昔の子と子

天の座標

spoon小説チーム声劇部

〈声劇シナリオ第二弾〉

今回はずわいがにからのお題

☆事務所NG

☆義理の妹

☆再起動

を悩みに悩んで入れ込んだシナリオです



福岡市内に住んでいるとある家族のお話



リツ子50歳

・以前はバリバリのキャリアウーマン

・夫を早くに亡くし、敬太と杞紗(きさ)に同居を促され、家をリフォームし、次男の啓吾と

二世帯住宅に住んでいる


長男

敬太(けいた)28歳  嫁 杞紗(きさ)28歳

・実家から少し離れたマンション暮らし

・結婚2年目 職場結婚


啓吾(けいご)24歳 嫁 琴子(ことこ)22歳

・知り合って3ヶ月でデキ婚

・母リツ子と同居している




・・・・・・・・・・・・・

(杞紗ナレ)

義理の妹は、いわゆる授かり婚で、交際から結婚までの期間は3ヶ月でした。

義母と以前話したときは急な結婚にあまり納得がいっていないようで、度々愚痴を聞かされたものです。


リツ子「ふぅ。今日も沢山歩いたわね!ほんと久しぶりに外の空気吸った~!というか、最近杞紗さんからの誘いが少なくなって寂しいわ」


杞紗「気を遣ってるんですよぉ~。お義母さんも一人の時間が必要かなって」


リツ子「そうねぇ~。家では啓吾や琴子さんと毎日一緒だし。私も一人でゆっくり過ごしたいわぁ。でも、それとこれとは別!杞紗さんとのお買い物は楽しいし、運動にもなるわ♪だからこれからも気兼ねなく誘ってよね!」


杞紗「はい!お義母さんが元気なうちにたくさんいろんな所、行きましょうね♪」


リツ子「ねぇ~(笑)元気なのもあと十年ないかもよぉ~。温泉も行きたいし、久しぶりに宝塚も観たいわ!そうだ!次のデートは宝塚でどうかしら?」


(杞紗の心の声)…宝塚かぁ。お義母さんと行くとご贔屓様が舞台に上がるたびにあのポーズがどうとか、数年前の衣装や立ち位置がどうだとか…その後にご飯に行っても延々と歴史を語られるし…おっと顔に出ちゃうところだった。


杞紗「いいですね!でも、直近である博多座の講演って…花組でしたっけ?」


(杞紗ナレ)

義母のご贔屓様は花組にいらっしゃるのだ。


リツ子「いや、今回は月組の講演なのよね~。贔屓様がいらっしゃらないのは悲しいけど、劇場に行くだけで元気をもらえるから!ふふっ」


(杞紗の心の声) ちっ、今からでも2時間くらい語りそうな顔してやがる…どうにか切り抜けなくては…


杞紗「あ、そういえばもうそろそろ琴子ちゃん、産休に入る時期ですよね~。お出かけするのは良いとして、少しお家がバタつくんじゃないですか?」


義母「そうね~。家のリフォームもやっと落ち着いたところでようやくゆったりと過ごせるかと思ったけどぉ。また1~2ヶ月は慌ただしくなるわね~。」


杞紗「でもまぁ、若くしてママになれるなんて私からしたらうらやましい限りですよ。啓吾君も若くして覚悟を決めて本当に偉いと思いますけどね~。」


義母「あら?それはオババを引き取って偉いとも聞こえる言い回しねぇ?」


杞紗「いやいや!そんなこと思ってませんよ!何言ってるんですか!」


義母「まぁ、私達の時代では20歳で結婚出産当たり前だったからね。それを考えると年相応、と言ってやりたいけど…。」


(杞紗ナレ)

義母の顔が少し曇ったのを私は見逃さなかった。

あれは…半年前のまだ少し肌寒い時期だった…



〈啓吾と琴子の出会い〉

敬之(のりゆき)24歳 啓吾の高校の同級生



啓吾「ちょ、まだ飲むん!?俺もう帰りたいんやけど。」

敬之「なんでだよ~!まだまだ飲めるだろ~!社会人2年目の若造がそんなんでいいんか~?社会人としては俺が先輩やぞぉ。“先輩の言うことはー?ぜったーい!”」


啓吾「いやまじお前飲みすぎ。そろそろ終電だぞ。金曜日といえど、明日も予定あるんだろ、お前。」

敬之「明日は明日の風が吹くぅ~!」


啓吾「はぁ、、ダメだコイツ。俺の家に連れて帰るしかないな…」


(啓吾ナレ)

