転生少女のアビス堕ち
Renard
第1話 離島に暮らす少女ソフィア、旅立つ
14年前の嵐の日だった。
「うわっ…今回はいつにも増して酷い嵐だなぁ‥。うぅ…夏なのにちょっと寒いな。」
夏の中旬、大体この時期には嵐が最低でも一回は来る。
昔は作物にも甚大な影響が出ていたらしいが、今となっては嵐が起きたときのための対策が万全だ。
…何処からか、赤子の声が聞こえてきた気がした。
普通に考えて、このような天気の日に外から赤子の声が聞こえてくるなんておかしい。
気のせいかもしれない…それでも赤子の声が聞こえる方向まで、アニーは行って見なければいけないと思った。
アニーは上着を羽織ると、黙々と本を読んでいる自身の一人娘、アデーレにひと声かける。
「アデーレ!お母さんはちょっと外に行ってくるから、家でいい子に待っていてね。」
「はーい。」
勢いよく外に飛び出し、海までの道のりを大急ぎで走り抜ける。
後もう少しでいつもの浜辺…といったとき。
オギャーオギャー!
本当に赤子の声が聞こえる!
小さく弱々しい声は浜辺に近づくにつれてどんどんと大きくなっていく。
海辺に赤子?そんなばかな…なんて思いながらも、実際に声が聞こえてくるのだ、見過ごすわけにはいかない。
キョロキョロと辺りを見回して、赤子の居場所を探す。
…いた!
今にも波にさらわれそうな場所に不自然においてある、お包みを見つけたアニーは、それはもう大急ぎでそのお包みに駆け寄った。
オギャーオギャー!
まだ赤子だ、きっと体温の調節もできなくて寒かっただろうに…元気に泣いている。
「どうして海に…まるで流れ着いたみたい。」
この日、アニーは1人の赤子を拾った。
元気に健やかに育ってほしいという願いを込めて、ソフィアという名前をつけた。
ーーーーーー
ーーーーーー
ーーーーーー
「んぁ…?」
暖かな日差しがソフィアの顔を優しく撫でる様な感覚と共に目覚める。
「ソフィア?ソフィアー!早く起きてらっしゃい!」
「すごい変な夢だったな…ふぁ〜。」
あくびをしながら勢い良くベッドから飛び起きて、モソモソとめんどくさそうに着替え始める。
思いっきり飛び起きたから眠くはないけど…もうちょっと寝てたいかも…。
「早く起きなきゃシーカー試験に出れなくなるわよ!」
「そうだった!」
今日はシーカー試験だった!は、早く着替えなきゃ…!遅れちゃう!
お気に入りのダボッとしたパーカーにジーンズを履いて、ドタバタと音を響かせながら一階へと降りていく。
「おはようお母さん!」
「はいはいおはよう。荷物準備しといたからね。」
「ありがとう!」
「あぁちょっと!ほら、こっち向いて。」
起きたばかりでボサボサの髪に櫛くしを通していく。
いつもと同じ、優しいお母さんの手だ。…しばらく、会えなくなると思うとちょっと寂しいな‥。
「…ねぇ、本当にシーカー試験を受けにいくの?」
「うん!」
「シーカーは命がいくらあっても足りないくらい危険なのよ?それにあなたのお姉ちゃんは‥。」
「私…お姉ちゃんに会いたいの。」
これだけは絶対に譲れなかった。
シーカーになった姉がいた。…その彼女は行方不明になっていた。
珍しい動物を探す事も、人々を助ける事も、シーカーになればなんだってできる。
私はシーカーになって世界中の人々を助けたい、そんな思いもあるし…もう一度お姉ちゃんに‥。
「…仕方ないわね。ソフィアは一度こうと決めたら変えない頑固者ですもの。」
「そんな事ないもん!」
「ふふふ…行ってらっしゃい。体には気をつけてね。」
「うん!行ってきます!」
お母さんの用意してくれたリュックを背負い。お気に入りのブーツを履いて…外に出た。
眩しい光と共に海特有の塩の香りがここまで届いてきた。
ここは北の果てにある北東の島。昔も今も名もなき小さな小さな孤島。
定期船は1日に3回。人口も少ない孤島にしては結構来る方だ。
「やばいやばい…早くしないと乗り遅れちゃう!」
シーカー試験会場まで送ってくれる船に駆け込み、甲板から故郷を見下ろした。
本当に私…シーカー試験を受けにいくんだ…なんだか不思議な気持ち。
今まで一度だってこの北東の島から出たことがなかったから、外の世界がどんななのかも知らないし…正直、ちょっと不安になってきた。
地上からこっちを不安そうな目で見てくるソフィアの母親アニー。
今まで自由奔放に暮らしていた娘が突然、自分の元を離れてしまうが寂しいし、その娘がいつ死ぬかもわからない様な事をするのかと思うと気がきでならない。
ブー!!
