第116話 衝突
「イヤイヤ、イヤイヤイヤイヤ?俺悪くないよね?先に撃ってきたのあっちなんだし!」
口には出さないがモーリッツの非難の目とアイリーンの溜息が俺を責める。
今回のミッションは、ガゥネッド商会の一行として西に入り、人質の保護と下衆野郎共に鉄鎚を下す。というものだ。
俺としても、協商連合の正規兵とやり合うのは避けたかったのだが。
ブリスク側の関所をモーちゃんのおかげでほぼフリーパスで通過し、5分程車を走らせ緩衝地帯を抜けた。
協商連合の国境検問所にてガゥネッド商会の狐が手続きしようとしたところ、警備兵から"待った"がかかった。
ガゥネッド商会は現在越境禁止命令を受けており、ことブリスク側からの越境者には拘束命令が出ているらしい。
協商連合の中にも事態を憂慮する連中がいるらしい。
いや、対処をみるに割と国自体は真っ当なのか?
残念ながら今更だけどな。
「しょうがない。とりあえず狐はここで離脱するという事で。さぁ、出発しよう!」
「おい!待て待て!何を勝手に通行しようとしてる!貴様ら全員を拘束する!」
「イヤイヤ、旦那。俺達はガゥネッド商会とは関係ないぜ?俺と彼女は冒険者だし、彼等は俺が雇った傭兵だ。そこの商人は置いていってやるから、さっさと道を開けろ」
「お前らみたいな怪しい連中を素通りさせるわけにはいかん!その奇怪な乗り物も没収する!」
「オイオイオイ、何サラッと盗賊行為を働こうとしてんだ?お前らの国は野盗国家か?商業国家が聞いて呆れるぜ」
「き、貴様!」
真っ赤な顔の国境警備隊の隊長だと言う男は剣に手をかけた。
「言っておくが、それを抜いた瞬間に戦争だぞ?お前もお前の部下も生きて家族と会う事はないだろう。皆殺しだ。100に満たない程度の警備兵でハイランダー10人を相手にできるのか?盗賊行為は聞かなかったことにしておいてやる。道を開けろ……」
「貴様等こそ大人しく縛につけ!ブリスクからの報復行動に備えてここに軍が集結中だ!そんな小勢で何ができる!」
警備隊長が片手を上げると、威嚇の為か俺の足下に矢が刺さり、シャラリと剣を抜き部下に拘束させようと開いた口にバレットを撃ち込んだ。
バシャッ!と後頭部から弾けた中身を撒き散らす。
まぁ、警告はした。
コイツらが直接下衆野郎共と関わりがあろうがなかろうが、国の兵士という身分に身を置いたのなら、それはもう自分の責任だ。
恨むなら国を恨め。
下衆野郎共を野放しにして他国に喧嘩を売った責任は国の責任と言っていい。はず。
「ああ……やっちまった……」
モーちゃんの顔色は優れない。車酔いのせいかな?
「ハイハイ!皆さんお仕事ですよ!一人も生きて帰すなよ!」
ハイランダー達は等しく平等に死を振り撒いた。
警備兵達は手も足も出ない。
逃げようとする兵士をバレットで射殺し、切りかかって来る兵士を殴り殺す。
10分もかからずに警備隊は全滅。
部隊が集結中なら情報は漏らさない方がいい。
協商連合側は統制されているのか民間人はいないし、ブリスク側からの通行も都合良い事に俺達だけだ。
「邪魔者が増えない内に出発しよう」
モーリッツ、沈黙の抗議。
アイリーンなどは溜息をついて諦めの顔だ。
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俺の言い訳は通用しないようだ。
仕方ない……
「いいかい君達。悲しいけどコレ戦争なのよね」
戦争の理不尽さ。この一言に込められてる。
「……」
何故か最近モーちゃんのチベットスナギツネ顔がいたについてきた気がする。
アイリーンは俺の言葉など聞こえない素振りで、ハイランダー達と高機動車の横で次の運転手を決めるべく、ジャンケン大会をしていた。
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