第48話 コレット魔術士続けるってよ

あのお父様が私に聞いてきた

「アイリーン殿の弟子をやめるか、このまま3日間牢に入るか選びなさい…」


本当に驚いた。あのお父様が私に牢屋に入る選択肢を残すとは…

アイリーン様は今回の事を相当問題視しているという事だろう…


3日もこんな所にいたくはないが、アイリーン様の弟子をやめるということは場合によっては魔導士はおろか魔道士の道すら断たれる可能性もありうる。


アイリーン様の派閥はこの国最大派閥・融和派であり、宮廷魔導院以下魔導師団から魔術協会までその中枢はほぼ融和派が独占している。


ここで派閥有力者の一人であるアイリーン様に破門とされれば国内で私を新たに弟子として迎えてくれる魔法使いはほとんどいなくなる。

派閥内はもとより、中小派閥は最大派閥を敵にまわしてまで破門になった人間を迎え入れたりはしない。残りは唯一の敵対派閥となる復古派だが、今やほとんど過激な犯罪集団だ。


破門でなくても忖度されて派閥内には居場所がないだろう。


それに、やはり私の師はアイリーン様ただ一人。

あの尊きお方から離れるなどありえない!


それなのに…

「あの下衆野郎っ‼︎」

「コレット⁉︎」

お父様が驚いてしまったが今はどうでもいい!

そう!元はと言えばあの下衆野郎のせいだ!

美しい花に寄る糞虫!

天誅を下さんと…まぁ殺しはしないが骨の2、3本でも折ってやろうと思ったのだけど…

魔術で吹き飛ぶ下衆野郎を見て笑みを浮かべたが、地面に叩きつけられるはずの男は変な動きで落下の衝撃から逃れ立ち上がった。


魔法使いのくせに軽業師のような真似が出来るなんて!と、思った瞬間落下の感覚と強い衝撃を最後に記憶を失った。


顎を強打して気絶したらしい…

「穴に落ちる際ぶつけたみたいよ」と、ギルドのお姉さんがポーションとクサイ飯を持って来てくれた時にこっそり教えてくれたのだ。


あの下衆が瞬時に地面に落とし穴を作ったのだろう、なんて卑劣で矮小な男だ!


私にはアイリーン様をあの下衆野郎からお守りする使命があるのだ!


「お父様、コレットは何日でも牢で耐えてみせます!アイリーン様の側から離れません!」


悲しそうな顔のお父様

貴方の娘は使命の為この恥辱耐え抜いてみせます!



「ヒッチ子爵、そろそろ…」

ギルド職員に声をかけられお父様は

「コレット、また迎えに来る。耐えよ…」

そう言って去っていき、薄暗い牢に一人きりとなった私はアイリーン様からコッソリ拝借したブラジャーを懐から出すと、それに顔を埋めて眠りについた



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