第8話 恋歌⑧

「恋歌⑧」


春から夏の鮮やかな

季節を二人で歩いたね

夏から秋の寂しげな

海を眺めて歩き出す


どんなに眩しい思い出も

季節が移り色褪せる

そんな終わりの予感さえ

君を愛しく思わせる


夏が逝くたび思い出す

初めて交わしたキスのこと

初めて過ごした夜のこと

初めて言った「好き」のこと


夜の九時には待ちあわせ

君の家までお出迎え

何度も通ったこの道を

いつまで通えるこの道を


コンビニ行ってアイス買い

海辺で食べた夏の夜

ふとした気配 秋の風

夏の終わりがすぐそこに


9月になれば君と僕

南南西の風の中

これから君に伝えたい

潮時 やめ時 けじめ時



「言っておきたいことがあるんだ。」


よくわからないけど

君のことが大好きだけど

君を放したくないけれど

このままではいけないと思うことがあるんだ

どうしていいかわからないけど

君が「別れて」って言ったら

僕は潔く別れるから

そのことだけは知っておいてほしい


僕から君に

「別れる」なんて

言うはずがないけれど


君が

「別れる」

というまで

僕は君のそばにいるから

それまでは

そばにいたいから

ずっと君といたいから


「うん わかった けど」

「けど?」

「ばか」




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