第41話 まさか・・・ 13
頭の中はぐちゃぐちゃだけど、この日もいつもと変わらず仕事を入れていた。
何もしないで休んでいるよりよほどよかったんだけど、勘がよくて優しい常連さんたちに気を遣わせるなんて駄目だ。
そして私の運の悪さときたら、こんな時にもきっちりいい仕事をしてくる。
ベビー用品の特売日なんだから、まいっちゃうよね。
全力でいつも通りのヘラヘラ口調で仕事を終え、店長の残業にまでつき合って帰ってくると、すでに2時を過ぎてしまっていた。
いつもなら誰一人として起きてなんかいない時間だ。
音を立てないよう、こそこそリビングに忍び込むと、驚いたことに連れがまだ起きていた。
「まだ起きてたんだ。先に寝てよかったのに。・・・ありがと」
そう言ってへへっとカラ笑いした私の腕を、連れはぐっとひっつかんでそのまま風呂場に連れ込んだ。
熱めのシャワーを頭から浴びせられた私は、そんな連れの奇行を冗談めかして笑い流そうとしたけど、上手く笑えなくて。
何もかもがグラグラ揺らいで、立っていられないくらいに足元がふらつく。
自分でも何をしているのかよくわからないうちに、私は連れにしがみついて彼の肩に噛みついたまま、大声を上げて泣いていた。
どのくらいそうしていたのか。
まるで熱に浮かされている時のように頭の中を朧げに揺らしたまま、されるがまま浴室を出て、連れが勝ってきてくれたらしい牛丼を広げる。
出勤する直前まで私を励ましてくれていた子供たちだったけど、きっと本当はそんな心の余裕なんて、これっぽっちもなかったんだ。
夕飯を作ることができないくらい。
平日の夜に仕事を抜けて連れが勝ってきてくれた牛丼は、私や子供たちの好物だった。
食べさせてあげることが出来ていたなら、きっと、お腹の中のこの子も好きになったんだろうな。
布団の上に座ってぼんやりしていると、今度は隙間ができないよう連れに毛布でぐるぐるに巻かれ、強く抱え込まれて無理やり寝かしつけられる。
目覚まし時計が夜の終わりをうるさく叫ぶまで、浅い眠りの波に揺らされた私がうなるような泣き声を漏らすたび、連れの腕にギュッと力がこめられるのを、何度も何度も感じながら、お腹の辺りが冷たくて冷たくて仕方なかった。
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