元気?

 喫茶店で向かい合う二人。

「元気?」

「ぼちぼちやなー」

「……」

「元気?」

「元気ッスよ。ただ僕の場合元気すぎるのも問題というか」

「そうなんや」

 メニューを見る。

「最近どう?」

「最近なー、普通やで」

「そっかー」

「別にそんな変わらんし」

 それぞれ珈琲を頼む。

「なんか面白いことないんですか。職場の上司が爆発したとか」

「あー爆発はないけど、支社の人がなんかややこしいことなっとったわ。元々パワハラっぽい人やったし」

「ほう?」

「まあでもそんなおもろないわ」

「ほう」

「れんちゃんの見た? 幸せそうでよかったー」

「インスタ見たよ。いっとき仕事つらそうだったけどなんだかんだいい所に収まったみたいでよかったね。考えてみたら学生時代はけっこう仲良くやってたのに今や時々DM送るぐらいしか交流ないから寂しいね」

「わたしこの間会ったで。東京会やってん。東京の人ら大体来た」

「へー。楽しそう」

 珈琲が来る。

「いや思うのがさ、僕らの身の回りにいる人たち、みんなつらいことも抱えながら、それでも幸せそうな姿はちゃんと見せてくれるわけじゃないですか今や。そういうの見てて焦りとかない?」

「一人が一番楽やし。まあわたしはいいかなって」

「幸せってなんなんだろうね」

「人それぞれでええんちゃう。知らんけど」

 周囲の席がざわめいているので、少し声を張らないと会話できない。

「この間Aくんに会ったよ」

「へー」

「Aくんはまだ低調っぽいな。結構焦ってた」

「いま実家やっけ? 無職」

「うん」

「Aなら絶対普通に働けると思うねんけどなあ」

「普通ってなんですかね……」

「いやめんどくさいな」

「あー今日この後どうする」

「え、帰るんちゃうん」

「いや今日は宿とってない……」

「…………」

「はい」

「帰ると思ってた」

「まあ帰った方がよさそうですね……その前に二軒目行きましょうよ」

「別にええけど」

 会話が続く。

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