汽笛が辺りに鳴り響いた。もう、この島を立つ時がきた。
「行ってきまーす!帰ってくる時はお土産持ってくるからねー!」
どんどん島が遠くなってく。それでもソフィアは力一杯叫んだ。
少しでも母親に自分の声が届く様に、自分は大丈夫だよと伝えたくて精一杯声を出していた。
「…そろそろやめたほうがいい。喉が枯れてしまうよ。」
「もしかして…うるさかった?だとしたらごめんなさい。」
突然、後ろから控えめな声でソフィアに話かけてきた人がいた。
襟首まで伸ばされた綺麗なプラチナブロンドの髪、目は青色で肌は白く、身長は160cm代くらいでスラッとした体型。黒色のローブで全身を覆い、季節外れにも赤いマフラーを巻いているのが印象的だ。
プラチナブロンドの髪なんてなかなかお目にかかれない色だろうなぁ〜。
かく言うソフィアはピンク色の髪にピンクの瞳…意外と人のことを言えないような派手な見た目で、目の前の人と同じ様に肩より少し下くらいで髪は切り揃えている。
「いや、あまり声を張り過ぎると喉が潰れてしまうかと思ってね。ちょっと心配だったんだ。」
「ありがとう!お姉さんの名前は?」
美麗な容姿の人に元気よく話しかける。
この船はシーカー試験行きの船だ。あわよくばシーカー試験の時に話せるお友達になってくれたらな〜っと、ちょっと打算的な事を考えながら話しかけた。
「お姉さんじゃなくてお兄さんなんだけど…まぁいいか。」
「ごめんなさい…とっても綺麗だったから間違えちゃった。」
「大丈夫だよ。…私はイリス。お嬢さんの名前は?」
「私はソフィア!」
ソフィアは花の様に可愛らしい笑顔を浮かべる。
島にいた時は同い年の子供なんかいなかったし、そもそも若い人は大陸の方に行ってたしなぁ…。
島にいた頃の周りの人たちは優しく、ソフィアとソフィアの母アニーにとても良くしてくれていたが…如何せん年寄りが多いのだ。
まあそもそも不便な孤島に好き好んで住みたがる若者なんてあまりいないだろう。
んーでもなんでお母さんはあの島にずっと住んでるんだろう?お母さん以外に若い大人の人って見た事ないんだよなー。
「この船に乗ってるって事は、ソフィアもシーカー試験に?」
「うん!実は私のお姉ちゃんがシーカーでね、私もお姉ちゃんみたいにたくさんの人を救えたらなーって思って!」
「そうか…ソフィアは優しい子だね。それに比べて‥。」
「…イリス?どうしたの?暗い顔して。」
「い、いや!なんでもないんだ…ちょっと昔の事を思い出してね。」
酷く思い詰めた様な、暗く寂しそうな顔をしているイリスが心配でソフィアはなるべく思い詰めない様にと明るい声で話しかけた。
ソフィアの声を聞くや否や、ハッと目を覚ましたかの様に元の優しい顔付きに戻り、本当になんでもない様な陽気な声を出す。
自分を心配させまいと振る舞っているのだろうか…なんとなく、ソフィアには彼が今嘘をついた様に感じた。
だからと言って勘だけで人を疑うのは良くない事だし、何か事情があるのかもしれないし…とにかく今は話を逸らしてあげた方がいいのかなと思い、ソフィアはシーカー試験についての事を喋り出した。
「そういえばシーカー試験って、毎年受験内容が変わるんだってね。」
「去年の場合だが…。」
「え!そんなに少ないの!?」
そもそもシーカーはいわゆる公務員的な立ち位置でもあり、給料も高いから志願している人は多い。
シーカー志望者が多く、その殆どが揮ふるいにかけられ落とされていく事もソフィアはわかっていたが…それにしても10人未満って‥。
「あまりにも少なすぎない?」
