第24話 みっちゃん 4
混沌としていた教室が再び静まり返った。
笑い声とは全く相いれないビリビリと張り詰めた空気が、瞬く間に教室を支配していく。
途端に緊張で胃の奥の辺りがグッと強張ったけど、そんなのは無視してなんとかいつもの調子で口を開く。
「落ち着けって。なんでみんなそんなに騒ぐんだよ」
「うるさい!あんたは調子に乗ってしゃべるな!」
例のおっかない彼女が私に向かって金切声を上げる。
私の記憶が確かならこの時は確か、口にするのがはばかられるような、とんでもない言葉の数々でこてんぱんに罵られたんだけど・・・・・・。
話に障ることはないから、とりあえず細かいところはよしとしよう。
正直なところ、ちっぽけな私は怖くて仕方なかった。
注目されるのは苦手だし、何が正しいのか、何をするのが本当の正解かも分からないんだ。
冷たく震える指先を手の内に握りこんで胸の中でみっちゃんの名を唱えてみる。
何が彼を追い詰めてしまったのかを一生懸命考えながら、震えそうな唇を無理矢理開いた。
「考えればわかるだろ。みっちゃんの好きな人が俺?そんなこと絶対にありえない。・・・なんでみっちゃんがこんなつまんない嘘をつくことになった?お前ら一体何したんだよ」
「嘘?」
「当たり前だろが。まさか、みんな本気にしたのか?」
教室がざわめく。
そこかしこで「だよなー」「嘘だったのか」「京が言ってるし」「あいつらしつこかったもん」なんて台詞が聴こえてくる。
私は呆れてため息をついた。
同時にいい加減怒りが込み上げて来て、思わず声を荒げる。
「みっちゃんが大人しいからって、お前らしつこくし過ぎだ。可哀そうに、こんな嘘までつかせちゃってさ。いい加減放っておいてやれよ!」
まくしたてるように怒鳴りつけ、私はみっちゃんを連れ戻すため二人の後を追った。
廊下を歩いていると、さほど進むことなく二人の声が聞こえてくる。
この時、何か大切なことを盗み聞いた気がするんだけれど、残念ながら私の記憶からすっかり抜け落ちてしまって、この時の二人の会話はどうしても思い出すことができないんだよね。
とにかく、非常扉の死角で二人が何か言い争っているようだったから、話が途切れるのを待って声をかけた。
「教室、戻っても大丈夫だぞ。もうみっちゃんにしつこくすんのはやめろって、言っといたから」
「ごめん」
「なんでみっちゃんが謝んの。わかんないよ」
私が笑うと、カズが怒った顔で私を睨みつけてきた。
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