第6話 夢の保育園

 毎日の願掛けが叶ってのことだろう。

 私が小学校に上がる年、無事にでっかいでっかい妹が生まれた。


 そこから少しばかりさかのぼるんだけれど。

 このころまでの私は、安定の鬼ババアである祖母のほかに、もう一つの頭の痛くなるやっかい事を抱えていた。


 保育園の先生問題だ。


 祖父母の家は農家だ。

 家の中は常にばたばたと忙しない。


 実家に出戻った母は祖父母と共に畑仕事をするようになっていたから、4歳の私は保育園に預けられることになった。


 この保育園が、またまた最高に嫌な空気に満ち満ちた場所だったんだよね。


 保育士同士の関係が、腹をかかえて大笑いしちゃうほど悪過ぎるこの場所は、彼女たちの虐め合いが熾烈さを極めるパラダイスだった。


 しかもあろうことか、常軌を逸した彼女たちは、そのストレスをとびきりお気に入りの子供に密かにぶつけることで心の平静を保つという、最高の方法を編み出していたんだ。


 ある保育士グループの一番のお気に入りとなった私の毎日は、かなり盛り上がりを見せていた。


 身体がひときわ小さく、さらに高いところが大の苦手だった私は、彼女たちの、手ごろで飽きのこない最高に素晴らしい玩具になった。


 外遊びの時間になると、私はすぐに彼女たちに捕らえられ、カラフルな鉄の棒が丸いアーチ状に組まれた背の高い遊具のてっぺんに、無理やり置き去りにされる。


 「怖いよ!おろして!」


 と泣きながら頼んでも、保育士の女たちはこのうえなく楽しそうな笑みを見せてくるばかりで、私の願いは決して叶えられることはない。


 永遠か!というほど長い外遊びの時間が終わるまで、私は恐怖に震えながら鉄でできた冷たい棒を必死に握りしめていた。


 すねの辺りに食い込む固い棒の痛みはたえがたいほどだったけど、恐怖で少しも動くことはできない。

 仮に下手に動いて足を踏み外そうものなら、小さな私の身体は気持ちがいいほどするりと棒の間を通り抜け、間違いなく下に落ちてしまうだろう。


 もしそんなことになってしまえば、私を置き去りにした保育士の皆さんは、他の子どもたちと楽しく追いかけっこをしている最中なんだから、助けなど間に合うわけがない。


 私にとっては、すねに感じる痛みなんかより、落ちることへの恐怖のほうが遥かに勝っていたんだから、そりゃあ耐えるしかないよね。


 手足のびりびりとした痺れと痛みに涙をあふれさせながら、保育士がこの最高に見晴らしのいい最悪の場所からおろしてくれるのを、母親の迎えと同じくらい切ない気持ちで、ただひたすら待った。


 もしかしたら、本当はそれほど長い時間ではなかったのかもしれないけれど、当時の私には気が遠くなるほど長く感じられたんだよね。


 こんなことが毎日のようにあった。


 夏場はプールの中で足をひっかけられて、仰向けに浮いてどうしたらわからなくなった。

 よほど面白かったのか、そのままかなり長いこと放置され、他のクラスの保育士まで見物に集まってきて、酷く笑われたりもしたね。

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