第2話
「日本の韓国への支配権を認めよう。これでどうかね?」
「却下だな。日本の要求はロシアが完全にアジアから手を引くこと。韓国だけでなく満州の優越的地位も認めてもらう」
「……こちらが譲歩したのだ。そちらも譲歩というものを知ったほうが良い」
「譲歩?何を戯言を。あなた方が譲歩などというものを引き出せる状況でないことくらいあなたがよくわかっていることでは?」
「あまり我が国を舐めないほうが良い。そのように強気で来られると我が国としてもそれ相応の対応をとらなくてはいけなくなる」
「宣戦布告すると?大国ロシアの優秀な外交官であるあなたが我が国の同盟を知らぬ訳はあるまいな?」
『……イギリスの威を狩るイエローモンキーが』
今まで流暢に日本語を話していたロシアの外交官がぼそりとロシア語で吐き捨てる。
僕はロシア語もしっかりと理解できるが、聞かなかったことにしてあげよう。
「さぁ返答を聞こうか?交渉の余地はないよ?」
「……いいだろう」
「そうか。あなたの国とはいい関係を気付けそうだ」
ロシアの外交官は僕が差し出した手を無視して部屋を退出した。
まぁそうだろう。
どうせロシアの外交官はすぐに戦争が終わると考えているので、終わってから日本なんて叩き潰してやるとでも考えているのだろう。
『クリスマスまでには帰れるさ』と言われていたのだ。
その反応は妥当であろう。
ズルズルとした長期戦になるなんて一切考えていないのだろう。
しかし、実際はドロドロの長期戦になる。
まぁそこは未来から来た僕の特権だろうな。
とはいえ、第一次世界大戦がなぁ。
なんで、なんで、なんで1904年に起こるんだよ!
日露戦争はどこに行ったんだよ!
全くもって意味わからない。
なんで第一次世界大戦が今起こるんだよ。
ありえないだろう!
そもそも第一次世界大戦が起きた原因がサラエボ事件。
そのサラエボ事件の原因とも言える30年前から支配下においていたボスニア・ヘルツェゴビナの併合の宣言。
その要因である青年トルコ人革命が起きたのが1908年だ。
間違っても1904年にサラエボ事件が起こるはずがない。
「民族防衛団」も「ボスニア青年党」も結成されていないはずだ。
一体どんな理由で第一次世界大戦が起こるというのだ。
後で部下から聞いておかないと。
欧州の状況がどうなっているのか。それによって日本の戦略が変わってくる。
イギリスが率先して介入するなら日本も介入しなくてはいけないし、介入しないならアジアで好き勝手できる。
個人的にはイギリスには介入しないでほしいかな。
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