第29話 漆黒の飛刃


 ダークドラゴンはバラバラになっていた。

 しかし、その肉と肉との切断面をウニョーーンと伸ばしてくっ付けようとする。



「マワルさん。これって!?」


「再生能力だよ。こいつは死なないんだ」


「え!? じゃあどうやって完全に倒すんですか!?」


「ああ。その完全な倒し方だけどさ」



 そう言って片手を上げる。

 頭上にはブーメランが旋回した。



凄威回転斬マイトスラッシュ!!」



『ギャァアアアアアアッ!!』



 俺は再びダークドラゴンを斬った。

 アイアの魔法で体力が回復しているので何回か 凄威回転斬マイトスラッシュを打つことが可能だ。



「こうやって復活しそうになったら動けなくするしかないんだよな」


「そ、それじゃあ。マワルさんはここから離れられないじゃないですか」


「うん。だから、アイアに封印する方法を探してきてもらいたいんだ」


「な、なるほど。わかりました!」


「俺がこいつと戦ってるのは国王が知ってるからさ。連携して封印する方法を探してきてよ」


「こ、国王ですか? マワルさん凄いですね」


 アイアに説明しようとしたその時。

 ダークドラゴンの再生が始まった。


 むむ! 性懲りも無くまたやってんなぁ。


凄威回転斬マイトスラッシュ


『ぎゃぁああああああああああああああああああ!!』


 アイアに一連の流れを説明し終わると、再び再生が見えた。

 やれやれ、何回もやるしかないか。


凄威マイト──」



『悪かったぁああああああああああああああああああ! 許してくれぇええええええええええええ!!』



 それはダークドラゴンの懇願する泣き声だった。



『我は不死ではあるが痛みを感じない訳ではないのだぁあああああ!! そんなに何回も絶命させられてはトラウマになるぅうううう!!』


「いや……。んなこと言われてもなぁ。お前が再生したらまた王都をぶっ壊すんだろ?」


『もうそんなことはしない! 約束する! だから許してくれぇええ!!』


 うーーん。


「信用がなぁ……」


『わ、わかった! 従獣になる!! 我を血の契約でそなたの従獣にしてくれ!! それなら否応なしだ!!』



 確かに。従獣なら俺の中に封印しているようなもんか。

 でもいいのかな? こんなこと勝手に判断して。


「あは! 凄いですよマワルさん!! 血の契約はモンスターと主人の相互の意思疎通がなければできないんですよ」


「うーーん。でもなぁ……。俺、こいつを許さないって宣言しちゃったしなぁ」


 そう言ってブーメランを構える。


『ひぃいいいいいいいいいいいいいいいい!! すまなかったぁあああ!! 許してくれぇえええ!!』


「本当に、反省してるか?」


『してる! いや、してます!!』


「俺の言うこと、ちゃんと聞くか?」


『聞く聞く! 聞きます!!』


 やれやれ。この判断がどんな結末になるかわからないけど。


「仕方ない……許してやるよ」


『ほっ……』


 俺は指先を切って血を出し、それを使ってダークドラゴンの額に印を書いた。

 奴と俺の周囲を光り輝く魔法陣が包み込む。

 大地から吹き上がる風。アイアは捲れ上がるスカートを抑えた。

 

 風が止み、光が治まると、ダークドラゴンの額に描かれた印は深々と定着した。


「よし。これでお前は俺の従獣だ」


主人マスターには我の力と、叡智を授けよう』


 ダークドラゴンは黒い霧状に変化した。


「え、おい! どうするつもりだよ?」


『我の巨体をそのまま移動させることは 主人マスターに迷惑がかかるだろう。良ければ、その守護武器に宿してもらえないだろうか?』


 このブーメランに?


