上と下の手紙
アキノリ@pokkey11.1
婚約指輪
例えばこの世界が何処もかしこも花に満ちてなくても。
まあそんな事は無いのですが。
それでも私は世界に花が咲いた様な.....そんな気分で空を見上げています。
愛しいあの人が.....最後に私にしてくれた事。
それが.....今でも として。
☆
OLとして働いている私の名前は伊藤美紀(いとうみき)と言います。
現在28歳の.....女性です。
私は.....とても大切な男の子の親友が居ました。
だけど私は心では親友と思っていません。
どういう意味なのか。
そうです。
私は.....親友が好きでした。
心から、です。
でも彼は.....今は亡くなりました。
彼は日々衰えていく身体を見て.....暴れる事もあり。
それでも私は.....そんな彼が大好きでした。
今でもそれはずっと思います。
彼だけが私の全てだったな、って。
それぐらい好きでした。
彼は長友陶冶(ながともとうや)と言います。
享年18歳。
白血病でした。
簡単に言えば血液の癌です。
彼は.....小児がんだったのです。
16歳の時に発症し.....18歳でこの世を去りました。
それから10年が経ちましたが。
私は.....彼と以心伝心しているつもりで居ます。
今でもずっと、です。
天国で好きな人が出来たとしても。
私は彼が好きです。
家庭を持っているでしょうか。
それとも.....家庭を持ってなくても.....幸せでしょうか。
その事を考えながら.....日々過ごしています。
彼は.....きっと私を見てくれている。
そう思いながら彼の分も含めて.....生きています。
その彼のお陰なのか私は.....交通事故に偶然、遭遇した時も。
怪我一つ無く生きていました。
彼が守ってくれたんだなって.....そう思えます。
そんな彼は.....私と一緒の時は絶対に涙を見せませんでしたが.....17歳の時には私に当たってきました。
『もういい!俺は.....治らない!お前の顔も見たくない!!!!!』
そんな感じで、です。
私はその言葉にはかなり傷付きました。
でも.....彼の気持ちを思うと。
願わずには居られなかったのです。
そんな彼ですが彼はとてもシャイでした。
その為、私が好きと言っても、何を?アホかお前は、としか言われなかったです。
でも今では思います。
あれは彼なりの.....好きという表れだったのだ、と。
何故かというと簡単です。
でも今はそれを紹介するのは止めておきましょう。
また後で.....紹介します。
私はそんな彼の元にずっと通い続けました。
でも彼は.....日に日に衰えていっていて。
私は.....とても悲しかったですが。
彼はこう言いました。
『.....俺は頑張る』
と、です。
それがどういう意味だったのか分からなかったです。
ただその一言で.....それ以外は何も話さなかったから、です。
私は.....その一言を聞きながら.....自分に言い聞かせているんだな、って思いつい聞いてしまいました。
だけど彼はこう言いました。
『違うよ』
と。
私はますます意味が分からなくなりました。
だけど.....今では理解出来ます。
彼は.....猶予をくれたんだなって。
私が悲しみを軽減出来る猶予を、です。
最後に彼が.....答えを書いて纏めてくれていたからです。
あら。
答えを言ってしまいました。
実は私は.....彼から最後に.....手紙を貰いました。
彼は.....先程も言いましたがシャイなのでそんな事はしない感じなのですが。
葬式場で.....彼の母親が私に手紙をくれたのです。
それも....2つの手紙を。
それは直ぐに理解出来ました。
何の手紙なのか、です。
実は1年ごとに開封する為の手紙だったのです。
それは.....つまり。
私が20を迎えるまで.....見守る為の、です。
とても号泣しました。
私は.....一生分の涙を流すぐらいに泣きました。
崩れ落ちてしまうぐらいに、です。
嗚咽を漏らしながら.....私は手紙を見ました。
その手紙は上と下に別れており。
