第11話 村と挨拶と童

「……知らないわらしだ……」


目が覚めると、目の前に俺の顔を覗き込む2人の子供がいた。


 近い、近いよ君達……。


「あっ!起きた!」キャッキャと、「そ、そ、村長が、客人を起こしてこいって……」オドオドと告げる子供達。


 村長にパシらされた2人の子供に「分かった、ありがとう」と言うと、2人はパタパタと走って集会所から出ていった。


 田舎のキレイな朝の空気を吸うと、故郷を懐かしく思い出しながら顔を洗い、タオルなど持ってない事に気づいて風魔法で水気を払った。


 村長宅に向かうと数人の村の男達が集まっており、こちらに気づいた村長がテーブルに招いてくれた。

「おはようさん。大したもんはないが今朝飯をだすな」


「食べるじゃろう?」と言われれば、「勿論、ありがたく」と笑顔で答える。


 席に着くと村長が男達が集まっている訳を話してきた。


「昨夜、村から少し離れた牧場で羊が襲われてのぅ。狼なんじゃが、魔獣になっとる個体がまじっとるらしい。幸い数は少ないのが救いじゃ」


 出てきた粥をすすりながら村長や男達の話しを聞いていると1人の男が「あんた様は魔法使いらしいけど、魔獣の討伐なんかは出来たりしないのけ?」と話しを振ってきたので、少し考えて「まぁ、多少なら」と答えた。


 一宿一飯の恩もあるし、ちょっと様子をみて討伐しようかなとか軽い感じで考えていたところだ。


 純粋な善意からではなくレベルアップに魔獣の素材、魔法やスキルの試し撃ちなど打算的な考えもあった。


 彼らは領主に兵を出してもらうか冒険者を雇うかで話し合いをしていた。

 魔獣になった狼は村人には手に負えないらしい。


「ちょっと現場を見ておきたい」と言うと、村長宅に集まっていた男達の中に牧場主もいたらしく案内してもらった。

 村長は期待3割・心配7割といった感じで、「無理はいかんぞ。応援が来るまで待っとらせばいいんじゃから」と言ってたが、倒せるにこしたことはないだろう。

 道すがら魔力操作の具合を確かめる。


 現状、唯一の遠距離攻撃手段であるバレットの改良が急務であると考え色々試してみた。

 魔力をこめて大きさと威力が上がったが弾速自体はさほど上がってなかった。

 発射速度いわゆる連射速度もイマイチである。


 弾の威力を落とさず小さく圧縮し、魔弾を飛ばす感覚を撃ち出すようにイメージする。

 弾丸を撃ち出す銃を想像する。


 指先だけに集中していた魔力を腕全体に溜めて次弾の装填を素早くできるようにした。



————————


 牧場主は隣りでブツブツ言いながら歩く魔法使いを横目でチラチラ見ながら、そっと溜息を吐いた。


 村長が村に招いた魔法使いらしくない魔法使い


 悪い人間ではないとは思うが、魔物相手にあまり役に立つようには見えない


 変人が多いといわれる魔法職であるこの男……

 今から襲撃現場に向かうのに全く緊張感のかけらもない。

 指先を見つめ腕を伸ばしたり曲げたり、あーでもないこーでもないとブツブツ独り言をつぶやいていた?


「あれって、狼?」

 男をそれとなく観察していると、急に声をかけられた。


「え!?どこです!?」

 辺りを見回すが、狼なんぞ見当たらない。


「あの森の、林なのかな?切れ目の所に2頭」

 距離にして200歩ほどだろう、よくよく見たが言われればなんとなくそうかもといった感じである。

よくまぁ、見つけたもんだ。猟師の真似事をしている自分でもあれを見つけるのは難しい。


「こっちにはまだ気づいてなさそうだ。ギリギリまで近寄って頭数をへらしとこうか」


 男は魔法使いらしからぬ斥候や狩人のような動きで森に近づく。


 邪魔にならぬよう姿勢を低くし少し離れて待っていたが、後50歩程の所で男は立ち止まると狼に向かって腕を伸ばしたと思ったら1頭の狼の体が大きく飛び跳ねた。かと思うとそのまま倒れた。

 もう一頭も仲間が急に倒れて驚いたのかキョロキョロしていたがすぐに頭を爆ぜさせて倒れた。


 あれは魔法なんだろうか?

 狼に向け腕を伸ばし指を指しただけに見えたが、その後狼は立て続けに倒れた。

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