第9話 原因不明

朝6時 母と共に起床


痛みと微熱があるが、抗生物質のためにパンを食べる


顔を洗い、歯を磨き、ジャージに着替える


これがいつもの検査スタイル


母はメイクなどがあるため、私の倍のスピードで動いている


朝7時 家を出て最寄駅まで行く


タクシーに乗ろうとしたが、一台も止まっていない


電話をして待つこと15分


「遅くなってすみません…!」


優しい運転手さんだったため、母も私も何も言えず…


朝8時 病院着


採血と採尿をし、いつもの台詞を言われる


「血管見えないね〜!!ちょっと人呼んでくるから待っててくれる?」


「あらあらまあまあ、痣が何個も出来てて…ごめんねえ」


私は血管が見えないらしい


現在腕には5回分の針の跡


他の人は1:1で済ませているのに、私は2:1の対応


申し訳なさを感じつつ、検査室から診察受付まで行く


診察は1時間後のため、母の肩を借り少し休む


呼ばれて入ると、医者に告げられた


「腎臓の腫れは良くなってるし、血液の結果も採尿の結果も良いんだよねえ…」


「痛いです。」


「原因がなあ…分からんなあ…」


CTを撮ることになり、放射線科に行く


迷路のようで、とても分かりにくい


いつもの検査スタイルにしておいて良かった、と心の底から思った


可愛い下着などは必要ない


必要なのは、金属のついていない楽な服なのだ


造影じゃないだけマシだと考えながら、息を吸ったり吐いたりを繰り返した


検査結果を医師と見た


「やっぱり綺麗だなあ…でも痛いんだもんね…痛み止め出しておくね」


診察を終え、会計も済ませ、薬局に向かった


すると、帰りのタクシーで1秒の差でメーターが上がった


母と私は目を合わせて笑った


心の中で「この運転手やりやがった」と…


しかし、文句を言うのは礼儀知らずである


遠回りしたこともメーター切るの遅くしたのも全部分かっていたが、母も私も黙っていた


母は降りた後、タクシーを離れ、私にだけ聞こえる声で「クソジジイやりやがったな」と言った


「それな」


しか出なかった


薬局に行くと、いつもの神対応薬剤師さんが居た


「どう〜??痛い〜??生理は??」


「痛いです…生理は来ました…」


「お母様、来てくださったんですねえ…よかったわ〜」


「いつも娘がお世話になって〜!」


ここはお見合いか??と思ったが、そんな元気もなかった


薬を受け取り、帰宅すると、母は地元に帰る準備をした


私も余力で手伝い、母は帰った


「ありがとう、お母さん」


「休みな」


母の愛は偉大である


原因不明の痛み、ほんまにクソ


家族の愛を知ることができた、と私は思った


しかし、愛では痛みを取り除けないのだと、同時に感じた


大好きなプリンを食べて、布団に入った


中学の時に片想いしていた先輩を思い出して、少し感傷的になってしまったのは、母には内緒だ


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