アリスは時に、物語の外側へ
星未夜 ゆーも
プロローグ
[Kuina✶pr.]
今日は、やけに時間の進みが遅かった。
まるで、私を引き止めるかのように。
だけど残念。私を引き止めるものはもう無い。
フェンスを乗り越えたそこに広がるのは遠い地面と青空。
あと一歩、前へ出れば新しい人生が始まる。
人の足音が聞こえた。誰かが来るのだろう、早くいかなければ。
床から離した足は唯一私を引き止めた時間に阻まれた。
先程の足音の主が喋る。
「、、、止まった。」
[Alice✶pr.]
氷川赤薔薇は昔から「変わった子」だった。
何しろ名前が赤薔薇とかいてアリスだし、普通の人が言う「変なもの」が見えるからだ。
例えば、私の友達は喋る白うさぎだし、家の庭の木の根元には大きな穴が見えて、そこに入るともっと面白い事がたくさんある。
子供に赤薔薇という名前を付ける親も相当変人だが、私よりはましだろう。どうやら私はピーターパン症候群らしい。いや、ピーターパン
症候群に『見える』と行った方がいいだろう。
なぜなら私にとっては生まれた時から当たり前に現実に起きている事なのだから。
ところで、私はその「木の根元の穴」の中の世界の事を不思議の国と呼んでいる。
その不思議の国には色々なものがあって、その中で私のお気に入りは気まぐれ時計。この時計はよほど機嫌が良くなければ正確に進まない。
そして、今その気まぐれ時計が今までで一番不思議な事を起こした。
初めて止まったのだ。屋上への階段を登る事に遅くなって、ピタッと止まる。
顔を上げると、そこには今まさに屋上から飛び降りようとしている女の子がいた。
手元の時計は止まっていた。
「、、、止まった。」
飛び降りようとしていた女の子が振り向く。
そしてその女の子は私を見て、嬉しそうな顔をしていた。
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