《八話》喪失③

 イツミは舞島の死でショックを引きずったまま、次の日も起き上がろうとしなかった。

カホを傍に着け、仕方なくアキとセオは先行してレベルを上げてゆく。


 無心で苛立ちを《泥男ダイム》にぶつける内に、気が付けば昼を過ぎていた。


情報データを確認して一度戻ろうか……あれ」

「……お前もか? 変なメッセージが出てる」


 呼びだした情報データの窓の中に、一つのメッセージボードが重なっている。


昇格クラスチェンジノ条件を達成 情報内ニテ職業欄選択ガ可能 ※15LVニ到達シテモ未選択ノ場合、手前ニ表記サレタ格位クラスガ自動選択サレルノデ注意』


昇格クラスチェンジだってさ……」

「今の格位クラスがより強化されるってことか?」

「そうなるね。なんともまたゲーム臭い……」


 セオはどうもピンとこないようだが、この情報のデジタル表示された窓といい、RPGロープレが好きだったアキには親しみ深いものがある。

 もしかしたら《錠》の製作にこちらの人間が関わっているのではなどと余計な勘繰り入れつつ、空中に表示された情報へと触れると、派生先の格位は戦士ウォリアー斥候スカウトに対しての 説明が情報欄に表示された。


・リザードウォリアー

 リザードマン特有の頑強な身体を前面に押し出しての、近接戦闘を得意とするクラス。

 《初期取得スキル》 【弧薙スライス


・リザードスカウト

 野生の感知能力を有した、優秀な斥候。音や熱源感知などで敵の行動をいち早く察知して対処する。

 《初期習得スキル》 【潜伏ハイディング


「済まん、ちょっと見せて貰えるか?」


 断わりを入れるのを聞いたアキが半身をずらし、セオが手元を覗き込む。


「へぇ……戦士と、斥候ねぇ。順当な所だと戦士か。だけど危険を察知するってのも大事だよな……ん~悩む所だ」

「セオは……どちらにしても近接戦闘専門っぽいね」


 セオの格位派生先は、以下の通りだ。


・拳闘士

 己の肉体を頼りに道を切り開く、無頼の戦士。体内のエネルギーを高め、戦闘能力を増加させる《気術》を覚える。

 《初期習得スキル》 【攻気アタックオーラ


・剣闘士

 剣術と肉体技術の複合したスキルで、一対一を得意とする戦士。様々な方を切り替えて戦況に対応する。

 《初期習得スキル》 【回避の型ボイドフォーム


 どちらもからめ手を無視した前衛タイプになりそうだ。

戦力の増強は生死に直結する要素なので、早めに行っておきたいとは思うが……他のメンバーとの兼ね合いもある。


「……取り合えず保留するか。他の二人の様子を見てから決めたいしな。少し置いておこう」 


 《泥男ダイム》から跳ねて乾いた泥を剥がしながら、アキとセオは天幕に戻ろうとして、思い悩んだように入り口の前をうろつく人影を見つけた。


「誰だ……あれ」

「丸岡か……? どうしたんだアイツ」


 丸岡きょう――転移直後に魔導士たちに向けて写メを乱射して、頭を殴られた憐れな少女。

 まだ傷が残っているのか、額に巻かれた包帯が痛々しい。 

イツミと共に、何度も陰険な悪戯を掛けてきたことが有ってアキの印象は最悪だ。

 何やら耳を澄ましたり、入り口の覆いに手を伸ばしては引っ込めと忙しそうな彼女に思わず顔をしかめたが、アキのそんな思いは露知らずセオが気軽に話しかける。


「おい丸岡、そこで何してる?」

「え、――ッ!?」

「っと……待てって」


 驚いた顔をして踵を返し走り出す丸岡。

 それを遮る様に手を広げたセオに、噛みつきそうな顔で食って掛かる。


「ちょ、どいてよ内海! こ、声出すわよッ……変態!」

「いやいや、何なんだよ……他班の天幕の前をうろついてりゃ誰でも気になるっての。それを変態扱いとは恐れ入るぜ……」

「う、うるさいッ……あんたらに用はない! あたしは……あっ!?」


 ずりずりと後ずさりする丸岡の足下には突き出た石の角があり、彼女は盛大に引っかかって転んだ。

 