1年目で上を。
2年目で下を。
開けて欲しいと伝えられたと彼の母親は言っていました。
私は.....その事に彼が天に登っていった白い煙を見ながら。
家に帰ってから.....早速1年目を開きました。
そこにはこう書かれていたのです。
(よお。美紀。卒業の時期になったな。俺はシャイだからこういうの照れ臭いんだけどさ。お前に全てを託して天に登りたいから書かせてもらったよ。俺な。お前に会えて幸せだった。俺を看病してくれて有難うな。こんな俺に付き合ってくれて有難うな。こんな俺に花束をくれて有難うな。俺はとても幸せ者だ。そうそう。何故この手紙を遺したか分かるかな。それはお前が悲しむ顔を見たくなかったからだ。俺はお前が好きだ。だからこそ悲しんでほしく無かったからな。全てはお前の悲しむ涙を拭う為にやっていたんだ。今までの事全部、な。今泣いていてもあまり悲しくないだろ?猶予期間を設けたからな。だから頑張ろうって思えたんだ。美紀。俺はお前と結婚したかった。そしてお前を幸せにしたかった。だけどそれはもう叶わないと思うから最後に一言だけ。愛してるってな。泣かないでくれ。来年になったら下を開いてな。じゃあな)
私は自室でしたがハッとしました。
そうか。思った以上に悲しくないのは.....彼のお陰だったんだって。
私はただその事に泣き腫らした顔で.....頷きました。
それから高校を卒業してから大学に進学して.....20になりました。
だけど私は手紙を開けなかったのです。
最低だと思いました。
でも.....これで彼との繋がりが終わってしまうと考えると、と考えている矢先に。
私は20の時に出会い頭の事故の弾みで飛んできた車の巻き添えの交通事故に巻き込まれました。
それは死んでもおかしくない事故だったのですが.....怪我すらありませんでした。
擦り傷もないのです。
その事で決心して、下、を開いたのです。
だけどそこには手紙も何も入っていませんでした。
その代わりに.....結婚指輪の様なものが1つだけ入っていたのです。
私は愕然として.....指輪を見ます。
その中でやっぱり何処までもシャイな性格だな、って思いました。
でもそれでも。
心の底から笑顔が浮かんだんです。
嬉しすぎて、です。
「.....有難う。嬉しい.....嬉しい.....!」
私は涙を浮かべながら.....その指輪を左手薬指に嵌めてから。
手紙を大切に大切に仕舞ってから.....。
そのまま顔を上げました。
頑張ろう、と。
彼の分も生きよう、と強く強く、です。
☆
それからあっという間の10年が経ちました。
私は彼の事を1日たりとも忘れた日は無いです。
とても嬉しかった.....。
その気持ちが私を押し進めています。
私はスーツ姿でショルダーバッグを持ち会社から出てから晴々の空を見上げました。
「.....今日も晴れてるね。陶冶。.....私ね。生きるよ。絶対にね」
そんな時でした。
いきなりの旋風が私を包んだんです。
2月なのに.....寒く無い旋風が、です。
通行人も驚いています。
私は、2月なのに!?、と驚愕しました。
だけど.....その中で、頑張ってるな、と陶冶の声がした気がしたのです。
8月並みの暖かさでした。
まるでハグされている様な.....そんな暖かさです。
「.....有難う。陶冶。.....本当に有難う」
そして私はその事には悲しげに涙を流す事も無く。
強く歩き出します。
この世界に陶冶が居なくても。
いや。
生まれ変わっているかもしれない陶冶を思いながら.....です。
赤ちゃんかな。
それとも.....成長しているのかな。
「そうだね。私は.....それでも生きなくちゃね。陶冶」
その時、日が差しました。
左手薬指が輝きます。
陶冶がくれた.....結婚指輪が、です。
私は本当に幸せです。
今は何も考えれないけど、です。
その想いを噛み締めて.....空をまた見上げました。
それから笑みを浮かべます。
fin
上と下の手紙 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます