第一章 アルバルト建国編
01 異世界転生したら捨てられました
おお! おお! おおお! 俺は異世界に転生したのか!
そのことに気づいたのは俺、アデル・ダチア・クロヴァーレがこの世に生を受けてすぐのことだった。
一番最初に目に入ったのは親の顔でも知らない天井でもなくこれだった。
【名 前】(アデル・ダチア・クロヴァーレ)
【種 族】ヒト
【性 別】オス
【年 齢】0歳
【職 業】???
【レベル】99
【体 力】2100/2100
【魔 力】2700/2700
【攻撃力】500
【防御力】500
【知 力】1300
【精神力】1200
【俊敏性】500
【器用さ】1000
【幸 運】500
《スキル》
『応急処置』『リカバリー』『サーチ』『覚醒』
《魔法》
『プチマジックアロー』『プチマジックウォール』『プチマジックウェーブ』『プチマジックミサイル』『マジックアロー』『マジックウォール』『マジックウェーブ』『マジックミサイル』『ファイアーアロー』『アイスウォール』『ウィンドカッター』『トランス』『シャドウランス』『シャドウレイン』『シャドウレーザー』『デス』
《祝福》
『女神イリスの加護SSS』『女神ビエラの加護SSS』
《呪詛》
『女神たちの嫉妬』
黒白グレーのぼやける視界の中に、ドンとこのステータスだけが無機的に表示されていた。
これ、俺のステータスだよな? まるでゲームみたいだが、流石に0歳でこのステータスはないだろ。なんでレベル99なんだ? 色々とおかしい。この世界のステータスの基準とか知らないけど、明らかに異常なのは分かる。
俺が一人愚痴っていると、頭に声が響いた。
『あれ? おかしいな。ステータスの移行失敗しちゃったのかな』
『本当ね。どうしましょう』
二人の女性の声はどこか聞き覚えのある声だった。声が届くかも分からないのに、俺は無意識に脳内で彼女たちに話しかける。
「あの、あなた方は誰ですか?」
『ふふふ。誰でしょう』
声は届くようだ。質問をはぐらかされたので、俺はためしに言う。
「んー。天使とか?」
『ううん、違うよ』
「じゃあ……神様とか?」
『そう! 正解!』
まじかよ。どうやら二人は神様らしい。俺は恐らくこの二人の神様に転生させられたのだろう。そんなラノベによくある話とは思うが、リアルで起きているのだから受け入れるしかない。
「へぇ。ということはここは異世界なんですか?」
『うーん。イリスちゃん、この世界って異世界なのかな?』
『わからないわよ。そもそもここ以外の世界って一つしか知らないし……』
俺が質問すると何やら神様方はグダっている。だが、今の会話でクールなキレのある声の主の名前はイリスと言うことが分かった。
「あの、イリス様? 俺はどうやって死んだんですか?」
俺がそう質問すると、何故かしばらくの間をおいてから、くすくすふふふと笑い声が聞こえてきた。しばらくしてその笑いが収まると女神イリス(暫定)が笑いをこらえながらの口調で応えた。
『あなたに様付けで呼ばれるなんて……。えっと、何だったかしら?』
聞いてなかったのかよこの駄女神が、と俺は心のなかでツッコミを入れるも、そもそも俺は赤ん坊で喋れないし、心の中で会話してるのだから思念が女神イリスに伝わってしまうことになる。そのことに気づいた時にはもう時すでに遅し。
『だめがみってなによ? けど、絶対にバカにされてる気がするわ。ネイビス。あなたに与えた加護、失くすわよ?』
『だめだよイリスちゃん。ほら、質問に答えようよ』
ネイビス?
俺の名前はアデル・ダチア・クロヴァーレって書いてあるけど。少し引っかかったが、もう一人の女神の癒やし属性に感慨深くなる。おお、あなたはなんて女神なんだ!
『悪かったわね、女神じゃなくて』
やべ、伝わるんだった。イリスの方がお怒りの様子……。話題を転換しなければ。
「で、俺はどうやって死んだんですか? 答えてください」
『難しいね。普通の死に方じゃないし……』
『あー。強いて言うなら自ら選んでかな?』
『うん。私もそうだと思う』
てことは自殺か。そうか……。生前の記憶は不確かだけど、俺は相当追い込まれてたんだな。
『まぁ前世のことは気にしなくていいわ。あなたは今世をめいいっぱいに楽しめばいいのよ』
『そうだよ! 私達からの寵愛もあるし、きっといい人生になるよ』
そうだよな。俺はまだ赤子。人生は始まったばかりだ。憂いてどうするよ。
「二人とも、ありがとう。一つ質問なんだけど、どうしてステータスがこんなにチートなんだ?」
『ちーと?』
『そうそう。普通レベル1とかから始まるだろう?』
『それなら大丈夫だよ。この世界はレベル上限ないから!』
そういう問題じゃないんだよな……。だが、レベル上限がないのは嬉しい。いきなりカンストで始まるのは味気ないしな。これからレベル上げしまくってやるぞ。
『まぁ、赤ちゃんだからしばらくは不自由かもだけど、頑張ってね』
『そうね。応援しているわ。ばいばい』
いや、まだ話はあるんだが……。そこで女神たちとの会話は途切れた。いくら脳内で声をかけても反応がなかった。
俺はどうやら貴族の家に生まれたらしい。父と母の姿はまだ良く見えないけど、クロヴァーレ公爵家という単語が聞こえた。聞こえる声から察すると、両親や家臣たちは跡取りの息子が生まれて大喜びしているみたいだった。
「この子は呪われている。悪魔の子じゃ」
あれ? 今なんか不穏な言葉が聞こえたな。
「ど、どうして……」
「主神ネイビスの加護がない。私も生まれてはじめてのことじゃ。前例などない。もしかしたら邪神か偽神、悪魔の類なのかもしれない。まだ愛着のないうちに殺すことを助言しますぞ」
「愛着はあるわよ! あなた。こんな占い師の言葉なんて……」
「いや……。アンナ。諦めよう」
ちょっとまて。不穏も不穏な展開だぞ? せっかく生まれたのに死ぬなんて嫌だ。だから俺は体をめいっぱい動かそうとするが、却って疲れて眠気が押し寄せる。
やばい。これ、絶対にやばめの森に捨てられるやつだ……。だが、俺の意識は遠退いていった。そして、目覚める頃にはもう、俺は一人森の中に捨てられていたのだった。
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