蛇の目をした王子様
無月弟(無月蒼)
プロローグ
夢を見ている時、ああ、これは夢なんだって気づくことってあるよね。
今がまさにそれ。たぶん十年くらい前の、幼い日の出来事を、夢で見ている。
当時幼稚園児だった私は、お母さんの膝の上に座りながら、絵本を読んでもらっていた。
絵本のタイトルは、『蟹の恩返し』。有名な昔話で、あらすじはこう。
ある村に住む蟹と仲良しだった娘さんが、ふとした事から恐ろしい蛇のお嫁さんにさせられてしまうの。
娘さんは倉の中で、お婿さんである蛇が来るのを待っていたけど、そしたら仲良しだったたくさんの蟹達がやって来たの。
蟹達は、娘さんを蛇のお嫁さんになんてさせるものかって、悪い大蛇をやっつけるために戦ってくれた。
そして娘さんが倉から出た時、そこにあったのは大きな蛇とたくさんの蟹達の亡骸。蟹達は、悪い蛇をやっつけてくれたのね。
その後娘さんは、助けてくれた蟹達を手厚く葬りました。
——めでたしめでたし。
お母さんがそう言って絵本を閉じたけど、話を聞いた私は、えんえんと泣き出した。
あんまり激しく泣くものだから、お母さんはビックリして、「蛇が出てくる話なんて聞かせたから、怖くて泣いちゃったのね」って言ってたっけ。
けど、本当に怖かったから泣いたのかなあ?
泣いたことは覚えているけど、どうして泣いたのかはもう覚えていない。
そうしているうちに、景色がだんだんとぼやけていって、夢は終わりを迎えた。
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