「去年は歴代の試験の中でも特段難しかったらしいし…本当かどうかはわからないが試験会場に着く前から試験は始まっているのだとか‥。」
「つまりもう試験は始まってるって事?」
「まあもし噂が本当ならばそういう事になるが…。」
「あれ?そういえば…私たち以外の人はいないの?」
「あぁ…昼間っから余裕そうに酒を呷ってあおっていたよ。どうしようもない大人たちだ。」
二人が話し込んでいる間、先程まで清々しいほどの晴天がどこまでも広がっていた空に、いくつもの黒雲が出てきてた。
黒い雲はあっという間に空を覆い尽くし…辺りは薄暗く、何処か不気味な雰囲気が辺りに広がり始めてやっと、二人は何かがおかしいという事に気づいた。
「…静かに、何かがおかしい。」
「え?確かに暗いしちょっと不気味だけど‥。」
こんなにも天気は悪いというのに、海は穏やかに波を立てるばかり…それが却ってかえって不安を煽る。
ケタケタ…ケタケタ…
可憐な少女の笑い声が聞こえる。だが、少女というにはあまりにも不気味で異質な笑い声だ。
自分たちの反対側から笑い声は聞こえた。
「…ラミアか。」
そこには下半身が蛇、上半身が人の形をした化け物が口の端を歪ませ、舌舐めずりをしてこちらを見ていた。
歪な姿をした異形の化け物を見たソフィアは顔を真っ青にして怯えている。
そんな彼女を背に庇いながら、イリスは腰につけていたナイフのホルスターからナイフを引き抜き、ラミアの一挙一動に警戒しながらも、彼は小声でソフィアに話しかける。
「ソフィア…君はここから離れて船内に戻るんだ。」
「で、でも…イリスはどうするの?」
「私はソフィアが逃げるまでの時間を稼ぐ。…心配しないで、ソフィアが逃げる事のできる時間くらいは私でも稼げるさ。」
優しげな声色でソフィアを諭しながら、イリスは自らが犠牲になる事でソフィアを逃がそうとしている。
しかし…その様な事、ソフィアが納得できるはずもなかった。
「ダメだよ!…私が逃げた後、イリスはどうするつもりなの?」
「本当に大丈夫だ。私だって死ぬ気は更々ない。…どうにかしてこいつをなんとかするさ。」
「…でも、やっぱり私は船内に戻りたくない。」
「困ったな…。」
イリスを1人にはしておけない…そんな気持ちから、ソフィアは自身の身を案じて提案してくれた案を全て蹴り、「私もここに残る!」と駄々を捏ね始めてしまった。
しかし…その様な会話をしている間にも、ラミアは不気味な笑みを浮かべながらジリジリとにじり寄ってくる。
ソフィアがいると、イリスは自由に動き回れなくなるし‥それに何より、イリスとラミアの戦いの戦火にソフィアが巻き込まれてしまう。
まだ子供である彼女に極力怖い思いはさせたくないし、醜い争いに巻き込みたくないのだ。
だからこそ、イリスは早急にこの場を離れる様言ったのだが…ソフィアは強情で、全くイリスの発言通りにしようとはしてくれない。
どうするべきか…こうしている間にも、ラミアはこちらに攻撃を仕掛けてくるかもしれない。
化物から一切視線を逸らさず、イリスは5秒ほど考えた末、結論を出した。
「…わかった。船内には戻らなくていい。」
「本当?!」
「しかし、私が3秒数えたと同時に、一気に反対側の階段の上まで駆け抜けろ。そこまで逃げれば、ラミアはソフィアに手を出してこないだろうからな。」
「わかった。…イリス、気をつけて。」
「大丈夫だ、必ず守り抜いて見せる。」
まるでおとぎ話に出てくる王子様の様なセリフを言った後、深呼吸をしてから…彼は再び口を開いた。
「3…2…1…!」
「っ…!」
イリスが3秒数え終わると同時に、ソフィアは後ろを振り向くこともせず全速力で駆け出した。