俺はベロベロに酔った敬之の腕を、肩に担いでとぼとぼと地下鉄へ向かった。


琴子「やめてよ!触んないで!!!」


黒服の男「おいおい、琴子まじで戻れって。謝れとは言わんけどその場に残った嬢の身も考えろって」


琴子「っざけんな!クソみたいな客の相手しかさせないくせに何が嬢よ!」


(啓吾心の声)うわ~…キャバクラあるある~。つか、道のど真ん中で恥ずかしくないんだろか。


敬之「おおっ!面白い場面ですね~!ほら!あのお姉さん助けるためにあの店行くぞ!」


啓吾「はぁ?お前そんなベロベロのくせにまだ飲むんかよ。俺は帰るか…


敬之「お姉さ~ん!僕たちが君のこと指名してあげるからお店戻ろうよ~!楽しく飲みましょ~!」


琴子「は?うざ。散れよ」


敬之「えっ…」


黒服の男「わ~~、すみません…この子ちょっと虫の居所が悪いので…(笑)あ、お兄さん、うちの店に来ていただけるのであればサービスしますよ!お二人様ですか?」


啓吾「あ、いやいや、僕は帰るので!コイツ一人で…

敬之「二名様ご来店で~す!お姉さん、機嫌直して~!」


琴子「んじゃ、シャンパンね」


敬之「気の強いお姉さんだいすきだよ~!」


琴子「ふんっ。そういうやつが後々“俺はこんだけしてやったのに”とか恩着せがましくなるのよ」


(啓吾心の声)…こんな強気なキャバ嬢、ぜってー売れね~(笑)


〈店のドアを開ける〉

黒服「琴子さんご指名で2名様ご来店です」


着物ママ「いらっしゃいませ。琴子ちゃん、事前にご予約があるとは聞いていなかったけれど?」


琴子「すみません、私が連絡いただいていたのを見落としてしまっていて…」


ママ「まぁ、とんだ失礼を!お客様、初めて…いらっしゃる方ですよね?

昔からのお知り合いか何かかしら?(微笑)

本日はご来店いただきありがとうございます。お時間の許すまでどうぞごゆっくりお過ごしくださいね」


琴子「こちらのお席にどうぞ。今すぐメニューを持ってきますね。少々お待ちください。」


(啓吾…さっきの威勢が噓みたいに縮こまってるじゃんこの子。結構縦社会には従順なのな)

琴子「ちょっと待ってて。すぐ着替えるから。」

啓吾「お、おう」


(啓吾ナレ)

店が終わる時間になってしまったのでそのまま帰ろうとしたが、琴子から「あと1~2杯付き合ってよ!」と言われ、しょうがなくアフターに行くことにした。もちろん先輩は潰れてしまったのでタクシーに乗せる。その先のことは…知るもんか。


啓吾「行きつけのbarとかあんの?」


琴子「えっとね、すぐ近くにあるよ。その先を右に曲がれば…ほら“事務所NG”ってお店」


啓吾「変わった名前だなぁ(笑)」


(啓吾ナレ)

事務所NGというへんてこりんな名前のbarで琴子の身の上話をした。


幼い頃に父と母が離婚していて、いまは父親と妹と3人で暮らしているが、妹とは腹違いで、

母親が違うし、その後妻とも離婚しているということ。その父親は3日に1回しか帰らないクズ野郎でパチンカスだということ。そんな家がイヤで早く自立をしたくて夜の仕事をしているということ。