「ヴァンスレイブ。アイツを宿してもいいか?」


『うむ。我は構わぬ』


「よし! んじゃあ、いいぞ!」


『ありがとう。感謝する』


 漆黒の霧がブーメランに吸い込まれる。

 するとオニキスの様に真っ黒く光り輝くブーメランへと変化した。


「へぇ……。なんかカッコイイかも」


『主! 我の魔力量が膨大になったぞ!!』


「おお。パワーアップだな」



 俺が喜んでいると女王が部下を連れて広場に現れた。



「マワル! 加勢に来たぞ!!」


「え? ああ……。ありがとうございます」


「それで……。どこだダークドラゴンは!?」


 ……これは言うべきだろうな。

 女王はドラゴンが不死なのを知っているんだ。

 聖典が無くなった今、俺と血の契約をしてブーメランに宿らせたことは伝えるべきだろう。


 俺は一連の流れを説明した。



「──ってことなんです」



 女王をはじめ、周囲の兵士達は騒ついた。



「で、では……。マワルはあのダークドラゴンを、そ、そのブーメランに……。や、宿らせたのか??」


 

 安直な判断だったか?

 なにせダークドラゴンは国を滅ぼしかけた凶悪なモンスターだからな。

 やはり、女王に相談して封印する方法を模索するのが正解だったかもしれない。

 これは、もしかしたら厳罰処分かもしれんな。

 


「す、凄い……」


「は?」


 

 女王は俺の両手をガシッと掴んだ。






「凄いぞマワル!! そなたは英雄だ!!」





 え? いや、でも封印はできなかったんだけど……。



「あのブーメラン使い凄いぞ!! ダークドラゴンを従獣にしたんだ!!」

「す、凄すぎる……」

「剣聖ブレイズニュートでさえもできなかった偉業をやり遂げた!!」

「王都は救われた!! マワル殿が救ってくださったのだ!!」



 あ……いや。

 

「で、でも俺。大口を叩いたわりにはダークドラゴンを消滅させれなかったし……」


「そんなこと気にするな。不死のドラゴンを倒す方法は無いのだ」


「封印できなかったんだけど……これっていいんですかね?」


「なんの心配だ! カイジョルの聖典が無い今、封印方法を探すとなると1年以上はかかったかも知れぬぞ。そなたが血の契約を結んでくれたおかげで、何もかもが上手くいったのだ!」


「ははは……。んじゃ、まぁ、結果オーライか」


「オーライどころじゃない!! そなたに王都は救われた! いや、大陸全土を救ったと言っても過言ではない!! 偉業だ!!」


 い、偉業!?


「いや、そんな……。ははは、大袈裟な」



 俺の戸惑いをよそに兵士達は集まって俺を胴上げし始めた。



「王都の英雄マワル・ヤイバーン。万ざぁーーーーーーい!!」

「ありがとう! 王都を救ってくれて!!」

「あなたは命の恩人です!!」

「こんな現場に居合わせたことを誇りに思います!!」

「バンザーーイ! バンザーーイ!!」



 え? あ、ちょ、ちょっと!!



「いや、あの……。お、俺だけじゃないんだ! ア、アイアもがんばってくれたんだって!!」


 彼女を見やると満面の笑みで胴上げに参加していた。


「あは! マワルさんバンザーーーーイ!!」


 やれやれ、参ったな……。


 みんなの声は王都に響いた。





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現在の状況【読み飛ばしてもストーリーに影響はありません】




名前:マワル・ヤイバーン。


冒険者等級:E級。


守護武器:漆黒の飛刃。NEW


武器名:ヴァンスレイブ。


レベル:11。


取得スキル:

戻るリターン

双刃ダブルブーメラン

回転遅延スピンスロウ

絶対命中ストライクヒット

回転防御スピンディフェンス

回転飛行ブーメランサルト

飛刃の大群ブーメランホード

凄威回転斬マイトスラッシュ。 

????? 


アイテム:薬草。図鑑。


昇級テスト必須アイテム:

白い角。黒い牙。緑の甲羅。



所持金:6万1千エーン。



仲間:

僧侶アイア・ボールガルド。

オバケ袋のブクブク。

ダークドラゴン。NEW

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