ローカル線で海へと向かう、男子学生ふたりの物語。
男性ふたりの関係性とその感情のありようを描いた、シリアスな現代もののお話です。
紹介文にある「感情は大きめ」の一文の通り、お話そのものは重めというか、淡々としていながらもある種の深刻さのようなものを孕んでいます。
その堅実な物語のあり方と、それをそのまま体現したかのような文章が大変印象的でした。
作中のいろいろな要素、例えば太一が髪を伸ばしていることや、佑哉が海を好むことなどの、理由の持つ説得力のようなものが好きです。
理屈ではなく、わりと感覚的な話のように思えるのに、すっと自然に飲みこめてしまう。この「そういうもの」とわかる(わからせてくれる)ところが、読んでいてとても心地よかったです。
結びも好きです。基本的に重めの現実を描いたお話だと思うのですけれど、だからこそ。
なんだかふっと心が軽くなるというか、上向くような感覚の自然さが嬉しい作品でした。あとタイトルが大好き。