「痛っ……たぁ……」

(……不用心に動くから)


 そんな風にアキが傍らで眺める中……丸岡を引き起こそうと差し出しされたセオの手が強く振り払われる。

 化け物の様なアキの姿ならともかく、クラスメイトのセオにまでとは思うが……色々なことが有り過ぎて、警戒心が高まっているのも無理は無いことかも知れない。


「いらないっ! 自分で立てる……っう」


 足をくじいたのか痛みに涙目で無理して立とうとする彼女に、アキとセオは顔を見合わせる。

 そこへ、騒ぎを聞きつけたのか天幕からカホが顔を覗かせた。


「……どうしたんですか? な、何か騒がしいですけど……ま、丸岡さん!?」


 靴を引っかけてパタパタと飛び出して来た彼女は、慌てて足を押さえている丸岡に近づく。


 ――そういえば、丁度いい機会かもしれない。

 あることを思い立って、アキはカホに頼み込む。


「丸岡が転んで足をくじいたみたいでね。カホ、《軽治癒ライト・ヒール》って治療用のスキルを覚えてただろう……。治してやってくれないか?」

「えっ……!? あっ、本当に腫れてますね」

「触んないでって! 痛っ……」


 こけた程度なのでそこまで酷くは無さそうだが、丸岡をここから送り届けるのも面倒だし、確か彼女は第四班――港の班の班員だ。出来ることなら今顔を合わしたくはない。


「このままじゃ歩いて戻るのも大変だろう? 助けてやってくれ」

「そ、そうですよね……は、初めてですけど多分大丈夫ですから、ちょっとじっとしておいて下さいね……」

「え、初めてってちょっとぉ……人を実験台にすんなッ――!?」


 不安を煽るような言葉にびくついた丸岡を無視した、小さな「《軽治癒ライト・ヒール》……」と言う呟き。それと共にカホの手の平に淡い緑光が灯る。

 柔らかな光は丸岡の右足首を包み込み……ほんの数秒で彼女の足首から赤みが引いて行く。


 そして光が消えると、カホは不思議そうな顔をして自分の手を見た後、首を傾げた。


「消えました……。ど、どうですかね、楽になりました?」

「……ん。大丈夫、かな。うん、痛みが消えた……。でも、別に頼んだ訳じゃ無いし、礼なんか言わないわよ……?」


 強気で顔を背け口を尖らせる少女の元気な様子に、カホはほっとした様子で笑う。


「良かった。後、頭の方の傷も……どうですか?」

「い、いいよそこまでは。港から、あんたらに関わるなって言われてるし……」

「う~ん……いいんじゃないでしょうか、別に。ねぇ?」


 カホが同意を求めて来たのをセオは面倒そうに頷く。


「どうせ、イツミの様子を見に来たんだろ? ならもう、とっとと治療して人目につかない内に中に入れよ」


 カホの治療を受けながら、丸岡がセオの顔を睨む。


「……なんであんたがいっちの名前を呼ぶのよ? 馴れ馴れしい……苗字ですらほとんど読んだこと無い癖に」

「あのなぁ……言い出したのはあいつからだぞ。遅かれ早かれだし、こっちの世界に合わせた方がいいって」

「……わかるけど、でもなんかヤダ」


 丸岡は軽くショックを受けた様子で俯く……友達を取られたような悔しい気分になったかも知れない。何を言っても癇癪を起しそうなので、アキとセオは黙り込む。


 その内に治療を終えたカホが、丸岡を天幕に招き入れた。


「終わりました……。さあ、どうぞ。お出しする物も何も無いですけど……」

「お構いなく……って自宅でもあるまいし。……なんか変だよね、見沢って」


 「こんな子だったんだ……」と丸岡が少し呆れた顔をしながら中に入り、寝具に丸まって背を向けていたイツミに飛びついた。


「いっち、ごめんね一人にして!」

