第一の犠牲者

 人間の首が宙を舞い、そして、一拍遅れて、血飛沫が飛んだ。幼い少年の首だった。斬り飛んだ首の位置は低かったから、付近の人間の多くが血に塗れ、そして甲高い悲鳴を上げた。


 少年の名は遠野瑞貴とおのみずきと言った。五歳だった。母親に連れられて、デパートに玩具オモチャを買いに来た。ただそれだけだった。そして、エディに出会った。


 そこは駅だった。二百万の人口を擁する都市の、最も大きな駅の、中央コンコースだった。その場所に、エディは現れた。その姿は、人間とさほど変わるところがなかった。肌がひどく白く、髪の毛がぼさぼさで、鋲を打った黒い皮のツナギのようなもので全身が覆われており、そして、その両手から鋭い金属の刃が四本ずつ伸びているということのほかは、彼の姿は人間とさほど変わるところはなかった。


「ギ・ギ・ギ」


 エディは知性を持っていたから、言語を解することもできた。日本語を話すこともできた。その気になれば、ラテン語の韻文を諳んじることすらできた。だが、そのようなことをする必要はなかった。彼はただ、殺すだけでよかった。そのための相手は、この場にいくらでもいた。なぜなら、今日は日曜日だったから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る