8話 消去

 二人の魔人がブラック達を探すため、森を彷徨っていた。

 少し歩くと今度は黒い影の塊が魔獣のような形に変化し攻撃を仕掛けて来たのだ。

 そうは言っても、負のエネルギーをぶつけてくるだけなので、二人にとっても問題なくレジスト出来るのだ。

 しかし、森への影響を考え、消滅させる事は出来なかった。

 何回か遭遇したが、その度にユークレイスが記憶を消去し集合体を分散させながら、前に進んだのだ。


「あの二人どこにいるのかしら?

 ここに来た形跡はあるのに気配がないなんて、異空間にでも行ってるのかしら?」


 ジルコンは正直、この周りに浮遊している黒い影が気に入らなかったのだ。

 もちろん結界を張っているので、直接接触する事は無いのだが、不快でしかたなかった。

 すぐにでも消滅させたかったが、森を考えるとそんな簡単では無いのだ。

 それにまだ仕事があるのだ。

 自分から2人の捜索に行く事を申し出た手前、ユークレイスに押しつけて早く帰るわけにはいかなかった。


 森の中の気配を探っても二人を見つけることが出来なかったので、あの大きな木があったところに戻る事にしたのだ。

 そう決めた時、植物達が黒い影に対抗しはじめたのがわかった。

 さっきまでだいぶ侵食されていたのに、ほとんどが分離されたようなのだ。

 そして、急にブラックと舞の気配を感じる事が出来たのだ。

 それも今から向かおうとした大木の方なのだ。


 大木の近くまで行くと、ブラックが黒い影から作られる魔獣に向かっているのが見えた。

 問題なく対処しているのを見てホッとしたのだ。

 舞も大木の近くでそれを見守っているように見えたが、横には見慣れない子供のような形をした、綺麗な生命体がいたのだ。

 二人はすぐにあの大木の精霊であり、この森の主である事がわかった。

 舞とブラックがここに来た理由がそこにあると理解したのだ。

 その後、急にブラックの動きが止まったのだ。

 もう黒い影の集合体がある程度消えたのかと思ったが、そう言う理由では無かったのだ。


 そこには黒い集合体から人の形となり、二人にとっても500年ぶりに見る懐かしい人物が現れたのだ。

 しかし、徐々に舞やその横にいる精霊が侵食され始めたのだ。

 ブラックの結界に守られていた舞達だったが、急に結界の魔力が低下しているようだった。


「ちょっと、まずいわね。

 ブラックは、何をやっているのよ。

 ほんと、バカね。

 ブラックにあれは攻撃できないわ。

 ユークレイス、あの集合体から記憶を抜き取って。」


 ジルコンはそう言うと、近くの植物達から少しずつエネルギーをもらったのだ。


「ごめんなさいね。

 すでに弱っているのに。

 私にも少しずつでいいから分けてね。」


 植物達にそう言うと、周りの植物に手をかざし左手に光の玉を作ったのだ。

 そして、その懐かしい人物の偽物に光の衝撃波を放ったのだ。

 それは一瞬で消えたが、また別の黒い影たちが集合体を作るべく集まり始めたのだ。

 しかし何者にも変わる事はなく、ただの集合体でしかなかったのだ。

 ユークレイスが、周辺の黒い影の森の記憶を消去させていたのだ。


 それにしても、まさかあの集合体がハナに変わるとは二人とも驚いたのだ。

 そして、それに攻撃のできないブラックを見て、二人は本当に来て良かったと思ったのだ。

 自分たちが来なければ、ブラックはともかく、人間である舞を危険にさらす事になったかもしれないのだ。

 やはり、幹部達の予想が当たったのだ。

 


 

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