「きょーちゃん……?」


 二人の声がかすれ始め、わななくのを聞いてカホは出入り口を静かに閉じる。


「ちょっと遠慮しましょうか……」


 久しぶりの友人との再会をおもんばかったのか、どこか嬉しそうな笑みと共に天幕を離れたカホに、アキ達も素直に従うことにした。





「意外と友達思いなんだな、ああいう奴らって。もっとサバサバしてんのかなと思ってた」

「ね……何となく、自由に動きづらい雰囲気ですから。よく来てくれました……」


 別段強制されている訳では無いにしろ、こんな状況だから自分だけ勝手な行動を取るのを気に咎める人間も多いだろう。そして特に四班は港が目を光らせてい為、相当勇気がいったはずだ。何かの用事を偽って来たのかも知れない。結構なことだ。


 特に親しい友人もできずに学校生活を送ってきたアキには、その辺りの感情が良く分からない。

 

「俺達って、そういうのに皆縁が無さそうだよな……決めつける訳じゃ無いけど」

「わ、私はちゃんといましたけどね? 学外ですけど……」

「ふ~ん……アキは。……怒ってんのか?」

「いや、別に。ただ僕は不思議だと思っただけだ」


 真顔を勘違いして受け取ったセオの言葉を訂正し、アキはぼそりと言う。

 家族でもないのに、もしかすると自分よりも大事な人間。


「わからないんだ。家族でもないのに……打算も無く互いの事を思いやったり、助け合ったり……」

「俺も人の事は言えないけどな。子供の頃とか、遊ぶ友達とかいなかったか? 一緒にいると楽しいって言うのの延長にそういう関係性が出来るんだとは思うけど、誰もそこまで深くは考えないんじゃないか? 居心地が良いから、大事にしたくなるんだよ」

「そうです、自分がここにいても良いんだって気にさせてくれるから……」


 カホが肩のほぐれたように表情を柔らかくするのに、セオも釣られたのか茶化すように笑う。

 

「でもさ、ここでこんな三人でこんな話をするなんて……夢にも思わなかったぜ? 俺悪いけど、お前らに対して陰気そうな奴らっていう認識しかなかったからな。何考えてるかわかんないし。何か腹の中黒そうっていうかさ」

「うわぁ、失礼ですよ……この人! ねぇ……あれ、アキ君?」


 二人の会話を聞かずにアキは天幕を眺めていた。

 イツミと丸岡はこれからどうするのだろう……この訓練が終わってもアキ達は、同じように過ごすのだろうか。それとも離れ離れにどこかへ飛ばされるのだろうか。


 そうしてまたイツミは得難い友人を失って途方に暮れるのだろうか。

 それを思うと少しだけ胸が痛んだ……何故だろう、彼女の事は許せないはずなのに。


 いつの間にか隣に並んで見上げていたカホが深呼吸をして、真剣な顔付きで言った。


「もし、イツミちゃんが丸岡さんと行動を共にしたいって言ったら……止めますか?」

「有り得る話だよな。各班が了承するかは別として、確か四班……港の所だろ?」


 セオが後ろから近づいて相槌を打つ。

彼は鈴見から情報を貰っており、誰がどの班にいるかもメモしていた。

 こういうところはリーダーらしくしようと努力している部分が垣間見えて安心できる。


「港君のところですか……。それはちょっと心配ですね」


 聞いたカホは、眉を寄せた。港とコウタのいる第四班。確執があるあの二人の元にイツミを送るのはいささか不安があるのだろう。


「俺も反対だが、アキはどう思うんだ?」

「どうって、僕にそれを聞いてどうするの? 僕はイツミに対して良い印象を持ってないから、別に彼女を守ろうとも思わない。その心情は別にしても、あえて引き留める理由も、追い出す理由もないと思う。どちらでも構わないよ」