啓吾「やっぱなんか夜で働いてるのって色々ワケあんだな。そんな感じはしてたけど。まぁ、あんま根詰めんなよ」


琴子「やっぱって何よ(笑)まぁ妹が、いま頑張ってるから、お姉ちゃんとしてできることってお金の工面しかないんだよね。凄いのよ!宝塚の花組!期待の新人なんだから!」


啓吾「おぉ、そりゃすげぇや。ってか、お金の工面って…琴子ちゃん、いま何歳?あ、これは失礼だったかな」


琴子「女性の年齢聞いちゃいけないんだ~。まぁ私はなんとも思わないからいいけどね。

今年で22歳だよ。まだ誕生日きてないから21だけど。周りから言われるのはさ、“今が一番楽しい時期じゃん”とか“夜、働いてるカネで遊び放題じゃん”とかばっか。私の何を知ってんだよって思っちゃう。」


啓吾「そっかぁ。俺なんて21の時とか飲んで騒いでたな~」


琴子「まぁ、そういうバカが多いよね」


啓吾「直球だな(笑)間違いではないけど(笑)」


琴子「あ~なんか酔っ払っちゃった。ねむい」


啓吾「そろそろ帰るか。おいおい、ここで寝るなよ!…って秒じゃん」


(啓吾ナレ)

Barで寝てしまった琴子を、近くのホテルに運んだ。家もわからないし、こうするしかなかった。まぁ、しっかりしてる子だし、置いて帰っても大丈夫だろう。


ホテルのベッドに運び、帰ろうとしたとき琴子の口から「いやだ。行かないで」と…

しかし琴子はベッドでピクリともしない。


啓吾「寝言か…?少し、横になるだけだ。何もしない。何もしない。」



(琴子ナレ)

あの人と出会ったのは私がまだ2歳の頃。母親という存在もよくわからないまま、あの人と出会った。そして翌年には妹も生まれていた。

妹も生まれた…なのに…すぐに去っていった。この男のもとに幼い女児を2人も置いて。あいつを恨んでる。勝手に人ん家に土足で入って来て荒らして帰っていったあいつを。


…横で寝ている男の母親リツ子を。子どもに罪はない、大人の事情で幼少期に寂しい思いをしてきた私達姉妹を見捨てたあの女を。

あの女の家族を恨んでいる。


(携帯の充電器を手に取り、充電コードを挿す)

琴子「再起動した携帯ってなんか新たな歴史が始まりそうでわくわくするわ。ついにここまで来たわね。

よし、さっき盗み見ていたパスワードを入力っと…。あいつのLINE、連絡先、コピー完了。ふふふ。楽しくなってきた。私の人生、これからよ。」


〈兄弟で話し合うシーン〉


敬太「啓吾、お前な…」


啓吾「ことの順序を間違えてるのは自分でも重々解ってる。でも、1回の事とは言え、俺はちゃんと責任とりたいんだ。」


敬太「いやいや、相手の子、まだ21歳だろ。親御さんには会ったのか?」


敬太「んにゃ…琴子は片親で、その父親もたまにしか帰ってこないからタイミングを見て会いに行こうと思うよ」


敬太「はぁ(大きなため息)…あのなぁ。母さんには何て言ったんだ?」


啓吾「まだ話してない。」


敬太「だろうな。どう話すつもりなんだ?夜の店の子とやっちゃって、子どもできちゃいました~ってか?」


啓吾「おい、夜の店の子なんて関係ないだろ。」


敬太「ありあり、大アリ。お前、知らないの?母さんの過去」


啓吾「え…?何?」


敬太「30歳でオヤジ死んで、俺たちが小さかったからって無理して仕事掛け持ちしてたんだぞ。昼職と夜の店のバイト。そこで知り合ったやつとの間に子どもができたけど、結局、結婚詐欺まがいのことされて…俺たちの妹が本当はいたんだよ。」


啓吾「は…?え…?いやいや、冗談きつすぎ」


敬太「俺もこの話聞いたとき、冗談と思ったんだけどさ。写真が出てきたんだよ。俺らの妹、とその腹違いの子を抱いてる母さんの写真がさ。ほら、これ。この右の赤ちゃんが俺らの妹。」


(敬太はおもむろにスマホの画面を見せる)


啓吾「…え?左の子、琴子に似てるけど…他人の空似だよな…ははは…」





ほんと長くなり、しかも小説っぽくなっちゃってすみません……


こんな作品を読んでくれる人いるのかな…ってネガティブになってます。


声劇部の皆様!

今回も制作お疲れ様でした!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

昔の子と子 天の座標 @ten_za

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る