第1話 俺、大地に立つ

『……では、其方達の健闘を祈る…』

 そう言い残すと、自称神と名乗った"何か"は消えていった。


 それは、広大なMAPと自由性に富んだオープンワールド系MMORPG『神々の箱庭』で、所属クランが日本サーバー1位を祝して記念撮影の為にほとんどのクランメンバーが集合していた時に起こった。


 これは曰く、集団転移であると

 "何か"はクランの戦力に目をつけこの世界に送り込んだと

 送り込んだ世界で事を成すために力を与えたと

 etc…etc…


 簡単に言えばそういう事らしい。



 そんな現在、1人ポツンとなだらかな丘陵地に立っている非現実感に呆然としている


 SNS映えするであろう広大な景色に爽やかな気候条件は八月の都内ではとても考えられず

「これが異世界か……」と思わずつぶやいた。


 集団転移なのに何故現在1人なのか…は、まぁ転移の瞬間他のゲームを別コンシューマーでやっていたせいらしい。

 集合の待ち時間にゾンビシューティングしてたせいではぐれたと……。


 こりゃあ以外にも、はぐれ者がいそうだなとのんびり考えていた。


「ゲギャッ!」とか「ギャギャ!」「グギャ!」なんて鳴き声を聞いて我に帰ると、接近する三体のゴブリンがいた。


 困惑はしたが、自称"神"とやらの事前説明のおかげで敵性生物である事、挙動や移動速度から大した戦闘能力を保有していないのは大体解った。


 三匹に囲まれないよう位置どりし、走って来る一体目のゴブリンの顎を掌底でカチ上げ、そのまま首を掴むと後頭部を地面に叩きつけ、同時に喉も一緒に潰してやった。


 二体目がすかさず粗末な棍棒を振り下ろしてきたのを横に払い受けてかわし、後ろを取る形で首を絞めながら三体目が刺しこもうとした短剣の盾にする。


 仲間を刺してしまった事で怯んだ三体目の鳩尾を蹴り抜き、首を肘で固定して拘束していた二体目のゴブリンの頭を両手で掴み直し、首を捻り折って止めを刺した。


 腹を押さえてのたうち回る三体目をソイツが落とした短剣を拾い上げ、首と腹を滅多刺しにする。

他の2体の様子をみるが、どちらも事切れていた。


「フゥー」っと、一つ息を吐く


「意外とまだイケるな」と呟いた。元自衛官だったことが役に立つ事なんて大体ろくでもない事態なのだが、気分も身体も軽い。


 戦闘の後に感じた覚醒したような、力が漲るような感覚を思い出し、いい歳こいたオッサンの嬉し恥ずかし唱えたのは「ステータス!」である。

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