2.女神のような美女

「—————さい。」

「な、に……?私、眠いの……」

「———きなさいっ!」

「うる、さい……」

「おきなさぁいっ!このアホ聖女ぉっ!」

「ふぎゃっ!!」


底知れぬ闇に落ちていく私を大声で引っ張り上げたのは、見事な輝く銀髪に深い海を思わせる碧眼の美女。黙っていればギリシャ彫刻も恥じらう美しさだというのに、大口を開け、鬼も金棒を放り投げて逃げていくような形相で私の腕をつかんでいるので、怖い怖いしか頭に入らない。


「けほん。え~、ステラ・テンゼル、15歳。十四代目聖女であり、来週から特待生として魔法学園に入学する。合っていますね?」


気を取り直して、とわざとらしく咳ばらいをしてから、私の情報をつらつらと並べ立てる。鈴のなるようないい声 (エコーがかかっているようにも聞こえる)だというのに、にっこりとわらった笑顔で隠し切れない圧があり台無しだ。私は夢中でこくこくと頷く。


「だがしかしその実態は!もともと「地球」という星で女子高生?とやらをやっていたごく普通の人間!合ってますよね?」


こくこ……えぇっ?!

意味不明な単語が並べ立てられて、私の頭はオーバーヒート寸前だ。チキュー?ジョシコーセー?意味が分からない!

私が混乱している間に無慈悲にも銀髪美女は構わず続ける。


「ごく普通の一言に尽きる学生生活を送っていたあなた!だがしかし通り魔により死亡、以前からプレイしていた乙女ゲームの主人公に転生していた!合ってますよね?」


ぶんぶんぶんぶん!

夢中で首を横に振り、何言ってんのかわからないという意思表示をする。ようやく気付いたようで、美女は突然私を正面に見据えた。


「あ~。まだ記憶戻って無い系のようですね。少し失礼。」


超美形の顔が接近してきてあたふたしている間に、美女は長いまつげを伏せて私の額と額を……こつん。とぶつけた。

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