もしもし
「もしもし」
「ど、どうもこんばんは」
「どしたん?」
「いやー……」
「……」
「まあ、最近どうしてるかなー? って思って」
「普通やで」
「ああ」
「ふっつーに仕事して、可もなく不可もなく」
「なるほど〜」
「え、就職した?」
「まあ、まあ、いや」
「まだ実家なん?」
「そッスね」
「へー」
「いやそれでね? 今日電話かけたのは」
「うん」
「今度東京行くから、就活で。その時遊びません? っていう」
「あー」
「どう、11月10日なんですけど。その前後とか」
「まあ、ちょっと無理かな笑」
「はいっ」
「……」
「…………」
「……」
「あとはまあ、近況とか聞きたいんやけど」
「別になんもないで」
「彼氏できた!?」
「いや」
「そうか……」
「一人が楽やし」
会話における一つの可能性。
「穴に入ってたんですよ」
「へ」
「そう深くもない、這い上がれそうな深さの穴に長く留まっていました。でも出ようとは思いませんでした。土が音を吸収するのでそこはとても静かでした。静けさと土の匂いをよく覚えています。穴から出たところでどうせ静かな場所で横たわるだけなので、大して変わらないんです。円く切り取られた天空には様々なものが通り過ぎました。そのようなイメージがあった、もしくは実際にそういったことが起きた。どちらとでも言えます。銀色の鹿、燃える性器、人型等身大ロボット、マ、ネ、キ、ン、フランシス・ベーコンの絵画、市指定のゴミ袋に詰まった腐敗したゴミ。飛ぶんです。私は地獄にいると思いました」
「それで救いはあったん?」
「もちろん」
特にそんな会話をすることはなく。
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