第57話 モフモフ……

マルコス商会は4台の荷馬車と1台の大型箱馬車、16騎の騎兵+犬2匹で出発した。

箱馬車にマルコスさん、マルコスさんの義理の息子のエルジー、俺、アイリーンの4人。

Cランク冒険者チーム『鉄の盾』とギルドの現場職員が2人づつ荷馬車に分乗。

極悪面率いる『義狼隊』と商会護衛隊は、全員が騎乗し騎馬斥候を前後に2騎ずつ本隊から離して残りで隊列の前後を挟む形で進んでいった。


犬2匹はマルコス義息子エルジーの護衛犬で狼に似た賢カッコイイ犬だ。

ついにモフモフ枠の登場か!と思いきやその体毛は結構硬めだった…


エルジーは元々行商人でマルコスさんと知り合い、娘さんと結婚して商会長補佐になったらしい。


小休止で犬に近寄るとちゃんと訓練されてるのだろう、警戒はされたが吠えたりはしなかった。

ペットとしてではなく使役動物としてエルジーは良く躾けているようだった。

最初が肝心だ!と身体強化をかけながら、どちらが優位の存在かを示して近づき

優しい声をかけながら、完全にビビってた2匹に犬用オヤツをポイントで購入し与えてみるとすぐに仲良くなれた。


「熊や狼にだって怯んだりしないんですけどねぇ…」と困惑していたが、聞こえないフリして撫で回した。


「犬が好きなのか?慣れてるな」とアイリーン

「前に猟犬を飼っててな。好きといえば好きだな」

ここまでデカくないし日本犬だったけど。

「近くで見ると可愛いものなのだな」と目を細めて犬を見ていた。



初日から3日目までは途中の町で宿泊できたが4日目は野営になった。


夕暮れ前には街道脇のキャンプ地に天幕を張り食事などの準備を終えていた。


俺は馬達に与える水を魔法で出したり馬の世話を教えてもらったりしていると、「魔法使いがいると助かるよ!お礼に、乗馬の仕方を教えてやる」と馬の世話係を極悪面に任命された『義狼隊』の最年少だという青年が言ってきた。


もう1人の馬係だと言うオッサンは「本当、水汲みが無いってだけで大助かりだ!コイツは騎馬民族の出身だから、馬の事はコイツに聞けばいい」と言って笑っていた。


商会護衛の馬係と5人の馭者は商会長のお客さん扱いの魔法使いに恐縮してはいたが、水汲みはやはり大変だったのだろう、笑顔で礼を言ってきた。


昼間、道中で犬2匹が林から追い出した、はぐれオーク2頭の内1頭を『義狼隊』の騎射でハリネズミにし、もう1頭を商会護衛隊長が片腕を切り落とすと2匹の犬が首と腕に食らい付き仕留めていた。


そのせいで汚れが酷かったので、犬2匹を魔法で出したお湯とポイント購入した犬用シャンプーで洗ってやった。

温風ジェット乾燥でブラッシング付きで。

獲物を見つけて仕留めたご褒美だ。

モフモフに…はならなかったが毛艶はよくなった。


知ってた。

動物なんてそうモフモフと言われるほどモフモフにはならない。せいぜいフサフサだろう。

大抵毛は硬いし臭いのだ。


ファンタジー的モフモフに期待してちょっとだけ落ち込んだ俺は、天幕の中でアイリーンの胸で癒してもらう事にした。







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