第102話 騎兵はつらいよ

「敵も中々やるじゃないか」

MAPに騎兵を捉えてそう言った。


村の北門を警戒していた騎兵達が何の合図もなく前進してくる歩兵と同調して後方から迫っていた。


「感心している場合かよ!当たり前だろ!アイツらだって、ハイランダー程ではなくてもプロの傭兵だぞ!」

喚く狐を無視してハイランダーに横隊になるよう指示する。

「前進やめー!正面の防御に専念せよ」


効果が薄いと思ったのか、弓の曲射から弩の前進射撃に移行した敵歩兵に対応させる。


相手が狼煙や笛・太鼓などの伝達手段を利用せずにどうやって騎馬隊に指示を出したのかは分からないが指揮官は手堅く有能なようだ。


「クソっ!騎兵だぞ!早く何とかしろよ!」

狐があまりにうるさいので、ゲンコツを一発。

ゴスン!といい音とともに泡を吹いて気絶した。


「ありゃあ伝達魔法が使えるヤツが居るな。思ったよりも手強い連中かもな。ちょっと腹括ってやらねぇと不味い相手らしい」

ディアミドが相手の評価を上方修正する。


騎兵との距離は既に100m、お互いに今更逃げ出す距離ではなくなった。


ディアミドに「そっちは頼むぞ」と言い残すと、ハイランダー達から少し離れ、久々の魔術を使った。


「我が身を守る盾となれ、"土石壁"」

宙に魔法陣を描き魔力を注ぐ。

そこはかとなく魔法使いっぽい。


地魔術でハイランダー達の後方を騎兵から守るように壁を作り、騎兵の標的を俺一人に絞らせる。


「魔法使いがいたぞ!ヤツから血祭りに上げろ!」

多分そんな感じの声をあげてるんだろう。


コイツらは地竜を殺した魔法を見てないからなのか、既に撃てないとでも思っているのか馬鹿なのか、傭兵達を狙われると嫌だなぁと思っていたが、ありがたい事に槍を俺に向けランスチャージの体制を取ろうとしていた。

距離70m


襲歩の騎兵が馬ごと肉塊に変わる。

一発で先頭と後ろの3騎、更に二発目で2騎を撃破。

オーバーキルの20mm二発を撃ち終え、7.62mmのバレットに変更してフルオートで弾幕を張る。

8騎を撃破

再装填リロード


速度を落としながら、それでも尚止まらない騎馬突撃は残り25mの位置。

ランスチャージとしては既に必殺の間合いに入ったのだろう。

兜で口元しか見えないが笑ってるのがわかる。


「バイなら」

土操作で落とし穴を掘ってやった。

体制を崩した馬から放りだされる者、一緒にコケて下敷きになる者、後ろからきた味方に轢かれる者。

4騎撃破


強引に軌道を逸らして難を逃れた右側を単連射で二発ずつ撃ち込む。

左から回り込もうとしたヤツらをフルオートで薙ぎ払う。

合わせて6騎撃破


落とし穴の手前で踏みとどまったヤツらは、既に下馬してコチラに盾を向けて距離を詰めようとしていた。

リロードすると、勿論構わず撃ち殺した。

盾を突き破り鎧を穿ち穴から生命いのちがこぼれ落ちる。

6騎撃破


馬から投げ出されて息のあるヤツを強化ナイロン製の簡易手錠で拘束すると、その場に転がした。

「ふぅ……」


やれる自信はあったが、思ったよりギリギリだった。

やはり自分の体を張るのは今後は控えようと思う。


後ろから雄叫びが聞こえてきた。

敵が射撃をやめて歩兵突撃を始めたようだ。

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