イリスに指定された場所まではそこまで離れていないが…彼を安心させるためにも、いち早く安全な場所に向かった方がいいと思った。
素早く駆け抜け、ソフィアはラミアとイリスが戦っている場所から離れることに成功した。
「イリスも早く!」
「っ…。」
早く彼も避難させなければ!そう思ったソフィアは大声で彼の名前を呼ぶが…ラミアはそう簡単に獲物を逃してはくれない。
気色の悪い笑みを浮かべながらイリスにその鋭い爪を突きつけてくる。
しかし、その様な稚拙な攻撃でやられるほど彼はやわではない。
バックステップを踏みながら華麗に攻撃を避け、むしろラミアの肌を切り裂いた。
「…手応えはない、か。」
「キヒヒヒ…!」
到底普通の生き物とは思えない笑い声、神経を逆撫でてくる様な笑い声を聞いてもなお、イリスは集中力を乱さずに確実にラミアを傷つけていく。
腕、足、腹部…そうして傷をつけていくごとに、イリスの体力は消耗するばかりで…どれもこれも手応えがない。
一切彼の攻撃はラミアに響いておらず、むしろラミアはどんどんと勢いを増していき、攻撃が激しくなるばかり。
鋭い爪を交互に突き出し、確実にイリスの急所目掛けて打ち込んでくるラミア…大方、それ相応の知能は持っているのだろう。
ただの理性を失った獣ではない‥むしろそれが憎まれる。
ただ本能のまま動き回るだけの生き物だったなら、この戦いはどんなに楽なものだったか…しかし、いくらこうであったならば、こうであってくれたら、などのたらればを考えていても状況は一切変わらない。
右…左…もう一度左。
次々に襲ってくる猛攻を避けつつ、隙あらば巻きついてこようととぐろを巻いている尻尾にも注意を払うことは忘れない。
「イリス!」
後ろの方でソフィアが叫んでいる。‥しかし、彼には声の一つとしてかけてあげられる余裕がない。
体力もかなり消耗してしまっているし…何より、今目の前のラミアから意識を逸らしたら…死ぬ可能性が高いから。
だからなおさら、イリスはソフィアの声に応えるわけにはいかない。
交互に繰り出される鋭い爪による攻撃…だが、1度目の攻撃が発生してから2度目の攻撃が来るまでには幾らかの時間があることにイリスは気づいた。
そして…ラミアが1度目の攻撃を仕掛けてくる。
体を左にそらしてそれを回避…続けて左手に握っていたナイフを素早くラミアの脳天に突き刺す。
「グギィ…!」
「…!」
低い呻き声を漏らし、体を痙攣させた後動きを止めたらラミア。
死んだか…なんてラミアの生死の確認をして、安堵のため息の一つでもつきたかった。
しかし、ラミアは死んでなどいない。脳天を突き刺されたことで少し動きが鈍っただけ…これが人間ならば、確実に死んでいたはずだ。
「抜けない…!」
咄嗟にナイフを引き抜き、すぐさま相手との距離を引き離そうとしたイリスだが…残念なことにナイフは深々とラミアの脳天に突き刺さっており、一向に抜ける気配が見えない。
もたもたと焦ってナイフを抜こうとしている間に、ラミアはまるで怒りの感情をあらわにするかの様にうめいた後、イリスに思い切り巻きつく。
「っ…。」
しっかりとイリスをホールドしたまま、尻尾はギリギリとイリスの体を押しつぶそうとばかりに力を強めていく。
全身の骨がキリキリと軋んだ音を立て、肺が圧迫されて軽い酸欠状態になってしまい‥目の前が白く染まり始める。
このままではまずい…圧死させられてしまう。
朦朧とする意識の中、イリスは残った力を振り絞って腕のホルスターにつけていた2本目のナイフを引き抜くと同時に、目の前のラミアの左腕目掛けてなげつける。
