共に歩む千年はきっと楽園だろう
めざし
第1話 ララ・ウインザーフィールド
管理者
それは常に孤独であった
時に癒しを 時に争いを起こし
目に見えない糸を手繰り寄せ この世界の均衡を保ち続ける
それは淡々と続く先の見えない暗い道
神はそんな彼に慈悲をお与えになった
共に歩む素晴らしき伴侶を
その日 地上は祝福で満たされた
花々は咲き乱れ 小鳥達は嬉しそうに歌う
夜になり 星々は一層輝き
遠く南の空で星々が流れた
愛し子様が顕現される
あの方の唯一の乙女
さあ皆 歌い踊ろう
歓喜の歌を
あの方が微笑み 千年の楽園が約束される
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『おぎゃぁ~おぎゃぁ~』
その日の夜遅く、アクア王国に1人の美しい赤子が誕生した。
名はララ。
人間とは思えない魔力を持った彼女は、真っ黒い髪と瞳のそれは美しい女の子だった。
アクア王国はその名の通り、小さいながらも水の豊かな王国である。
ララはそんな王国の最南端にあるウインザーフィールド辺境伯の2番目の子供として生を受けた。
嫡男であるロロは彼女よりも5歳年上という事もあり、両親兄共に彼女を大層可愛がっていた。
しかしララは生まれた時から膨大な魔力を持っていた為、周囲の口さがない者からは『直ぐに死んでしまうのではないか?』と囁かれていた。
『魔力の過多は一種の病気である。故に短命』
これはアクア王国の国民であれば、幼子でも知っている一般常識である。
王国の平均寿命は70歳前後だが、魔力量の多い女性の平均寿命は15歳程度といわれている。これは魔力暴走時に器が魔力に負けてしまう為で、この現象が男性よりも女性側に特に顕著に現れる。
その結果、現在のアクア王国の魔術師は男性のみであった。
女の魔力持ちは魔力暴走を起こして直ぐに死ぬ。
そんな周囲の囁きなどどこ吹く風。当のララは生まれて数か月で呼吸するように魔法を使い、暴走などとは縁遠く自由にすくすくと育っていった。
しかしララが10歳の誕生日を迎えた日、突然王家側から歳の近い第2王子のアレキサンダーと婚約を結ぶよう王命が下った。
アレキサンダーは数人の従者を連れて呼んでもいないララの誕生日パーティーに参加し、出席していた他の貴族達の前で2人の婚約を大々的に発表した。
その上で王家に代々伝わるという婚約者の印、銀の指輪を強引にララの指にはめたのだった。
勿論ララの両親と兄は烈火の如く怒り狂ったが、そんな彼等を『王命』として従わせ、どんなに嘆願して婚約が白紙に戻される事はなかった。
そして更に悲劇は起こる。
誕生日パーティーの良く朝、あれほど完璧に制御されていたララの魔力が暴走を始めたのだ。
ララは倒れ、高熱にうなされながら生死の境を彷徨い続けた。
そして1ヵ月程してようやく回復した頃には、彼女の魔力は全て消え失せ、その反動のせいか黒かった髪と瞳が真っ白になってしまっていた。
目が覚めたララは自分の姿に愕然とし、お気に入りの場所だった裏庭の大樹の根元にうずくまり泣き続けたのだった。
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