第83話 統一戦線の異常な影①

「暴力では何も解決しない!何故それがわからないんだ!暴力は憎しみを産むだけなんだ。その憎しみの連鎖がさらに不幸を産む。こんな悲しみは、ここで断ち切るべきだ!そうだろう?」


モーリッツとローズは白けた顔で俺を見ている


「俺は、アンタのその台詞と現状が著しく乖離しすぎて頭の病気を心配している」


「私は心の方の病気なんじゃないかと思ってるんだけど……」


新興勢力のアジトの一つに挨拶しに来たんだが、対応が酷すぎて……


いや、身の危険を感じたので、正当防衛を行使したまでだが……


逃げようとした奴等をバレットで撃ったのは、確かにちょっと挨拶にしてはやり過ぎたかもしれん。


俺、モーリッツ他2名の護衛、ローズと手下1人で乗り込んでみた。


20人程のゴロツキしかおらず4、5人が足や腕等を複雑骨折するなどの重傷で後は死亡した模様。


つーか、やったのは俺だけど。


「お前らだってアレだろ?後腐れないように敵を根切りにするだろ?貴族もマフィアも得意分野だろ?こういうの」


2人共眉を顰めて無言で否定している。


「まぁ、いいや。あっ、これやったのローズファミリーって事にしといてくれな。おい!"袖無し"!コレやったのお前な」

ローズのアジトで痛めつけた半端者の超越しかけの"袖無し"は、驚くほどの回復力と教会の治癒魔法のおかげで2日後には現場復帰してきた。

片割れは未だ入院中だ……


「へい、兄貴!こんな手柄もらっちまっていいんですかい?」

こういうヤツは単純でいい。

強いヤツが偉い!仲間になった強いヤツ=兄貴!


ゴロツキに兄貴呼ばわりされるのは心外だが、単純な彼等は非常に面白いので暫くは我慢しよう。


「勿論だ。それより早いとこ口割らせて、仲間の居所聞き出すとしよう」

何とか話しができそうな重傷の3人を袖無しが引きずって連れてくる。


袖無しにゴロツキの一人の身体を押さえさせ、モーリッツの部下に布で顔を覆うように押さえさせると顔に生活魔法で水をかぶせて溺れさせた。


簡単に窒息の苦しみと水を強制的に飲ませる事で気管支や肺に水が入って地獄の苦しみとパニック状態にさせる事ができる。


やっぱり生活魔法万能説は正しかった


「苦しいか?楽になりたいよな?仲間の居所を話せば、直ぐに解放してやる」


目で合図するとモーリッツの部下は再び布を顔に被せ俺が魔法で水をかける。


「ボォゴォガガァバババポォアッ」

と実に苦しそうだし、折れた手足も必死に動かそうとしていて痛々しい。


その様子を見ていた残りの2人にモーリッツが、

「あぁなりたくなかったら今の内に喋った方がいい。アイツは頭がおかしいんだ。多分、容赦なんてしないぞ?コチラにつくなら助けてやる」と飴と鞭でいう"飴"で釣ろうとしていた。


「わっ、分かった!何でも言うことを聞く!助けてくれ!頼む!」

まだ尋問もしてないのに根性のないやつだ!


水責めされたヤツは溺死寸前で休憩中なので、まだ迷ってるヤツの方を袖無しに連れて来るように言うと、ローズがソイツに優しく話しかけた。


「そんなに、あの精神異常者に痛めつけられたいの?そういう趣味を持ってるんだったら止めないけど……ねぇ、この人にはどんな事するつもり?」

と、俺に聞いてきた。


同じやり方じゃつまらないと思い、生活魔法で指先から強力なバーナーの炎を出して

「これで手足を焼き切ろうかなーって思ってた。失血しないから手足がなくなっても中々死なないらしいんだよ。ちょっと試してみようかなーって」


 "シュゴォーッ!"ともの凄い勢いの炎にゴロツキは顔面蒼白だ。


ローズは自分から聞いてきたくせにドン引きしている。


勿論ただの脅しなんだが、ローズや他のメンバーも「マジかコイツ!」みたいな顔で俺を見ていた。


ちょっと、流石に心外に思ったが脅しとしては効果的だった。


ローズに「忠誠を誓うから助けてくれと!」泣きながら助けを請い、その綺麗なお御足に縋り付かんばかりの男を袖無しが首を掴んで引き離していた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る