その時、ラミアは何に驚いたのか…突然イリスを拘束する尻尾の圧力が弱まったのだ。
それ見よがしに彼はラミアの拘束から脱出し、勢いよく後ろに飛び退く。
「はぁ…はぁ…。」
もう全身汗だくで、疲労満杯とも形容できるほど疲れ切った体は上手く動かせない。
なんとか打開策はないか…逃げようにも逃げる体力すら残っていない。
持ち得る知識を総動員させ、イリスはなんとかこの絶体絶命の状況下を凌ぎ切る方法を模索する。
だが、彼が探し求めていた答えは意外な所から出てきた。
「ラミアの左手!」
先ほどまで喧騒に掻き消えて聞こえなかったソフィアの声が辺りに響き、イリスの耳までその音を運んできた。
左手?ラミアの左手に何か…
ソフィアが突然言った言葉の意味がよく理解できず、イリスは心の中で浮かび上がった疑問について考え始めようとするが、ソフィアは続け様に言った。
「多分ラミアの弱点は左手にあると思う!そこを狙って!」
「…わかった。」
ドクドクと脈打つ心臓を落ち着ける様に深く深呼吸をした後、イリスは威嚇しているラミア目掛けて駆け抜ける。
化物の急所を突くべくして走り抜ける最中、ラミアの尻尾から飛び出してくる鋭い鱗で頬に傷がつき、一筋の赤い血液が漏れ出した。
だが、そんなことも一切気にせずに、ただ無表情でイリスはラミアの目前まで走り抜けた。
気迫迫る勢いで目前にやってきたイリスから逃げ出すこともせず、ラミアは攻撃を仕掛けようとする。
しかしそれよりも早く、イリスはラミアの足元に落ちているナイフを拾い上げ、思い切り振りかぶったナイフが化物の左手を貫いて…
耳を擘く絶叫が辺りに響きわたり…まるで痛みを耐えるかの様に振り回していた胴体は唐突に力を失ったかの様に地面に激突して、ラミアは息絶えた。
「はぁ…はぁ…。」
「イリス!」
ラミアが息絶えたとほぼ同時に片膝を付き、荒く呼吸をしているイリスに急いで駆け寄ってくるソフィア。
「立てる?傷は大丈夫?」と心配の声をかけながら、イリスに手を差し出すが…
「大丈夫だよ。…それより、どうしてラミアの弱点が分かったんだ?」
「えっと…イリスがナイフを投げた時があったでしょう?あの時、右手で左手を庇う様な動きをしてたから、多分左手はラミアにとって大切な場所なのかなって思って…。」
「…ありがとう。ソフィアのおかげで助かったよ。」
イリスは差し出されているソフィアの手を掴み立ち上がると、戦闘後で疲労のたまっている、疲れている人特有の笑みを浮かべ、ソフィアを安心させようとしている。
そんな彼の気遣いには気づかず、ソフィアも笑い返す。
言葉は交わさず、2人はお互いを見つめあって笑っていると…
パチパチと突然聞こえてきた拍手の音。
その音に呼応するかの様に、イリスはソフィアを背に隠し、すぐさま音の聞こえてきた方に視線をやった。
「合格です。」
拍手をしていた人物はただその一言だけを発した後、踵を返して船内へと立ち去る。
しかし、船内に戻るための扉を開けてから彼はもう一言2人にこう告げた。
「お二方はこの後船長室までお越しください。…A班の第一次試験通過者は2名です。」
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オーディオブック版も投稿しています!
作者が心を込めて朗読しています!
よかったらみてねっ♪(*^^*)
【https://www.youtube.com/watch?v=miI5dxGGkn0&t=47s】
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