第143話 サハギン駆除

「アンタ、傭兵か?」

受け取った手紙を読み終えたギルド長のオッサンが尋ねてきた。


先日に協商連合国を出発。

北東に進み、小国タジスに入った国境の町の冒険者ギルドに来ていた。


「まぁな、それで?依頼を受けれるんだろ?どんな依頼だ?」

協商連合国トップからの根回し&根回しで、今回の目的地付近での依頼を受けれる事になっているのだ。

冒険者として潜入し、帝国軍の偵察と工作を行うから、よろしく手筈を整えておくようにとフロマン議長に伝えておいた。


ギルドは国の管理下にあるが、国を超えての繋がりも持ってる。属国のギルドは、また宗主国のギルドには逆らいづらいのだ。


そんな、しがらみだらけのアレやコレやでよろしく俺に回ってきた依頼が『サハギン討伐』だ。


「本当に大丈夫なんだろうな?アンタが手練れの傭兵だったとしても、サハギンはDランクの魔物だぞ?それも大量だ。一人でどうこうできる相手じゃない」


「心配いらん。もし駄目なら、それはそれで俺は別に構わんしな」

依頼は自然な形で目的地に潜入する口実でしかないんだから。


「コッチとしては、できれば解決して欲しいんだが……まぁ、無理はせんでくれ……」


心配性なギルド長の話しでは、最近は被害の大きい湖畔の村の村人のほとんどが避難をしている状態なんだと。


そのせいで、『ゼンラ帝国』につけいられた。

湖は、協商連合国の属国である『タジス小国』から近隣の小国家郡はもとより帝国の水源の一つでもあった。


帝国は水源の安全の確保を理由に派兵を決定。

これを一方的に通告してきた。

勿論、湖を確保したついでにその周辺を占領後、実効支配するのは目に見えている。


そんなゴタゴタの中だ、俺がGランクおじさんであっても、大人の事情で忖度せざるを得ないギルド長の心境は如何程か。

勿論、そんな事どうでもいいが。



そんなこんなで、帝国軍の進路・進軍速度を考えると、この【サセ湖】北の村に冒険者として潜入する事となった。



バイクをかっ飛ばして距離を稼ぎ、まずは比較的被害の少ないサセ湖南村に入る。


ギルドからの依頼で来た旨を村長に報告し、翌日から仕事を開始すると告げた。


帝国が向かって来てるというのに物好きな冒険者だと思われたようだが、その日は空き家に泊めてくれたり飯をご馳走になった。

漁業も盛んで主に鱒系の魚が多く獲れるらしい。

明日は釣りでもいいな。


翌日早朝、堀と丸太塀で囲われた南村を出ると、断崖のある岩山を少し迂回するように周る。


北側の湖畔に到着し、バイクを適当な場所に停めると野営の準備にはいった。


軍幕を張り薪を生活魔法で着火する。

簡易なかまどを作り、火のついた薪をそこに移して湯を沸かす。

待つ間にコーヒーミルで豆を挽いてコーヒーをいれる。

中央都市でコーヒー豆が手に入れるようになって、最近は缶コーヒーを控えてペーパードリップで淹れるようになった。


まだ朝の静かな湖面を眺めながらの一杯。タバコを吸いながら、こんなのも悪くないと満足する。

紅葉の森のコントラストも美しい。

大自然の営みを肌で感じる。ついでに視線も感じる。


視線の原因は、視界の端に入る手足の生えた魚だ。

そう、人型とかではない。

全長は1メートルを超えているだろうか。

魚に近いというより、大きな魚だ。

ただし、手足が生えているってだけ。

非常に不気味である。


魚故に表情が分かりづらい。魚にも感情の起伏とかあるのだろうか?

顔つきやギザギザの鋭い歯を見るに、ピラニア系ではないだろうか?

ちょっとシュール過ぎない?

二足歩行で手に槍を持ってたりするイメージだったんだが、あれじゃ槍を持つことはおろか二足歩行も厳しそう。


美しい景色の邪魔なので極力視界に入れないようにしていたが、そこそこの数がコッチをジッと見ているのが鬱陶しい。

あの個体なんか、木に掴まり立ちして頭を傾げるようにコッチを覗いてる。

正直、怖い。


「ギョギョ……ギョッ?」

その鳴き声はやめてほしい

俺、あの変な帽子の人、意外と気に入ってるんだ。


アウトドアチェアに座り、コーヒー片手にサハギンを観察していると視界に入る数が徐々に増えてきた。


陸地で焚き火もあるおかげか、今は襲ってはこないが数が増えたら一気にきそう。



「ギッ、ギッ、ギッーッ!」

一匹の鳴き声とともに目の前の水面がゆらゆらと揺れたと思ったらヌラヌラとサハギンの群れが次々と陸に上がってくる。


「うわっ、きっしょっ!」

手足の生えた魚の大群がそれを機にこちらに向かってきた。


四足歩行でトカゲの様な歩き方で迫るサハギン達。

「絵面が酷いな……」


距離が10m程のタイミングで"指向性散弾"を左右の手で発動する。

『ザッ』と地面や湖面を叩く音と大量のサハギンを挽肉に変え音が響いた。


数十匹のサハギンが絶命、半死半生がその半分くらいか。無傷のサハギンは少ないが、体高が低かったせいでお残しもそれなりにいたようだ。


両腕に7.62mmを装填。

80発のフルオートで弾幕を張る。

鱗と共に身を引きちぎるように吹き飛ばしていく。


ギルド長は「意外と鱗が硬いから気をつけろ」と言っていたが、サハギン達の防御力は然程ではなかった。


自分でやっておいてなんだが、"大量に打ち上げられた怪魚の死体"のような光景に若干ひいた。

人間は慣れたせいでなんとも思わなくなったが、コイツらのは気持ち悪いと感じる。


魔物は魔石を残して消えるから別にいいんだけど、魔獣は解体して魔石を回収しないといけない。

ここに来る前に、大量のサハギンは魔獣と聞いて『魔石オート回収』のスキルを取得しといた。

俺が倒した魔物・魔獣の魔石はオートでポイントとして回収される。ご都合主義万歳だ。

この量と見た目の怪魚を自分で解体したくない。


ついでに言えば、これが後数カ所あるのだ……


一匹につき概ね50Pくらい。

一匹だと大したことないが、サハギンは群れで行動する魔獣だ。

今回のように約120匹を駆除すれば中々のものだろう。


ちなみに、村人達によると淡白な白身で意外と美味いらしい。

特に"後ろ足"は魚とは思えない味だと言う。

まぁ、その部分はどう考えても魚じゃないからな。

勿論、俺はノーサンキューだ。


鱗や骨皮なんかも利用価値があるらしく、南村の村長はできれば回収して欲しいと言っていた。


気分的にはあまりやりたくないが、サハギンの死体をアイテムボックスに収納していった。




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