 アキの物言いに慣れて来たのか、二人は苦笑を見せてそれぞれの意見を言い合う。


「俺は出来れば今の状態を維持したいと思っている。これ以上人数が減るのも不安だしな。お前は?」

「私はもちろん残って欲しいと思いますし……でもイツミちゃんの意思ありきですから、無理には止められません。逆に丸岡さんをこちらに引き入れることはできないんですか?」


 確かにそれができるなら、少なくともイツミ達の安全は保障してやれるだろうが、そう簡単ではない。カホの意見にアキは首を振る。

 

「港が恐らく承諾しない。あいつは自分の物に手を付けられるのを極端に嫌うから……多分取巻きや班員もその範疇に入ると思うよ」


 丸岡がどんな格位やスキルを得ているのかは知らないが、それが希少であればある程、手放そうとはしないだろう。無論、本人の意思など露ほども考慮しまい。


「そう……ですか。私、彼の事をよく知らないから……セオ君は彼にどういう印象を持っていますか?」

「港、ね……」


 セオは渋面になって首筋を押さえた。


「港は、怖えよ……俺も一応武道経験者だ。差しでルール有りの場ならやり合えるとは思う……けど、ルール外だと多分何をしても勝てない気がするんだ。あいつは人を追い詰める方法を心得てる。恐怖で周りを縛るやり方って言うのか……。部の先輩からも、三年で生意気な下級生をシメようって奴が港に手を出して不登校になったとか聞いたしな。学校も家も関係なくグチャグチャにされたらしい。できれば、関わり合いにはなりたくないね……」

「そこまでなんですか……うぅ、怖い」


 カホは青ざめて肩を押さえ身を震わせた。

無理も無い……元の自分のままこんな話を聞いていたら、アキも平静でこの場には居られなかっただろう。


 あくまで苛めを校内で留め、家まで追って来ることは無かったのは、長く楽しむのと、周りに恐怖を演出するための道具として利用する為だったのだと今悟ったのだ。


「なら尚更、イツミちゃんにはそっちに行って欲しくは無いですよね。彼女がどういう選択をするかわかりませんけど。……引き留めても良いですか?」

「好きにしたら……ただしなるべく穏便に済むように頼むけど」

「わかりました……」


 ――不思議なものだ。

 あんな話をセオから聞いてもカホは、二人をどうにかして助けてあげたいという意思は消えないらしい。


 彼女の様に、こういった状況で吹っ切れて強さを見せる人間もいれば、反対にイツミのように大事な物を失い脆い部分を見せてしまう人間もいる。

 危機的状況が不平等に少年少女達の心を揺らす中、より素直に心の中の思いを浮き彫りにしてゆく。


(なら僕は……ここから何を望み、どう生きて行くんだろう?) 


 元々あった、ここから逃げ出したい……この弱い自分を捨て、自由になりたいという望み。

 その願いは歪な形で、叶えられることになった……だけれど。

 

(自由になって……僕はその先にどうしたかったんだ?)


