撫子小唄

888-878こと

第一部 「thyjhwxl thy」 白い白神

2000年 三弦木撫子さん 十七歳 春

一  三弦木撫子さん

 差し込む日差しもだいぶ高くなり、

もう、朝日と呼ぶには辺りをはばかられるような時間に、

白を基調としたマンションの一室で、

撫子なでしこさんは目を覚ます。


 今日の撫子さんの生活は時間に縛られない。

 部屋に何かを置くのが嫌いな撫子さんはすっきりとしすぎた部屋のベッドから起きあがると、

寝ぼけ眼をこすりながら、

カーテンを開く。

 遙か先には湾岸地区、その更に向こうには平らかを広げる東京湾。

 高層階の南東に向いた部屋に良く晴れた空の輝きが差し込む。


 フローリングの床を素足で歩き、広々とした部屋の反対側のCDラックから、


――今日は何となく洋楽かな――


と一枚のCDを選んですぐ横のコンポに納めスタートさせる。

 刹那的な同性愛の破綻を重苦しく奏でるその曲に満足しながら、

洗面所へと向かう。


――コーヒーは、インスタントで良いか――

――それとも――


そんなことを考えながら。

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