科学部男子のランチが『赤いきつね』だったなら

柴チョコ雅

第1話 朝寝坊と赤いきつね

たける、早く起きないと!」


母の荒ぶる声で目を覚ました。いつもより10分遅い。慌てて支度をしてリビングへ駆けつける。高校までバス通だが、朝のその一本を逃すともうだめだ。母も慌ててるなと思いながら朝食を済まし玄関で靴を履いてるとリビングの入り口から


「タケルー」


という大声と共に赤い丸いものが飛んできた。


「私も、今日寝坊しちゃってさーお弁当作れなかったの。これ持ってって。」


「いや、これだと」


学校でお湯を調達するのがちょっと大変と言う前に


「割り箸テープでくっつけといたー。早く行かないと、バス乗りはぐるよー」


と姿は見えねどたたみかける母の声がした。慌てて小脇に赤いきつね、テープで割り箸付きを抱えてバス停へと走った。


 3年2組の教室にて3年間クラスも部活(科学部)も一緒、出席番号も前後の仲良しの戸村に相談してみた。


「昼ごはん、今日、赤いきつねなんだけど、どこでお湯調達したら良いと思う?」


職員室に頼めばお湯貰えるんだろうか、それとも最寄りのコンビニで貰えるのだろうか。持ち込みオッケーなのかと悶々もんもんとしながらバスに揺られてきたのだ。こんな事なら途中でおにぎりでも買ってくれば良かったとちょっとため息が漏れた。


「何?タケちゃん赤いきつねなの?じゃ、俺緑のたぬき買ってくるー。半分こしよう。」


「え?戸村弁当は?いや、お湯の心配が」


「弁当はおかずにする。お湯は理科室で沸かせば良いじゃん!じゃ、時間ないー。コンビニまで一走りひとっぱしりしてくる。」


帰ってきた戸村は緑の丸ではなくカップ型の黒いのを抱えていた。


「緑のたぬきなかったのか?」


「緑のたぬきは3分なんだ。赤いきつねの5分とは差がありすぎかと。同じ味だと食べ比べもできないし。で、激辛ニボなら4分!」

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