第58話 バリスティックな盾

悩む…


ポイントで購入するか否か…


今悩んでるいるのはバリスティックシールド、所謂防弾盾を購入するかどうかだ。


こっちの世界の盾も考えたが、値段の割に防御力がいまいちだった。

鉄製の盾でもバレット改の5.56mmバージョンですら貫通を許してしまったのだ。

ヒッチ子爵の訓練場で試しにこっちの世界の各種防具の耐久試験をやらせてもらったのだが、板金鎧はおろか大型の盾すら貫通しまくっていて、「ダメだこりゃ」となった。


パワー特化魔法使い(笑)の俺は片手でもそこそこの重量物を楽々振り回せる。

バリスティックシールドでも楽々装備して動き回れるはず。

単純に邪魔な時はアイテムボックスに収納してればいい。


問題はお値段だ。


5000P。角ウサギ1000羽、ゴブリン500匹相当の魔石量だ。最近サブクエ的なものも発生してないのでこれを購入すると目標としていた10000Pが遠くなる。

魔力UP(大)と魔力量UP(大)で合わせ10000Pをとりあえずの目標としていた。

細々と使ってるけど…


「そろそろ盗賊にでも襲われないかなぁ」と独り言を呟くと、隣りのアイリーンから肘打ちをくらいマルコス義親子には呆れた顔をされた。

全ては暇が悪い。



商隊は特にトラブルも無く順調に進んでいる。


野営地を出発し、大街道に合流し夕方前には次の宿場町に着ける予定だ。


大街道に合流する地点よりおよそ3kmほど手前辺りで、ちょっとした森が見えた。

およそ500mの地点で索敵MAPに感有り!


更に後方からも接近する集団が!

くぅ〜るぅ〜!!


「神は死んでないな」そう笑顔で言うとマルコスさんに商隊を停止するように言う。

困惑した顔のマルコスさんだったが、アイリーンが従うよう助言してくれた。


森まで約300mの地点で街道の脇に停止した一行に伝える。

「前方の森に伏兵あり!後方からも…おそらく騎乗していると思われる一団が接近中だ!」


森の横を通ろうとしたら前方を塞ぎ、後方の騎馬隊とで挟撃される事になる。

前方の森におよそ30個のオレンジ色の丸いマーカー、後方から15個のオレンジ色の三角マーカーを確認した。

MAPさん、AI学習機能でも付いてるんじゃないかと思うくらい便利になってる。

最初はこんな識別機能なかったのに…



前方の伏兵に動きは無い。後方の騎馬隊は現在地からは丘の向こうの死角で見えない位置で停止中だ。



極悪面のボルグが「本当に敵襲か?」と胡乱げな顔で聞いてきたので、敵の位置と兵力をざっと地面に描いて「魔法で感知した」と説明した。


マルコスさんは険しい顔で悩む素振りをみせる。

補佐のエルジーは「まだ敵かどうかは分からないでしょう?」と言ってきたが、俺もボルグも「「こんな怪しい奴等は敵だ」」と一蹴し、ガストン隊長も頷いて肯定した。


「数はこちらの2倍近く、作戦は単純だが効果的だ。騎兵の位置や行動、伏兵の潜伏状況からみて敵は恐らくそこそこ軍事訓練を受けてる奴等だろう。こちらの全騎兵で敵の騎馬を抑えられるか?」

と聞いてみる。


「今なら丘を駆け上がって反対側で油断してるクソ共に勢いをつけた騎兵突撃をかませてやれる。お前の情報が正しければな」と戦闘前の興奮か、血に飢えた狼が大きな口を開いて笑っている。


「そうだな…しかし、森の伏兵はどうする?騎兵が居なくなれば動きだす可能性があるぞ」と、ガストンは商隊護衛の隊長としては本隊から離れる事に躊躇いがあるのだろう。


「心配ない、俺とアイリーンで森の伏兵を抑えるし撃ち漏らしくらいなら『鉄の盾』とギルド員が商会長達を守るさ」と言ってアイリーンを見た。


普段の冷たい眼をしていたが口角を少し上げて「しょうがない奴だ…」と笑い、「こっちは心配ない、そっちの方が怪我しないか心配だ」と言った。


ボルグは凶悪な笑顔で「俺達が戻る前に死ぬんじゃねーぞ」と戦闘準備に取り掛かり、マルコスさんは「見せてもらおうか、氷の魔女の実力とやらを!」

と、厨二臭いセリフを吐いた。マルコスさん意外とイケイケなのかな?


雇い主が作戦にGOサインを出したので全員が行動を開始した。


馬車は円陣で防御態勢を騎兵達はボルグを先頭に魚鱗(三角形)の隊形でガストンが中央後方の位置につく。


こちらの行動を見ているだろう敵に動きが無いのは僥倖である。


「では、戦闘開始!」


合図と共に騎兵達は丘を駆け上がって行った。


結局バリスティックシールドを購入して森に近づき、大声で敵に呼びかけた。

「いい歳こいて隠れん坊、ご苦労さん!もうバレてるから出て来いよ!早くしないと後ろの騎馬隊が全滅して逃げられちゃうぜ!」

俺は森まで残り30mほどの所で敵を煽り、アイリーンを100mほど後ろに残して魔法の準備をさせていた。


騎兵達が自分達の味方の方向に向かって行くのを見て焦っていたのだろう。


武装した男が現れて手下共に攻撃の合図を出した。

飛んで来るまばらな矢を盾で防ぐ。

「挟み撃ちは失敗したが、今なら馬車隊を全滅できる!総員突撃ーー!」


全速力でアイリーンの元に戻ると、いい顔で笑ったアイリーンが呟く。

「汝、氷結せよ」

突然の魔法に歩兵突撃の30人は次々と足、胴体と身体を凍らせていく。

先頭の集団は突撃の勢いのせいだろう、凍った足が砕けて倒れると顔や手までも凍りつき死んだ。


「ヒィッ」「な、何だ!魔法使いなんて、き、聞いてないぞ!」「足が!俺の足がぁー!」「助けてくれ、助けてくれよ!頼むよー!」


控えめに言って、惨劇だった。


魔法使いもいたのか、火の玉が飛んでくるが盾でも難無く防げた。

良い買い物したなぁと思いながら、盾を構えて足の凍った敵をバレットで薙ぎ払うように撃ち殺す。


アイリーンには範囲を絞って全滅はしないよう頼んでおいた。

未だ健在の7人に「いやー、間抜けは楽で助かるんだが余りに簡単だとさぁ、俺達の報酬が減らされそうで困るんだよねー」と言いながら一番上等な装備の男の両膝を撃ち抜く。


残りは完全に戦意喪失していた。


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