を眺めると、陽はすでに上がっていたようで、敵陣の真っ只中にあって、思いの外グッスリと眠ってしまったようだ。


町と周辺は昨夜の混乱も今は落ちつき、未だに畑からくすぶる煙が上がってはいるが、帝国軍の陣地には被害はほとんど無さそうだった。


『ゴゥーン ゴゥィーン ゴゥーン ゴゥィーン』


真上に吊るされた鐘が鳴り響き、あまりのうるささに舌打ちを一つ。


鐘が合図だったかのように町の門が開かれる。

門の外で、100を少し超える騎兵部隊が、門の内側から出てくる三人の士官を出迎えているようだった。


「あれ……アイツ。あの青年士官か」

離れた所から見知った人間を見つけ、なんとなくそれを眺めていたが、三人の中で彼が一番下っ端のようであるのが分かった。


三人の内の一人は、部隊が違うのか、そもそも軍とは別の組織なのか他の将兵とは違う制服を着ており、鎧等の防具を一切身につけていなかった。


おそらくアレが昨日の魔力の持ち主だろうと推測した。


「あれからずっと防御魔術を展開してたのか?ご苦労さんだなぁ……おかげで今日は、さすがに少しお疲れのようだ」

他人事ながら同情するよ

機会があれば、彼とはちょっとしてみたい。


騎兵は例の猟兵達で構成されている。

荷物等は積んでおらず、装備を見ると目的はおそらく俺の捜索と追撃といったところだろう。


彼らからは見えないだろうが、俺はココだよー!と手を振ってやりたくなる。


おそらく青年士官の上官が指揮をとってサセ湖方面へと向かって行った。



昨夜見つけておいた帝国軍の指揮所を確認する。

三階建ての宿を貸切にしているようだった。


今いる鐘楼の高さはおよそ25m、宿まで距離が400m。

余程の事がない限り、狙撃を失敗する距離ではない。

問題は、宿の中の状況がここからだと確認しづらいということ。辺鄙な町の宿なせいなのかはわからんが、高級であるガラスを使った窓が小さいのもターゲットを捕捉しづらくしている。


特定の将校を狙っているわけではないが、なるべく高級な将校が良い。

勿論、数は多い方が良いが欲張り過ぎも良くない。


のんびりと宿を観測しながら、そばでポコポコと音を立ててコッヘルの湯が沸いてきたので魔力を絞って火力を弱める。


「そろそろいいかな」


昨夜かっぱらってきた物資の中にあったソーセージをボイルしておいた。

燻製の香りがしっかりと出て、皮はパリッと中からジューシーな肉汁が噛むたびに溢れてくる。

パーフェクト!


白いソーセージも後で焼いてたべよう。


その前にお仕事するとしようか。



『スナイパーカスタム』モードになると狙撃と射撃察知と隠密のスキルが2段階上がり、連射(フルオート)できなくなった代わり魔弾の貫通力・破壊力が1.5倍強化される。

ついでサーマルビジョンとナイトビジョンの視覚を得る。

長距離からの偵察と暗殺が捗る。

必殺技としてチャージ射撃可能だが、クールタイム有りで『ストライカーカスタム』の魔力纏いのようなものだ。


気がつくのが遅れたが、各モードの必殺技の発動中から使用後の『クールタイム中』は、モード変更不可となるらしかった。



指揮所代わりの宿をサーマルビジョンで観測。

おそらく士官達は上の階を使用するはず。

三階の一室に、複数の人型が座って集まっているのを確認した。

全部で11人。座る人型が9人で、おそらくコレが高級将校達だろう。


「多分……これかな?」

長机をコの字型並べてあるのか、配置はおそらく向かって右側、上座の真ん中が長となる人物ではないかと当たりをつける。


昨夜程の防御魔術の使い手はいないのか、然程強力な障壁は張られていないが、弾速の低下や弾道の変化にどれくらい影響があるか分からないので、最大口径の20mmバレットを装填。


ドッ!と鈍い発射音とともに放たれた魔弾は防御をいとも簡単に貫通し、壁に大穴を開けて上座に座る人型二人の上半身を吹き飛ばした。


上座の方から順番に8発の20mm弾をセミオートで撃ち込んでいく。

勿論、1発も外さない。20mmを生身で食らって平気な人間などいない。当たって原型を保っている者もいない。


上の騒動に下の階から人が上がっていくのを確認した。

既に魔術障壁は打ち砕かれ、壁も穴だらけだ。

見通しを良くする為に20mmを再装填し、壁の穴を広げ、ドアごと将兵数人を肉塊に変える。


壁を破壊し、そこそこの視界を確保したのでラプアマグナム弾に変更。

果敢にも室内に飛び込んでくる兵士達にプレゼントをお届け。天国行きのチケット。


一階の玄関前に野次馬の人だかりができ、兵士がそれを宿に近寄らせないよう追い払っているが、衆人環視の目の前で頭を爆ぜさせてやると、パニック状態に陥った野次馬達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


「まぁ、今日はこんなもんでいいかな」


この教会にも部隊が向かってきてるのを確認したのでとっとと退散だ。


懸垂降下で一気に地上に降りると、上で結んだ状態のロープをアイテムボックスにそのまま収納するという裏技を使い、町の中に帝国兵として紛れこんだ。



—————————


今週は忙しいですぅ!

あんまり書けないと思います、すマン○!

今日は何とかここまで書けましたが、目が痛ぇぇえ!

ホッとアイマスクしよう。

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