第54話 ローズセレモニー

私は、毎日のように悪夢を見て朝を迎える。


今日の悪夢は、ネタであれば面白いが、本当に起こる出来事ならば受け入れにくいものだった。

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登場人物は、私、母方の従兄弟2人、たくさんの女性。

舞台は、バチェラー。

バチェラーである従兄弟2人も、参加女性である私も、当日会うまで知らないという設定であった。


とてもリアルに作られたバチェラーの夢は、従兄弟の性格まではっきりとしていて、兄の方は私のような茶髪ピアス女には興味ないのである。恋愛対象外である。弟の方は割と陽キャ寄りだった。


本家では、初対面の時、ハグをしたり自己アピールをするのだが、夢ではそう簡単にいかなかった。


お互いに驚き、そして自己紹介の必要もないため、司会進行の人に助けを求めた。

番組のイメージを守るために、プロデューサーからほぼ命令のような形でハグを求められた。


兄は拒絶し、顔に出ていた。殴ろうかと思った。

弟は私の手と兄の手をとり、めんどくさいからと言い3人でハグをした。

恋愛の雰囲気ではなく、ただのスクラムのようだった。


カクテルパーティーにて、他の参加女性が彼らにアピールをし、2人で話している中で私はお酒をがぶ飲みしていた。

周りにいる女性に心配されるほどであった。

それでも、彼らが会場に戻ると女性の視線はそちらに行くのだから私には関係のないことだった。


A子、B美、Cさん、色んな女性がいて性格も様々だった。

3人掛けのソファーに座る私とA子とB美は、私を真ん中に据え置き、彼らを褒めていた。


「絶対性格もイケメンだよ~!」

「私は兄さんの方がタイプ~!」

「私もよ!」


ありえない、絶対ない、性格は全くイケメンじゃない。

顔と頭、身長・学歴などの性格以外はイケメンだけど…。

弟の方が可愛い。


そんなことを思いながら、お酒をがぶ飲みしていると、彼らが両手に花を携え、会場に戻ってきた。


A子とB美はここぞとばかりに、兄にアプローチをしていた。


すると、兄弟そろって私を指名した。


「なぎ(なぎ姉)、ちょっと来て(ほしい)」


参加女性の視線が全て私に注がれ、剣山にでも刺されたのかと思うほどだった。


無言で拒否の視線を送ると、2人に手を引かれ、外に連れていかれた。


黄色い嬌声や嫉妬の声に包まれた会場はそれはそれは怖いものだった。


「手、離して。2人で呼んだら、他の人に嫉妬されるじゃん。」


「確認したいことがある。」


「俺たちは本気で参加しているんだ。なぎ姉の気持ちを聞かせて。」


「私は、相手がだれか分からない状態で応募した。今まで幸せな恋愛をしたことのない私のラストチャンスだと思った。本気で参加して、選んでもらって幸せになるつもりで来た。相手がどんな人でもそれは変わらない。でも、選ぶのはやっくんととっくんでしょ。私と恋愛したくないってなら、セレモニーで落として。本気で2人が選んだ結果なら私はそれでいい。」


「分かった。」


「なぎ姉ありがとう。戻ろうか。」


会場に戻ると、私は女性に囲まれ質問攻めを食らった。


一番多い質問は、なぜ距離が近いのか、なぜ呼び捨て(あだ名)呼びなのか、だった。


答えるか悩んでいた私を救ったのは、やっくんだった。


A子が呼ばれ、ファーストインプレッションローズをもらっていた。


この時はやっくんに感謝した。


参加女性の視線はとっくんに、そのとっくんはローズを手に持ち、私たちの輪に向かってきた。


「なぎ姉、これ。」


てめえ、ふざけてんのかと言いたくなった。

これ以上問題を膨らませてどうすんだ、と。


「ごめん、セレモニーで選んでほしい。」


「なぎ姉、本気なんでしょ?」


「…分かった。」


私は、不満漂う中ローズを受け取った。


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嫌な気持ちになり、目が覚めた。

ついでだからと、アイスを食べお茶を飲み、お手洗いを済ませた。


別の夢になりますように、とまた眠った。


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南国の島に舞台が移され、続きを見ていた。


ツーショットデートに呼ばれていた私の相手はとっくんだった。


南国がゆえに、お互いラフで露出の多い姿で、困った。


私ととっくんは、プールに足をつけ、たわいもない話をしていた。


昔は一緒の布団で寝たこと

2人で花火を見たこと

お風呂も一緒

お泊りもした


これらは子どもだからできたことで、大人になった今では考えられないこと


それらを笑いながら話している最中に、とっくんがいきなりプールに入った。


「なぎ姉、来てよ。」


「え~、せっかくめっちゃ可愛いワンピース着てるのに?」


「いいから、来てよ。」


私は水着の上に白い薄手のワンピースを着ていた。しかし、それを脱ぐ勇気はなかったため、そのまま入水した。


水温はちょうどよく、プールに浮かぶ花びらが綺麗で、露天風呂のように入った。


「なぎ姉」


そう呼ばれ、振り向くと私は持ち上げられていた。


いくら浮力があるとはいえ、そこそこ体重がある私は恥ずかしくなり、じたばたもがいた。


「俺は本気だから。なぎ姉、本気とか言ってたけど全然向き合ってくれないよね。」


「そう思うならどうして私をここまで残したの?」


「なぎ姉は世間体やいろんなこと気にして、俺のことまだ年下の従兄弟だと思ってるから。」


「そうだよ。いとこ婚なんてデメリットしかない。幸せになれる確率の方が低いもん。ローズを拒否しても、受け取ってもいろんな憶測を立てられて、しんどい思いをするのは私。それに本気とはいえ私のこと最後に選んでくれるなんて思えない。怖いんだよ。また捨てられるのが。」


とっくんは私を降ろして、プールの外に出た。


「なぎちゃん、目瞑って。」


近くのベンチで殴られるのかな?なんて思いながら、待っていると水をぶっかけられた。


「何すんの!?急に!」


目を開けると、とっくんがプールの中にいた。


「うん、やっぱこうだね。」


「は?昔みたいにお風呂で遊ぶまね?」


笑いながらとっくんが指さす方向に視線を向けると、私の左耳の上にローズが飾ってあった。


「これ、受け取って。どんな結果になっても、俺はなぎちゃんのせいにしない。なぎちゃんのこと守るから。」


初めて私は、心からのありがとうを伝え、ローズを受け取った。


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なにこのベタ甘展開。


普通にそんなこと思ったこともないし、そもそも物心ついてから会ってないし。


寝汗ですごいことになっているパジャマを脱ぎ、朝マックをテイクアウトし、友達にこの奇妙な夢を話した。


友達は爆笑し、時々むせていた。


気持ちが悪い、そう思い、供養のためにここに記します。


補足:彼らの名誉のために書きます。

   本当にイケメンです。

   やっくん(兄):浮所飛貴君に似ている

   とっくん(弟):松村北斗君に似ている

   高スペックです。

   性格は優しいです。

   仲は普通です。

   私は、今恋愛をしていないし従兄弟をそのような目で見たことは一度もありま 

   せん。

   叔母さんには悪いですが、イケメンですが好みではありません。

   また、父方の従兄弟は三浦春馬さんに似ています。

   

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