第3話 灰色の瞳



 朝、暗い内から出て行った男達は、昼過ぎに作業場に戻ってきた。特に多くもなく少なくもなく、生きていくには充分な獲物の量だったと言える。既に血抜きされている獲物達は、男達の手で一つづつ丁寧に紐に通されていく。日に焼けて、節くれだった大きな手が、器用に動く。

「生で食べたいな」

と一人の男が言うと、

「それもいい、でも燻製にして保存しとくことも忘れてはいけない」

と隣で作業をしていた男が言うと、

「そう、分かっている」

と先程の男が答える。

「さぁ、作業を終えて早く家に帰ろう」

とまた別の男が言うと、

「みんな、腹をすかして待っている」

と最近、家族を持ったばかりの男が言う。


 数尾の獲物を通した紐を肩に担いで一人の男が、日の光を受けて輝く波を眩しそうに見る。灰色の瞳で、浜に繋がれた小舟の間から。小舟の間には、先程の漁で使った網が丁寧に畳まれてあるが、男は其の網を手にして呟く。


「昼食が終わったら、この網を修理しなければならない」

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