お向いさんと同じポップな窓

構成するもの

「ねぇ、なんで私のこと好きになってくれたの?正直、全然わからないんだけど。」


彼女の私が本気でこう聞いてしまうほど、彼氏はモテる。とにかくモテる。そりゃあもう、べらぼうにモテる。


「なんで?全部好きだよ。伝わってない?」


「いや、伝わってる!伝わってるけどさ!普通に、なんでだろうとは、思う…。」


同じ大学であるということ以外、なんら接点のなかった私たち。学部も違うし、大きな大学だからすれ違う確率だって少ない。1度も会わないまま卒業する人だって数えきれないほどいる。だというのに、どうして人気者の彼が、突然私に興味を持ったのか、それだけが永遠の謎だった。

何度も言うが、彼からの愛は痛いほどに伝わっている。そう、痛いほどに!




大学2年生の秋。始まりは突然だった。


「あの!友達になってください!」


「…え。」


その日は所属する料理サークルに向かうところだった。人通りの少ない旧校舎の前に差し掛かったとき、いきなり目の前に現れた超絶イケメンに、驚きを隠しきれないでいた。


「えっと、ごめんなさい。」


「え、だめですか。」


「あ、いや、そのごめんなさいじゃなくて。あーっと、まず誰ですか…ね?」


「あぁ!申し遅れました!僕、成田なりた こうです。」


「なりた、こう、さん。あ、私は、水口みずぐち 結花ゆいかです。」


「知ってます。友達になりたいので。」


「えっと、その、それ。それ、なんですか?なぜ友達に?」


「え、仲良くなりたいと思ったからです。だめですか?」


「いや、まぁ、だめではないですけど…。」


「やった!じゃあ、今日から友達ということで!」


超絶イケメンから、2度目の「だめですか」をくらってしまい断れるわけもなく、流れで承諾してしまった。




そうしてなんやかんやあって、私達は今恋人な訳だけれど。


「だってさ、聞いたことないなって思って。幸が私を好きでいてくれてるのは、もちろん伝わってる!伝わってるけどね、本当に純粋に気になるんだよ。そもそも、なんで友達になろうって言ってくれたの?」


「そんなに気になるなら言うけど...。結花を知ったのは駅前の居酒屋でさ。その時に結花、梅水晶頼んでたんだよ。」


「...うん。で、なんで?」


「え、言ったじゃん。」


「...は、今のどこにきっかけが?」


「俺も梅水晶好きだから、同じ食べ物好きなんだって、なんか、気になって。」


「...はぁ!?それだけ!?」


「だって、結花その時なんて言ってたか覚えてる?」


「なに?」


「"私さ、20歳の時に初めて食べたときから、梅水晶がめっちゃめちゃ好きなんだよね~!"って言ってた。きっかけまで俺と一緒じゃんって思ったらなんか運命?感じちゃって。」


目の前の超絶イケメンはなんだか照れた顔をしているけれど、全くもって意味がわからない。


「俺の友達さ、梅水晶は特別好きじゃないとか言っててさ。こんなに美味いのにって思って食べてたら、結花がそんなこと言ってるから。仲良くなれるかも!って思ったんだよ。」


俺と結花の一部は梅水晶で構成されてるんだね、なんて嬉しそうにしている超絶イケメン改め、超絶変人。きっかけは思いもよらないところにあったみたいだけれど、その幸せそうな顔を見ていたら、そんなのどうでもいいと思えた。

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