第二から第五までの犠牲者

 エディは殺人に最適化された存在だった。そのために必要な条件は数多あまたあるが、中でも最も重要なものは、力が強いということと、そして動きが素早いということの二つであった。


 二人目の犠牲者は心臓を一突きにされた。彼女の名は遠野由香利とおのゆかりと言った。二十七歳だった。息子を連れて、デパートに玩具オモチャを買いに来た。ただそれだけだった。そして、エディに出会った。


 まるで影が舞うように、エディの姿は駅の中を疾走した。そして、疾走しながら、彼はその両手に爪のように生える刃を振るっていった。


 三人目の犠牲者は両目を貫かれ抉り取られ、そして眼窩から脳漿を噴き出した。彼の名前は霧崎元気きりさきげんきと言った。十八歳だった。恋人を連れて、デパートの一階にある高級なショコラ店から出てきたところだった。ただそれだけだった。そして、エディに出会った。


 四人目の犠牲者は自分の恋人を襲った惨劇を目の前で目撃し、狂乱状態に陥ったところを背中から刺し貫かれた。心臓や肺臓は貫かれなかったから、彼女は自らの死の苦しみの中で恋人の眼窩から脳漿が吹き続けるところをずっと見ている羽目になった。エディは彼女が絶命するまで、その身体を水平な高さに掲げていた。彼女の名は戸川小苗とがわさなえと言った。十七歳だった。恋人に連れられて、デパートの一階にある高級なショコラ店から出てきたところだった。ただそれだけだった。そして、エディに出会った。


 エディは再び疾走する。


 五人目の犠牲者は、エディの手で両足を切り離されて無様に床に転がり、そしてとどめに喉を突かれた。彼の名前は黒川佐吉くろかわさきちと言った。七十八歳だった。眼鏡のつるが歪んでしまったので、それを直してもらうために眼鏡店にこれから向かうところだった。ただそれだけだった。そして、エディに出会った。


 エディは、再び疾走する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る