雑多ベース
朏 天音
人生で初めてだった。 [ノンフィクション/恋愛?]
「すみません……」
声をかけられたのは大きな通りを歩いている時
「はい?」
声に答える
「あの……あなたがとてもタイプで……」
道を聞かれると思ったから、とても驚いた
「すみません急に、怪しいですよね」
「い、いえ……」
こんなことを言われたのは始めてで、緊張したと同時に少し怖くなった
心臓がドキドキと音をたてる
音はそれ程大きくない、でも振動がいつもより大きくて戸惑った
「このままじゃ怪しいので、自己紹介をさせて貰えませんか……?」
「す、すみません。ちょっと……急いで、いるので……」
そのまま、逃げるように去ってしまう
思い返すと後悔が残った
もっと良い断りかたがあったはずだ、とか
ついていっても良かったんじゃないか、とか色々考えてしまう
私がタイプだと言ってくれた始めての人
ビックリして逃げてしまったけれど
もし彼の気持ちが本当ならば、もう一度会いたい
そう思った
きっと友達がいたのなら、今みたいな時に
行っておいでよ~、とか
良かったじゃん! 、とか言って背中を押してくれたんだろうなとふと思った
もし次会えたら、声をかけてくれたら
今度はちゃんと話を聞こう、想いを聞こう
もし私にその気がなかったら、ちゃんと断ろう
そんなことをそっと考えた
なぜなら
人生で始めてタイプだと言われた
好きに繋がる言葉を言われた
ただの偶然かもしれない、勘違いかもしれない
だってマスクをつけていたのだから
それでも少し嬉しかった
好きってどんなのなんだろう
恋ってどんなのなんだろう
なんて考えてしまうほどに
この事は心の奥に閉まっておこう
人生初の思い出として
もしまた会えるなら会いたい
逃げるように去ってしまったことを謝りたい
彼が本当に私のことを想ってくれているなら
してみたい
恋を
知りたい
好きを
今まで恋に全く興味がなかった私が、人生で初めて恋を知りたいと思った瞬間だった
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