第41話 150cm×150cm
私は自然流産の日ぶりに産婦人科に行った
ピルをもらうための定期通院で、いつも通り行った
適当に待っていると、隣にふっくらとしたお腹が見えた
鞄には、手に届かなかったバッヂが付いていて
足元はかかとの低いスニーカー
ワンピースにあったかそうなレギンス
なによりも我が子を想う微笑み
それら全てが眩しくて、羨ましくて、私は心の中で泣いた
何故見たくない時に見てしまうのだろうか
軽度難聴の診察もあり、耳鼻科に寄って、帰宅した
帰り道、かわいい3歳くらいの男の子とおじいさんが私に手を振ってくれた
どうして今日なのか
私はつらく苦しくなった
できる限りの満面の笑みで手を振り返したら、声を上げて笑ってくれた
おじいさんは会釈で微笑み返してくれた
悠陽がいたら、私の父と悠陽はこんな感じだったのかな、なんてないものねだりをした
クリスマス一色の街は私の心をナイフで切り裂き、元彼からのクリスマス飲み会連絡は辛かった
比較すればするほどどんどん自分が惨めで辛くなる
テレビをつければクリスマス
動画見ればクリスマス
買い物をすればクリスマスメニューがそこにある
そういえば、ひとりでクリスマスを過ごすことなんて人生で初めてだなあなんて思った
私は部屋に香りが残るのが嫌いで、玄関に寄りかかりながら外でたばこを吸う
右上からさす光は、月明かり
150cm四方のくり抜かれたコンクリートの壁から見える月は、綺麗でぼやけていた
サンタさん
どうか、悠陽に幸せを
私はサンタになる資格がなかった
だから、サンタさんどうかお願いします
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