貧乏時代に食べた思い出のカップ麺
ソラ
出会いと思い出の話
「ねぇ・・・慎二(しんじ)君、あの日の事覚えてる?」
「あの日?」
「2人の出会った頃の事だよ。覚えてる?」
「あぁ・・・覚えてるよ。寒い冬のスキー場で会ったよな。美緒(みお)が、リフト乗り場まで登れなかったんだよな。」
「そう・・・私がリフト乗り場まで行けなくて慎二君が助けてくれたんだよね。懐かしい~。」
2人はコタツに入って昔の出会いの話をした。
「ねぇ・・・慎二君、何か食べる? カップ麺あるけど、どうする?」
「あ・・・食べる! 美緒、気が利くな。」
「赤いきつねと緑のたぬきがあるよ・・・どっちにする?」
「じゃあ・・・俺、緑のたぬきお願い。」
「じゃあ・・・私は赤いきつねにするね。」と言ってお湯を沸かす。待っている間に昔の話が盛り上がった。
慎二君と出会ったのは10年前のことだった。
私が、冬スキー場に1人で初めて遊びに行った時のこと。
「リフト乗り場に並んだのは良いけど、斜面が斜めすぎて登れないよぉ~リフトに乗れないと、上から滑ること出来ないし・・・はぁ・・・どうしよう・・・もうリフトに乗れなくて3時間だよ・・・私・・・なにやってるんだろう」
「あの・・・どうかしたんですか?」
「あ・・・リフト乗り場に並んでいたんですけど・・・スキー板ごと滑っちゃって・・・うまく登れず・・・全然リフト乗り場までたどり着かないんです。どうしたらいいのか・・・わからなくて・・・」
当時、慎二君はスキー場に一人で遊びに来たらしい。たまたま私が困っているところを見て話をかけてくれた。それが慎二君との出会い。
「僕と一緒にリフト乗り場まで一緒に行きますか?」
「一緒に行ってもらえるんですか?や・・・やったー! やっとリフトに乗れる~」
「そんな大声で喜ばなくても・・・」
「私にとっては、一大事だったんです!リフト乗り場に並んで3時間・・・前に進めないから後ろの人に譲ったり・・・一生懸命やってもリフト乗り場には近づけなかったんですよ~あなたは私の命の恩人です!」
彼女は、眼をキラキラさせながらしゃべっていた。その姿はとても可愛かった。
そんな明るいところに俺は、彼女に惚れたのかもしれない。
「よいしょ・・・よいしょっと、ふぅ・・・やっとリフト乗り場に到着っと・・・」
「その調子です。もう大丈夫ですね。僕はもう行きます。それじゃ・・・」
「いろいろとありがとうございました。助かりました。」
私は、リフトに乗り、初級コース辺りまで登った。
「よし、滑るぞ~え・・・わぁああああー」
準備もしないうちに私は、スキー板を斜めにして勝手に滑り出してしまった。
ものすごいスピードで降りていく。
「えっと・・・ハの字にして・・・え・・・止まらないじゃん!初級コースなのに!」
「大丈夫ですか?」
なんて私が叫んでいたら、なんと! さっきリフト乗り場までスキーを教えてくれた。男性が私の腕を掴んでいた。
「さっき・・・リフト乗り場まで私に登り方を教えてくれた・・・お名前は・・・」
「慎二です。月宮 慎二。」
「私は、並木 美緒。あの・・・電話番号教えてもらえないかな?」
彼女は、照れながら電話番号を聞いてきた。
「え? 僕でいいなら教えますよ!」
私達は、電話番号とメールを交換した。それから付き合うことになった。
その後、家賃安めの6畳一間でトイレとお風呂付アパートを借りて一緒に住んだ。
「寒いね・・・慎二君・・・暖房ついてないのは分かるけど、コタツだけで過ごせるかなぁ~」
「じゃーん!」
「そ・・・それは!まさか! 赤いきつねと緑のたぬきではありませんか!」
「安かったから買ってきちゃった。寒い日はこれに限る!」
「私、お湯沸かすね!待ってて!」
美緒は、嬉しそうにお湯を沸かす。
「フフフフン」と、歌いながら私は、緑のたぬきそば、慎二君は、赤いきつねうどんを選んだ。美緒がカップ麵にお湯を入れる。
「「いただきます」」
「熱~い。温か~い。暖まる。最高~ん~カップ麺のいい匂いがする~」
「美緒~おじさんみたいだぞ~」
「いいじゃん 感想言っただけだし・・・美味しければすべてよし!幸せならもっと良し!」
「美緒が幸せならいっか!」
「気にしない。気にしない。電気。ガス止められても気にしない。」
「それは気にしろよ。生活出来なくなるから。」
そんな思い出の話をしていたら、カップ麺が出来上がっていた。
「「いただきます。」」
熱いので、ふぅと冷ましながら私は、赤いたぬきのうどんを食べた。
「美味しーい。やっぱコタツに入りながら温かいものを食べるって最高だよね~」
「そうだな・・・付き合い始めた時は、お金なかったから。よく赤いきつねと緑のたぬき食べてたな」
「でも・・・貧乏時代はあったけれど、私は・・・幸せだったよ。2人で過ごした時間だから、今・・・思うといい思い出。お金がないから頑張って節約して、デートにも行ったから最高に楽しかった。」
「俺も最高に楽しかった。こうやって結婚して今は子供も出来た。」
「今は、一軒家まで買って貧乏抜け出したって感じで、家族全員そろってコタツに入ってカップ麺を食べてるから昔のことは考えず、前を向いていこう!」
「前向きなのは、美緒らしいな」
「お母さん! なに! 1人大きな声出してるの?」
「ごめん・・・ごめん・・・小さい声で喋るよ~」
そして1時間後
「夜、ご飯で来たよ~」
返事をした子供3人が2階から降りてくる。
「みんな!今日の夕飯は、赤いきつねうどんと緑のたぬきそばです~」
「私、赤いきつね!」
「俺・・・緑のたぬき。」
「僕も緑のたぬき。ねぇ・・・なんで今日はカップ麵なの?」
「パパとママで昔の話をしてたら食べたくなって、たくさん買ってきたからみんなで食べようかなぁ~って」
「いいね! いいね! 二人の恋バナ教えてよ」
と3人の子供に言い寄られ、みんなで盛り上がりました。
これが私の彼と出会った思い出のお話。
貧乏時代に食べた思い出のカップ麺 ソラ @natuki0209
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