71 カンスト

 Cランクダンジョン『トカゲの巣窟』にネイビスが訪れてから3ヶ月が経った。


「よぉぉぉーし!カンスト!」


 ネイビスはついに上級職レベル99までたどり着いた。


 名前:ネイビス

 年齢:17

 性別:男

 職業:愚者Lv99(経験値二倍)

 HP:2100/2100

 MP:2775/2700+75

 STR:500

 VIT:500

 INT:1300+25

 RES:1200

 AGI:500

 DEX:1000

 LUK:500

 スキル:『応急処置』『リカバリー』『サーチ』『ノービスの本気』『プチマジックアロー』『プチマジックウォール』『プチマジックウェーブ』『プチマジックミサイル』『マジックアロー』『マジックウォール』『マジックウェーブ』『マジックミサイル』『ファイアーアロー』『アイスウォール』『ウィンドカッター』『トランス』『シャドウランス』『シャドウレイン』『シャドウレーザー』『デス』『プチメテオ』

 アクセサリー:『朱雀の指輪』『ミスリルバングル』


 ネイビスは中級職を魔導士、朱魔導士、蒼魔導士、翠魔導士の中から魔導士を選んだ。これには訳があり、色を指定すると、その上級職しか選べなくなり、隠しジョブである愚者になれないからだった。


 愚者の条件、それはノービスから成り上がったということだとされている。


「そう言えば、『デス』使ってなかったっけ」


 ネイビスは殺されたときのことを思い出して身震いした。ネイビスは想起する。ルナは確かに『デス』をネイビスに対して行使した。ルナとレナ。二人には他の七大聖騎士とは一線を画す何かがあった。ネイビスは転生と何か関係があるのではないかと考えていた。


「とりあえず報告しに行きますか」 


 ネイビスは王都まで、アリエルとツァーネに会いに行くことにしたが、道中、飛空艇の乗り継ぎで寄ることになったダンジョン都市イカルにて寄り道することにした。


「元気にやってるかな」


 ネイビスはルートが上手くやってるか見に来たのだ。掲示板によると『ドラゴンの巣』の第五階層まで到達したとか。ネイビスは『ドラゴンの巣』に一番近い宿の食堂にて夕飯を食べることにした。案の定、勇者パーティー『絶対零度』がやってきた。


 ネイビスは呑気に酒を飲むルートとその横にいるルナとレナをしばらく見つめた。ルナとレナの物憂げな顔を見て、ネイビスはネイビス達が『ドラゴンの巣』に挑む前のやり取りを思い出した。


「魔王レオか……」


 酔っ払ったルートが騒ぐのを見て一安心すると、ネイビスは徐に席を立った。だが、ルートはネイビスのことを知らないので気づくことはなかった。そのことがネイビスにはどこか寂しくもあった。


「じゃあね、ルートさん」


 ネイビスは翌朝ダンジョン都市イカルを去って王都に向かうことにした。だが、昨晩のルナとレナの物憂げな顔が脳裏にチラついたネイビスは一つ、果たすべきことを思い出した。


「協力するって約束したからな」


 ネイビスはある部屋の前に立った。ネイビスは冷や汗をかいていた。これから対面するのは自分とイリス、そしてビエラを一度は殺した相手だ。だが、この世界ではルナもレナもまだネイビス達のことを殺していないのも事実。ネイビスはあのときのことを忘れて、勇気を出してノックした。


「こんな朝から誰?」


 出てきたのは銀髪が美しい妙齢の女性だった。恐らくレナである。


「俺はネイビス。転生者です」

「転生者……。場所を変えましょう。ちょっと待ってて」


 レナはルナを起こしてきて、上着をまとった。


「外で話しましょう」

「いいですよ」


 ネイビス達は以前のように朝の町を歩きながら話す。


「その感じだと、私達のことも知ってる?」

「二人も転生者ですよね」

「どこで知ったのかしら。大方予想はつくけど」

「あなた、アリエル様とはどういう関係なの?」

「逆にこっちが聞きたいですね」


 ネイビスがルナの質問にそう返すとルナはふてくされた顔をして続ける。


「まぁいいわ。それより要件は何かしら?」

「レオに会いたくはないですか?」

「「え!?」」


 ネイビスがその名を口に出した途端二人は口を丸く開けて驚いた。


「どうしてあなたがその名前を知っているのよ」

「そんなことより、レオに会いたいのですか?会いたくないのですか?どっちですか?」

「それは……会えるなら会いたいわ」

「レオはどこにいるの?」

「ランダム教の本殿、聖ランダム神殿。その地下にある水門の先にレオがいるって話です」


 そこまで聞くとルナとレナは二人で話し合う。しばらくしてから二人は決意に満ちた表情で告げる。


「分かったわ。あなたのことを信じてみることにするわ」

「私も信じてあげる」

「そりゃどうも」


 ネイビスはルナとレナと握手を交わした。






「早かったねぇ、ネイビスくん」

「転職もレベル上げも済ませましたよ」


 アリエルとネイビスは前回と同様に王城の一室で話し合っていた。アリエルが不敵な笑みを浮かべて訊く。


「イリスちゃんとビエラちゃんは?」

「どうせ知ってますよね?」

「うん。まぁね」


 ネイビスはじゃあ訊くなよと内心思ったが言わないでおいた。


「で、その二人の代わりが彼女達ね」

「お久しぶりです。アリエル様」

「大預言者アリエル様。お久しぶりです」


 ネイビスの隣に座るルナとレナがアリエルに丁重な挨拶をする。


「こちらこそ。それで、三人でパーティーを組むのかい?」

「そのつもりです」


 ネイビスがそう答えるとアリエルは「ふふふ」といきなり笑い始めた。


「いや、いいよ。こんなのはボク初めてだよ。ふふふ」


 アリエルは何故かとても嬉しそうにしていた。興奮しているようにも見えた。アリエルのその様子を見てネイビスもルナもレナも、少しばかり引いた。ひとしきり笑い終えるとアリエルは話し始める。


「じゃあ今から指示を出すね。魔王レオのいる虚空の間。そこに繋がるフィガロの水門を潜るには条件があるんだ」

「条件?」

「そう。条件。その条件はずばり、Sランクダンジョン『ベヒーモスの谷』をクリアすることです」

「Sランクダンジョン?」

「どこにあるのですか?」


 ネイビスとレナがすかさず質問した。するとアリエルはまた不敵に微笑んで下を指差して告げた。


「ここの地下だよ」




※一部の人称が統一されていなかったので修正しました。また、ルナとレナを仲間にすることについての理由を明確にするために一部加筆修正しました。

2022/7/15

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