60 ドラゴンの巣 その2
「あっけなかったわね」
「そうだな。これなら『ノービスの本気』使わなくてもよかったな」
「お疲れ様、二人ともすごい!」
ネイビスとイリスは余裕の表情で一分足らずの間に白竜を倒した。スキルでステータスの向上したネイビスの遠距離魔法スキルに、同じくスキルでステータスの向上したイリスの剣撃スキルの連打が加わり、白竜はあっけなく息絶えた。ビエラが戦闘を終えた二人のもとまで駆けつけ、二人を労う。
「ありがとう。ビエラの『リジェネ』も良かったわよ」
「ああ。あれは体が温まっていい」
「それはよかった!」
ビエラは満面の笑みで頷く。
「じゃあ、先に進むか」
ネイビスがそう言うと、いつものように回収担当のイリスが白竜の死体をインベントリにしまってから、三人は再び深い霧の中を歩き始めた。
第一階層は三人にとって問題にはならなかった。第一階層は白竜が単体で出てくるのみで、なんら苦戦することはない。ネイビスとイリスはノーダメージで第一階層をクリアした。
第二階層へと続くゲートを前にして三人は小休憩をすることにした。
「とりあえず、第一階層突破だな」
ネイビスは平らな地面を探して、その上に腰を下ろしながら言う。イリスとビエラもそれに習って、ネイビスの近くに座った。
「二人ともお疲れ様。『プチヒール』」
ビエラはネイビスとイリスに『プチヒール』をかける。
「ありがとう。ビエラの回復魔法は助かるわ」
「俺からもありがとう」
「これくらいしか役に立てないから」
二人に褒められたビエラは恥じらうように頬を掻きながら二人の感謝に応えて、謙遜する。
「そんなことはないぞ、ビエラ。いざというときに回復してくれる仲間がいるってことは、戦う上でこの上なく重要なことだ」
「その通りよ。ビエラのおかげで安心して戦えるわ」
「そ、そうなんだ……。それはよかったよ」
微笑むビエラにつられてイリスとネイビスも表情が緩む。
「それにしても、これなら攻略するの、結構簡単なんじゃないかしら」
イリスが自信ありげに言うと、ネイビスは首を傾げた。
「うーん。恐らくこれまでの経験上、第二階層は白竜二体で出てくるはずだ。第一階層みたいに上手くいくとは限らないぞ」
「それもそうね……。二体ってことはネイビスと私で一体ずつ分担するの?」
「いや、それは危険だ。それに非効率だな。先手必勝で片方を先に倒すのが得策だな」
「ふーん。ねぇ、ネイビス。あれ使えば?」
「あれ?」
ネイビスがイリスに聞き返すとイリスは胸を張って答えた。
「『プチメテオ』よ。それで一発じゃないかしら。ストームタイガーだっけ?あれも一発で倒したわけだし」
「それはありだな。試してみるか」
ネイビスはイリスの提案を受け入れ、なんとなく第一階層での戦闘では封印していた『プチメテオ』を次の戦闘から使うことに決めた。それからしばらく休んで、三人は次の階層に繋がるゲートを潜る。
「相変わらず、霧と崖でぱっとしない風景ね。『ウサギパラダイス』が懐かしいわ」
景色は第一階層と変わらず、ただ両側を岩でできた崖で囲まれた一本道を三人は歩く。
「お、見えてきた。やっぱり二体いるな」
「ええ、そうみたいね」
少し離れた霧の中から二体の白竜が現れた。だが、まだその二体の白竜はネイビス達に気づいていないようだ。ビエラがネイビスのもとまで寄って尋ねる。
「ネイビスくん。私、リジェネかける?」
「いや、なくていいだろう」
「分かった。二人とも、頑張ってね」
ネイビスが首を振って答えると、ビエラは頷き、イリスとネイビスを応援した。
「ありがとう、ビエラ。じゃあ私から行こうかしら」
イリスはビエラに向かって応援に対する感謝を告げると、雷鳴剣をインベントリから取り出して、白竜へと駆けようとした。それをネイビスがイリスの肩を掴むことで止めた。
「おい、イリス。さっきの話忘れたのか?」
「何よ。今からってときに」
「『プチメテオ』だよ。『プチメテオ』!提案したのはイリスだろう?」
ネイビスの言葉を聞いてから、イリスはしばらく口を開けたままぽかんとした。その後、イリスははっとして先のネイビスとのやり取りを思い出した。
「あ、完全に忘れてたわ。ごめんなさい」
「いや、別にいいけどさ。じゃあ、早速やるか。二人とも、今から『プチメテオ』使うからな」
「「はーい」」
ビエラとイリスはネイビスの後方に下がり、ネイビスの『プチメテオ』に備える。
「行くぞー!『プチメテオ』!」
三人は固唾を呑んだ。ネイビスが『プチメテオ』を唱えると、約半径二メートル程の火球が一匹の白竜の頭上に現れ、ゆっくりと落下した。プチメテオは白竜の背中に被弾し、そこを中心にして衝撃波と熱波、爆風が辺を襲う。被弾した白竜は断末魔を上げて息絶えた。
「久しぶりに使ったが、やっぱりやべーなこれ」
「そうだね……」
ネイビスの呟きにビエラが同意した。
「これなら、ネイビスが魔王って言われてもしっくりくるわね」
「それは言いすぎだぞ、イリス」
「そう?それより二人とも、来るわよ」
イリスはそう言って前方を指差す。残った一匹の白竜がネイビス達に気づき、突進を始めていたのだ。イリスは雷鳴剣を構えて、迎撃態勢を取る。
ネイビス達が第二階層をクリアしたのはそれから約一時間後のことだった。
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