勇者の精一杯
シヨゥ
第1話
「期待しないで待っているよ」
ぼくは決まってそう旅立つ仲間たちに声をかけている。
「お前は俺を信じていないのか。俺は絶対に成し遂げて見せるからな」
と闘志を燃やし宣言までして旅立っていく仲間もいれば、
「そういってもらえて助かるよ。ぼくは自信がないからね。生きて戻ったら御の字だと思っていてくれよ」
と安心して旅立っていく仲間もいる。
どちらの反応が正しいというわけではない。そこはいいように受け取ってくれればいい。
ぼくが担げなくなった荷を彼らは担いでそれぞれ旅立っていくのだ。それなのに成果を必ず挙げてこいなどというは無責任だろう。
ぼく自身の力で成し遂げられない。そんな他人任せな状況では期待をするだけでダメージが返ってくる。他人を操るなんてことは本来無理なのだ。だからぼくは決まって
「期待しないで待っているよ」
と声をかけるのだ。無理に頑張って死なれてもぼくは責任を取れないし、取りたくもない。だが送り出した手前、責められるのはぼくだろう。故人がどう思っていようと責められるのはぼくだろう。
ならほどほどに力を抜いてくれそうな言葉で送り出す。それが僕にできる精一杯。手足を失う大怪我を負った勇者の精一杯なのだ。
勇者の精一杯 シヨゥ @Shiyoxu
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