第2話 であい
家の中に、彼のための簡単な祭壇を作った。生前の写真を並べて、毎日水も変えた。写真に話しかけることもあった。
それから半年も経たないある日、突然家の中に犬がいた。やせ細った成犬だった。
親父さんがペットショップの前を通った時に見かけて、そのまま連れてきてしまったのだと言う。
なんでも一度、買い手がついたのにいらないと断られてしまい、約二年ほど過ぎてしまったのだという。
私は戸惑った。これまで飼ってきた犬はすべて赤ん坊だった。成犬がはたして懐くのだろうか。
約二歳のオスのしば犬は、思っていたよりとてもおくびょうで、なんにでも震えていた。
爪も長く伸び、歩き方もわからないみたいで、散歩の仕方も知らなかった。
本当にこの子が懐いてくれるだろうか?
不安でたまらなかったが、彼がうちに来たその日の晩飯は、偶然にも赤いきつねと緑のたぬきだった。
どっちを食べるか聞かれて、私は緑のたぬきを選んだ。今度は味がわかったけれど、ちょっぴり涙の味がした。体の奥から温まったことだけは忘れられずにいる。
おくびょうなしば犬の話は、またどこかで。ただ、あれから四年、おくびょうだった彼は今はすっかり……、いや、まだおくびょうなことに変わりはない。それでも、彼のおかげてしあわせになれた。
……今度は覚悟を決めていよう。それが、前の子との約束だから。
あの日から、私が選ぶのはいつも、緑のたぬきだ。
おしまい
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