 あまりにも漠然として、答えの端すらも浮かんで来ない。


 ――馬鹿馬鹿しい。まるで小さな子供みたいだ。

 その内気恥ずかしくなって来たアキはそこで考えるのを止めた。





 話し込んでいたアキ達三人。

 後ろの天幕の出入り口を開いて勢いよく飛び出して行ったのは、赤い顔をして口元を押さえた丸岡だった。


「お話……終わったみたいですけど」

「入るか……」


 セオに続き、すだれのような布をめくると、ムッとした顔のイツミが三人を見た。


「あによ……」


 鼻を啜る彼女は、照れと苛立ち半々と言った様子の顔だ。

顔に幾分か生気が戻っているのは喜ばしいが、みるからに機嫌がよく無い。

 そんな彼女の様子にも怯まずに、カホはやんわりと聞いた。


「あの、彼女は知って出て行っちゃいましたけど、良かったんですか?」

「うるさいな……仕方ないじゃん。だって……」


 イツミは赤くなった目を伏せてぼそぼそと話した。


「きょーちゃん、四班に無理やり引っ張ってこうとするんだもん。きょーちゃんはいるけど、あたし、あっちには行きたくない」


 アキ達は丁度そのことについて話し合っていた所だったので、彼女の周りに円になって座る。


「う~ん……そう来たか」


 セオが腕を頭で組み、カホとアキもそれぞれ考え込む。

 そんな三人にイツミは怒りを露わにした。


「なに!? あんたらもあたしがあっちに行くって言いだすと思ってたわけ!? あんな事コウタに言ったその足でやっぱり仲間に入れて下さ~いなんて言えるわけないじゃん! あたしにだってそれ位の意地はあるんだから……!」

「ちょっと落ち着いて……私達はただ」

「逆の話をしてたんだ……丸岡をこちらに呼べないかって。カホが港の方に行って欲しくないってさ……色々危なそうだしね」


 アキの落ち着いた眼差しに、イツミは振り上げた拳を下ろし、ため息を吐いた。


「そゆこと……。ごめん……気持ちは有難いんだけど、多分無理だと思う。きょーちゃんも全然話聞いてくれなかったし、よっぽど港の事が怖いみたい。どうにか、ならないのかな?」


 イツミは膝の上に視線を落とし、悲しそうにしている。

 そんな彼女に、アキは厳しい一言を投げた。


「いっそ、君が本当に向こうに行くのもありかもね」

「おいアキ、それは……」


 三人の避難の視線が集中するが、アキはそのまま個人的な意見と前置きして考えを述べた。


「本当に何を置いても彼女の傍にいたいんであれば、そうするしか今の所方法は無いんじゃない? 確かに彼の元は危険ではあるけど、僕らと一緒にいたって、この先安全が保障されてる訳じゃない。イツミの能力は未だ未知数な所が多いけど、この先役に立つ力を得れば酷い扱いはされないかも知れないし、丸岡を護ってあげる事も出来るかもね」

「そんなの分かんないじゃん……いきなり裏切られて見捨てられるかも知れないし、襲われるかも」

「そうだね。だからそうした方がいいなんて事は口が裂けても言えない。ただそういう考えもあるってだけだ。結局のところ、選ぶのは君だから、よく考えて」

「あ、あたしは……! あたしは……っ」


 重い空気の中、口を何度も開閉させて、イツミは懸命に何かを言おうとした。だが、その先の言葉がどうしても口から出てこない。

 追い詰められたように苦しそうに目を閉じ、そのままぎゅっと口を噤む。

 その様子に、カホが慌てて助け舟を出した。


「……い、いいんですよそんなに急いで決断を出さなくても。自分を犠牲にしてまで助けようとしなくても……いいと思います」

「……あたし、どうしても怖くて決断できないよ……大事な友達を助けたいのに。嫌だ、あんな奴らに物みたいに扱われるのなんて、ぞっとする……。どうしたらいいの……」


 イツミはまた滲み出した涙を袖の内側で拭う。

 相当感情が不安定になっているのが見て取れた。

 それを見かねてか、セオはわざとらしい溜息をついて、あえて気楽そうに言う。


「ま、気休めだけど、また何か状況の変化が起こるかも知れないしな。とりあえず、明日の判定を乗り切るためにイツミもカホもLVを上げてくれよ。俺達があいつらより強くなれば、もう少し向こうの対応も変わるかも知れないし……悩んでばっかりいても仕方ないだろ? 俺達もなんかいい方法があれば考えとく。まずは目の前の事をどうにかしようぜ」


 セオの意見は問題を先送りにしたように見えるが、イツミがこの場で判断できないのは誰の目にも明らかだったので仕方が無い。

 

「少し外の空気を吸いましょう。イツミちゃんも、今は辛いだろうけど頑張って……」

「ごめん……何か足引っ張ってばっかで」


 まるで立場が逆転してしまったかのような二人。

 ところ変われば、人も変わるものだと……アキは興味深い思いでそれを見つめていた。

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