4.前世?

「しゅーりょーのお時間です。」


突然響いたこの世のものとは思えないほど綺麗な声で、私は一瞬にして先ほどの暗闇の世界へ引き戻された。

すると不思議なことに。

今まで途切れ途切れで繋がりがなく、意味不明だった映像たちが順々に並び替えられ、やっとのことで私は彼女の言う『記憶』を取り戻した。

もう一度確認しよう。

私は前世、とやらがあるようだ。

名は莉子、姓は橋本。ハシモトリコというらしい。地球という星の日本という国で、学校(魔法学園のようなものだそう)の高等部に通っていた。

驚くべきなのが、その世界には魔法というものがなかった。魔力も持たず、それ故に魔法は空想だと考えられてきた。

莉子もそうだったようだ。しかしその世界では魔法の代わりに“化学”とやらが発明されていたようで、には理解できないような代物がはこびっていたようだ。

ドレスではなくぴったりとしたジャケットや、太ももが見えるほど短いスカートをはいていたようで、とても考えられない。は、はしたないと思わなかったのだろうか?

まぁそれはいいとして、わたしはいつも通り学校に通学していた。


―――き、きゃあああぁぁっ!人殺しっ!


甲高い女性の叫び声が聞こえ、何事かとわたしが振り向いた途端の出来事だった。

目の前にわたしと同じくらいの年……そのくらいの少年がわたしの目の前で、焦点の合わない瞳で何かをつぶやいていた。

なにもわからぬ間に、脇腹のあたりがチクリと痛んだのを感じた。

瞬間、胃が焼けるような痛み。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛いっ!

体がぼうっと熱くなって、一気に冷えた。足元が崩れ、仰向けに倒れる。

路上の砂利が口に入って、気持ち悪い。なんだか鉄の匂いがする。とっても寒い。

視界が、真っ赤に染まった。

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