いってきます!

@atta_atta

1.

タバコの匂いで目が覚める。

午前7時。



せまい都市のマンション。



…臭い。

この匂い、私は好きじゃないな…。



でも、もうこの匂いには慣れてる。




モゾモゾ…。




足元に暖かい感触。





もぞもぞと動いている。


でも、もう慣れた感覚。




「ふふっ…おはよう、タロー」



『へッへッ…ワンッ!』




私の隣で寝ていた犬、タローにそう話しかける。



変わらず元気だね。



『ヘッヘッヘッヘッ…』




あらら、涎垂らしちゃって…。


お腹空かせちゃったのね、ちょっと待っててね。

今準備するから。





「おまたせ。」





カツン…。




私はタローの目の前にご飯を置いた。





ご飯を置くと、ガツガツ食べ始めた。

相変わらず良い食べっぷりね。




毎日、タローの食事を見るのが日課になっている。

毎日見てても全然飽きないのよね。





時計を見る。





午前7:30





…いけない、そろそろ出なきゃ。

仕事に遅れちゃう。





だって私、出来る子だもの。

遅刻なんてしないわ。





私は着替えて玄関のドアを開ける。






ガチャ…





眩しい日差しが私を照らす。




『……ワンッ!』




後ろでタローが吠える。




ふふっ いつも見送りありがとね。

今日も私、がんばるよ。










…でも、もうその声は聞こえないんだよね。





「それじゃ、私…」



『ワンッ!』




元気よく一吠え。




「ふふっ…行ってくるね。タロウ」




『………。』





もうその声はもう聞こえない。




太陽に照らされた影は私だけ。

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