第8話

「お兄ちゃん!」

 僕のお腹に小さな少女がダイブしてくる。

「お帰り!」

「あぁ、ただいま」

 ダイブしてきた少女だけでなく小さな子どもたち数十人が僕の周りに集まってくる。

「お帰りなさいませ。和也様」

 奥から僕と同年代くらいの見た目の少女、小夜が現れる。

 見た目は同じくらいでも実年齢は結構な開きがあるんだけどね。

「あぁ。うん。代わり映えはないか?」

「いえ、ございません」

「そうか。よかった。いつもありがとね」

「いえいえそんな。和也様のおかげです」

 ここは孤児院。

 僕の思い出の場所。

 あの人から託された場所と娘さん。

 僕のポケットマネーを使い、様々なものを買い揃えているので、ここの孤児院に暮らす人はそこそこの暮らしをしている。

 僕がこっちの世界に来て間もない頃にこの孤児院を運用してた女性に助けてもらったのだ。

 まぁ、その人は病気によって死んでしまったけど。

 残され、僕に託されたものがこの孤児院と娘さんなのだ。

「ごめんね。しばらく忙しくてこれなかったよ」

「いえいえ、こうしてたまにでも顔を見せに来てくれるだけでも至極幸せにございます」

「あはは、そう言ってくれると嬉しいよ」

「お兄ちゃん!遊ぼ!遊ぼ!」

「あぁ、そうだね。何して遊ぼうか」

「兵隊さんごっこ!」

「……あぁ。うん。そうだね。しようか」

 僕は元気に笑い、走り回る子どもたちについていった。


 ■■■■■

 

 しばらく。

 体力的にきつくなってきた僕は離脱し、遊んでいる様子を眺めていた小夜のもとにやってきた。

「あの人に、あの人に僕が任されたのに、ごめんね。君に任せきりになってしまって」

「いえ、私の仕事ですから」

「……君も。君のことも僕はあの人から任されたんだけどね」

「私はもう十分に大人です……!」

 少し。

 少しだけ不満げな様子を見せ、僕に告げた。

「……そうだね」

 まだ幼い。

 僕が高校で遊んでいたくらいの年だ。

 たった100年。

 それだけの年月でここまでの差ができるなんてね。

 残酷。……。本当に残酷だよ。

 何もかもが。

「これかもよろしくね。色々と迷惑をかけるだろうけど」

「迷惑なんてことはありませんよ。子どもたちの面倒を見るのは私の仕事にございます。許されるのであれば私はずっと和也様のそばに……」

「うん。もちろん」

 僕は元気に遊び回る子どもたちを眺める。

 必ず。

 必ずや守ろう。

 何をしても、どんな手をとっても、悪魔と罵られるようとも。

 託されたものを、愛しのものを、必ずや守ってみせよう。

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